本日14時からの文教科学委員会では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による企業の技術開発支援を可能にする「(通称)JAXA法改正案」を審議しました。赤松の質問は、参議院インターネット審議中継で全て視聴可能です。
https://webtv.sangiin.go.jp/webtv/sp/detail.php?sid=7659#562.6

今夏にNASAのケネディ宇宙センターを視察した体験も交えて、割と嬉しそうに質問していますね。しかし冒頭に「JAXAへのサイバー攻撃」の質問を入れたせいで持ち時間(15分)が足りなくなり、最後の質問を「大臣への質問」ではなく「自分の意見(=答弁の必要なし)」に変更した様子がありありと分かると思います。

各党の質問が終わり、討論のあと採決して、付帯決議がついて委員会は終了。続けてすぐ理事会。初めての理事の仕事でしたが、特に問題なく無難にこなすことができました。やった!

この採決したばかりのJAXA法改正案を、直後の本会議へ緊急上程しました。


質疑の全文は以下の通りです。(国会会議録「第212回国会 参議院 文教科学委員会 第3号 令和5年11月29日」より、赤松の質疑部分を抜粋)


○委員長(高橋克法君)

 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○赤松健君

 自由民主党の赤松健でございます。
 質問の前に、今朝の読売新聞の報道で、JAXAがサイバー攻撃を受けていて、宇宙開発の機微閲覧のおそれがある旨の記事が出ておりました。これについて、まず事実関係と現状の対応状況を御説明ください。

○参考人(山川宏君/国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構理事長)

 皆様に御心配をお掛けして大変申し訳ありません。

 サイバー攻撃を受けたのは事実でありますが、JAXAでは、ロケットや衛星の運用、また安全保障に関する情報を含め、機微な情報はしっかり管理しており、攻撃を受けたネットワークでは取り扱っておらず、機微情報が漏えいしたとは考えておりません。

 本件については重く受け止めており、現在、攻撃手法を含め、詳細な調査を継続しております。

 JAXAでは、セキュリティ・情報化推進部を中心に、機微情報の保全等を含めた情報セキュリティーに関わる活動を実施しています。また、米国NASA、欧州ESA等の宇宙機関と最高情報セキュリティー責任者を含む定期会合を毎年開催するなど、世界の宇宙機関とともに情報セキュリティーに取り組んでおります。

 本件を含め、情報セキュリティーについては対応してまいります。
 以上です。

○赤松健君

 これ、かなり重要なことですので、しっかり調査していただきたいと思います。

 では、法案の質問に入りたいと思います。

 まず初めに、私、今年の夏にNASAのケネディ宇宙センターに視察に行ってまいりました。そこのNASAの敷地の中にイーロン・マスク氏のあのスペースX、ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンがありまして、民間業者が施設を設けています。それで、近隣にあるんじゃなくて、この施設の中にあるんですよ。以前スペースシャトルの打ち上げに使っていた第三十九発射施設の一つは、今スペースXが改修して自社ロケットの打ち上げに使っています。ファルコン9の実物も見ました。何台も並んで洗浄しているんですよね、使い回しのロケットなので。これ、すばらしい。まさにNASAと民間事業者が力を合わせて宇宙産業開発を強化していると、その様子がうかがえました。

 その上で、民間の、米国の民間事業者がニュースで日々入ってくるような成果を出し続けているんですよね。今回の視察を踏まえて、日本でも、宇宙技術開発の発展のために、民間事業者や研究機関への支援体制強化が急務であると実感しているところであります。

 今回の法改正案のテーマであるJAXAの資金供給機能強化については、欧米の宇宙開発機関が商業化を図る民間事業者等の技術開発に向けて資金供給機能を有していることを踏まえたものであると今年六月に閣議決定された宇宙基本計画に明記されております。欧米を参考にしているということについて、例えばNASAの、アメリカのNASAのCOTS、CRSというプログラムがありました。これは、スペースシャトルが運用を終了した後の低軌道の宇宙輸送サービスを公募で選定した民間事業者に委ねてNASAが購入すると、アンカーテナンシーまで含むプロジェクトで、これをきっかけにスペースXなど民間事業者が発展して宇宙産業への民間投資を呼び込んだと、この好循環をつくり出したものと理解しております。

 このように、資金供給機能の強化だけでなくアンカーテナンシーというところまでパッケージにすることで、より宇宙産業力の強化につながっていくのではないでしょうか。これに関して文科大臣の見解を教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 先生おっしゃるとおり、近年、宇宙開発の主体が官主導から官民連携へと変わりつつあり、例えば米国NASAでは、宇宙技術の商業化のため、技術開発支援に加えて政府調達、アンカーテナンシーですね、により戦略的に宇宙産業を育成していると認識しています。

 必要な投資額が大きく、収益化までに時間を要する宇宙分野の産業育成のためには、先端技術開発や技術実証を戦略的に進めることに加えて、政府調達により商業化の下支えや技術力の向上等を図っていくことも重要であり、これらは政策的に車の両輪であると考えています。

 本基金事業は民間企業や大学等が行う研究開発を支援するものですが、この事業で培った技術の利用も含めて、出口となる需要を生み出す方策、特に政府調達についても、内閣府を始めとする関係府省間で検討を進めてまいります。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 その上で、今回のJAXAへの資金供給機能の強化のスキームとしては、まず国が継続的に投資をして、日本における民間の宇宙産業を育てることによって民間の投資を増やしていくというところまで見据えた制度設計が必要だと考えています。

 その点についても文科大臣の見解を教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 世界の宇宙関連市場は、二〇四〇年に一兆ドルを超えると試算されています。諸外国との宇宙開発競争に伍していくためには、政府投資によって宇宙開発に係る我が国の技術開発力を底上げするとともに、民間事業者の自律的な発展に向けて民間投資を引き出していくこと、これが極めて重要なことだと考えます。

 そのため、内閣府を中心に関係府省で連携し、我が国全体として推進すべき技術及びその方向性を示す宇宙技術戦略を策定し、民間投資や政府投資の予見性を高めることとしております。

 本事業は、宇宙技術戦略を踏まえ、テーマを決定し、公募を行うこととしております。事業の実施に際しては、テーマの性質に応じて民間による事業化を見据えた体制の構築や民間投資を促すとともに、その取組を進捗評価等によって確認、評価しながら研究開発を推進することを想定しております。

 当省としては、こうした取組を通じて、テーマに応じた適切な官民の役割分担や将来的な民間投資を促してまいりたいと考えております。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 今回の法改正案はJAXAに宇宙基金戦略を創設するというものですけれども、基金という形を取ることの必要性と補正で三千億円を措置する緊急性について御説明お願いします。

○政府参考人(渡邉淳君/内閣府宇宙開発戦略推進事務局審議官)

 御説明いたします。

 宇宙分野の研究開発は、その特徴として様々な技術課題、事業化リスクに直面しやすいことが挙げられておりまして、進捗予測が困難でありますし、また不確実性が伴うものでございます。

 そうした宇宙分野において民間企業などが革新的な研究開発や事業化に主体的に取り組むためには、国が宇宙技術戦略の策定などを通じて必要な技術の予見性を高めつつ、あらかじめ複数年度にわたる財源を確保して、研究開発の進捗に応じて年度にとらわれず弾力的に研究費の支出を可能とすることが重要と考えております。

 このため、宇宙分野の産学官の結節点でございますJAXAに、複数年度にわたる民間企業、大学などへの戦略的かつ弾力的な資金供給を可能とする基金を設置いたしまして対応する必要があるというふうに考えております。(発言する者あり)

 また、あっ、済みません、まだ続きがございます。また、近年、諸外国は宇宙開発を強力に推進しており、また世界の宇宙産業の規模は大幅に拡大しております。今年度に入っても、アメリカ、中国、インドといった諸外国がインパクトのあるニュースをもたらしてございます。我が国においても宇宙分野への国内投資を早急に拡大し加速しなければ、将来にわたって宇宙のインフラを海外に依存することになりかねませんので、宇宙活動の自立性が危ぶまれるおそれもございます。

 こうした状況の中、民間企業、大学などが複数年度にわたって先端技術開発、技術実証、商業化に取り組むことを支援する枠組みを可及的速やかに設けるために、宇宙戦略基金の創設に係る経費を補正予算案に計上した次第でございます。

○赤松健君

 なるほど、ありがとうございます。

 先立つ二〇二一年四月に改正された科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律によりまして、既にJAXAが、JAXAの研究開発の成果を活用する民間事業者等への資金提供を行っていると認識しております。また、いわゆる日本版SBIR制度による基金に宇宙分野が対象となっています。

 これらの資金供給とは別に今回の基金を造成する必要性及びこれらの各制度をどう両立させていくのか、教えてください。

○政府参考人(千原由幸君/文部科学省研究開発局長)

 お答え申し上げます。

 令和二年度の科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の改正により新たに設けられましたJAXAの出資制度につきましては、JAXAの自己収入の範囲内で行われるものであり、JAXAからの出資額は必ずしも大きくないものの、各企業に対する更なる投資を呼び込むことを目的とするものでございます。

 また、令和四年度補正予算において創設されました中小企業イノベーション創出推進事業、SBIRフェーズ3基金でございますが、こちらは、宇宙分野に限らず、スタートアップ等が有する先端技術の大規模実証を支援し社会実装の促進を図ることを目的としており、スタートアップ等が行う技術成熟度の高い技術開発を支援対象としております。

 激化する国際的な宇宙開発競争に我が国が伍していくためには、これらの制度に加えまして、JAXAの資金供給機能を強化し、JAXA以外の民間事業者や大学等が行う先端基盤的なテーマを含めた幅広い技術開発を基金により強力に支援することで、宇宙におけるイノベーションを加速する必要があると考えております。

 今後も、出資等を通じJAXAの研究開発成果の普及を行うとともに、SBIRフェーズ3基金で技術成熟度の高い技術開発を支援することと併せまして、本基金事業により民間企業、大学等が主体となり推進を図ることが適当である研究開発を幅広く支援することで、宇宙分野の研究開発において我が国の産学官の総力を結集し、宇宙空間の利用を通じた経済社会の変革を加速してまいります。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 ここで、非宇宙分野、つまり宇宙分野以外の産業から宇宙分野への参画という点について伺いたいんですけれども、これまでどういった例があるのか、教えてください。

○政府参考人(千原由幸君/文部科学省研究開発局長

 お答え申し上げます。

 国際的な宇宙開発競争が激化する中、非宇宙分野も含めた我が国の産学官の総力を結集することが重要と考えております。

 例えば、宇宙探査分野におきましては、地上産業の技術を生かして世界をリードする宇宙探査技術の研究開発を行うため、JAXAがオープンイノベーション拠点として宇宙探査イノベーションハブを運営し、非宇宙分野も含めた民間企業等との共同研究開発を進めておりまして、これまで超小型の変形型月面ロボット、SORA―Qの開発ですとか、月面における無人建設技術の研究、月面等の有人拠点への応用を目指した新住宅システムの構築等について、非宇宙分野の企業等との共同研究開発を実施しております。

 また、非宇宙分野を含む様々な業種の民間企業による自らの事業と宇宙分野を融合した新たな発想の宇宙関連事業の創出を支援するため、官民協業によるJAXA宇宙イノベーションパートナーシップ、J―SPARCを行っておりまして、例えば、これまで、例えば、人工衛星上のカメラを使いまして宇宙空間の映像をリアルタイムに遠隔操作できるサービスの商業化ですとか、資源の活用が制限される被災時の活用も見据えた宇宙空間における生活用品の開発等への支援を実施してきております。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 宇宙分野以外の産業から宇宙分野の参画促進についても今回の基金の目的に含まれる理解でおりますけれども、その理解でいいのか。また、そうであれば、今例に挙げていただいた技術が今後も宇宙分野に活用されていくように、宇宙技術戦略にも位置付けて基金事業に反映させていくべきだと私は考えています。

 この点について積極的に検討いただけますでしょうか。お答えください。

○政府参考人(渡邉淳君/内閣府宇宙開発戦略推進事務局審議官

 お答えいたします。

 宇宙利用の推進に向けましては、オープンイノベーションを喚起していく必要がありまして、技術の面でも非宇宙分野を含めた多くの企業が宇宙産業に参入することが重要であると考えております。

 委員御指摘のとおり、宇宙戦略基金につきましては、民間企業などの主体的な研究開発を強力に推進するものでございますけれども、その中で、非宇宙分野を含む多様な民間企業等の宇宙分野への参画を促して、裾野を広げ商業化を推進することも狙いとしてございます。

 その中で、宇宙機の性能高度化に対応するべく、非宇宙分野で既に製品化されているコンポーネントや機材の宇宙転用拡大に取り組むことが重要と考えておりまして、こうした観点を含めまして、引き続き、宇宙技術戦略の策定、また宇宙戦略基金の執行に向けて準備を進めてまいります。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 その他、基金の透明性のある運用をしっかり心掛けていただきたいので、こういうところでつまずいて宇宙政策が停滞してしまわないように是非お願いいたします。

 最後に、今回の基金に限らず、国費を投入して日本の宇宙政策全般を戦略的に盛り上げていく、そのためには国民の皆様の理解を常に意識して高めていくことが大事だと考えています。

 今年、H3ロケットの打ち上げ失敗などありました。宇宙開発に関する失敗については、私がアメリカ視察したときに、NASAは、国民の批判もあるけれども、NASAのモットーはロケット打ち上げるだけじゃなくて人類の未来を打ち上げるのだということで、国民の理解を得ていると言っておられました。国民に理解してもらうためには、まずこういう大きな分かりやすいビジョンを示すメッセージが必要と考えています。

 その上で、宇宙開発や宇宙産業振興によって国民にどれだけ良い効果が期待されるのか、しっかり分かりやすく説明する必要があると思います。加えて、今回の基金が設置されるJAXAの役割の重要性なども分かりやすく説明して国民に知ってもらうこともまた重要です。そういったことの手段としては、NASAでは、宇宙の実証技術の共有とか広報にも力を入れていると言っておりました。

 以上について、日本でも是非推進していっていただきたいという意見を申し述べまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。