省庁別審査で文科省の番ということで、赤松に質問が回ってきました(そのジャンルが得意な議員に融通してくれます)。決算委員会の省庁別審査は与野党の対決感が薄く、各議員の特徴(興味を持っていること)がすごく出てきますね。赤松の質問も、得意中の得意分野で固めました。

  1. 海賊版対策について
  2. AIと著作権について
  3. クリエイター・アーティスト支援について
  4. デジタルアーカイブについて
  5. 観光DXについて
  6. ゲーム保存について

興味のある方は、ぜひ参議院の公式サイトで録画をご覧下さい。 https://webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7938#1672.7

(1)海賊版対策について

日本マンガの海賊版サイト閲覧数は、関係省庁やCODA・出版社などの尽力により、一時の月間4億アクセスから、今は1億程度まで減ってきた。しかし実はベトナムにおける海賊版サイト運営が非常に深刻だ。海賊版の上位半分はベトナムだ。ところで、先月4月29日に盛山文科大臣がベトナムで外相と会談し、海賊版対策についても会談されたそうだが、その成果を教えてほしい。
→(文科大臣)

(2)AIと著作権について

最近、ある特定の漫画家などクリエイターの「絵柄」に特化したLoRAをネット上で公開して、作者に嫌がらせをする、挑発をするといった悪質な事例が激化している。著作権法上、これはどのような整理になるか。
→(文化庁)

そのようなAIと著作権の「考え方」について、クリエイター・AI開発事業者・AIサービス提供事業者・AI利用者といった当事者向けに、具体例も交えて速やかにポイントを分かりやすく発信していきたいと盛山大臣から前回ご答弁いただいたが、その後どうなったか。
→(文科大臣)

AIと著作権に関する法律相談に対応した「窓口」が開設されたが、どれくらい生成AIに関する相談が来ているか。今後データを集めて、どう取り組むか。
→(文化庁)

(3)クリエイター・アーティスト支援について

アニメーターなどアニメ業界の担い手が不足している。アニメーター育成のための支援の取り組みについて教えてほしい。
→(文化庁)

アニメーターやアニメ制作スタジオ本体に、「売れた分だけしっかり収益還元される」ような仕組みを、官民連携で構築していくことが重要だ。アニメ制作スタジオに「育成コスト」がかかっているという意見もあり、アニメのノウハウの共通化などへの支援が必要だと思う。これらの点に関して、意気込みも含めて文科大臣の考えを聞かせてほしい。
→(文部科学大臣)

実写映画の場合、海外展開にあたってネックになるのはやはり製作費だ。製作費を支援するような仕組みの「研究」を始めるべきではないか。また映画制作に関わるスタッフの育成も重要だと思うがどうか。
→(文部科学大臣)

国際アート市場は年々拡大している。アーティストをはじめ、キュレーターや批評家等の専門家の育成、アーティストと海外キュレーター、アカデミア、海外旅行ギャラリー等とのネットワーク強化が重要だ。この点に関して、現状の支援策などがあれば、意気込みも含めて教えてほしい。
→(文部科学大臣)

(4)デジタルアーカイブについて

これまでのデジタルアーカイブ推進に関する取り組みを踏まえて、現状でデジタルアーカイブに関する諸課題としてどんなことが挙げられるか。
→(内閣府知財事務局)

デジタルアーカイブ社会の実現のためには、機関や受け皿がないところでのアーカイブ活動についても、しっかり把握し支援していく必要がある。この点についてはどうか。
→(内閣府知財事務局)

国が全てお金をかけてデジタルアーカイブせよということではなく、民間でできることは民間でやるべきで、国はそのインフラを整えることが大事だ。その上で、官民の役割分担の視点を持って、デジタルアーカイブの推進を図るべきだと考えるが、そういった観点からどのような取り組みや検討を行なっているか。
→(内閣府知財事務局)

「有効なエコシステムが構築されていないので民間での取り組みが進んでいない」という点については、エコシステムの構築に向けた取り組みを官民で行なっていくべきだと考えるが、現状でそのような取り組みは行われているか。
→(内閣府知財事務局)

それらの諸課題を踏まえて、デジタルアーカイブを加速化するためには、横断的な推進計画を策定して、産学官が連携できる協議会のような場所を設置して、そして人材とお金の問題を解決するために予算措置を裏付ける「デジタルアーカイブ振興法」のような根拠法が必要と考えるがどうか。
→(内閣府知財事務局)

(5)観光DXについて

観光振興に資する、デジタルアーカイブを含む「観光DX」に関する取り組み状況について教えてほしい。
→(観光庁)

全国観光情報データベースの実証事業は、観光DXによる観光振興に関する民の取り組みを後押しするもので大変有意義だ。そういった民の取り組みの後押しという点も含め、政府による今後の観光DXの取り組みについての意気込みを述べてほしい。
→(国土交通大臣)

(6)ゲーム保存について

ゲームはメディアによって経年劣化の速度に差がある。経年劣化に弱いメディアから優先的に、適切な形でマイグレーションして保存していくべきではないか。そういった取り組みはされているか。
→(国会図書館)

国立国会図書館の運用では、ゲームソフトの納本は、新品未開封のみとなっている。その理由について教えてほしい。
→(国会図書館)

・・・そして最後は、質問ではなく私の意見として、

「ゲーム保存で有名なフランス国立図書館(BnF)や、アメリカのストロング遊戯博物館に視察に行ってまいりましたが、いずれにも開封済みゲームがずらっと並んでいました。ゲーム納本を充実化させるためには、ウイルス混入リスクを回避する措置を講じつつ、今後は”開封済みも収集すべきだ”と考えます。検討いただければと思います。」で締めました。 現状ではまだ踏み込んだ回答が得られないことが分かっている場合は、あえて質問ではなく意見にすることもあります。

今回もかなり専門的な内容でしたが、どの項目も赤松以外は質問しないような話題ばかりですので、今後も注目して頂ければと思います。


質疑の全文は以下の通りです。(国会会議録「第213回国会 参議院 決算委員会 第6号 令和6年5月13日」より、赤松の質疑部分を抜粋)


○赤松健君

 自由民主党、赤松健でございます。
 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 まず最初に、私も議員になる前、ずっと前から取り組んできた漫画の海賊版対策、これについて質問をいたします。
 ここ数年は、関係省庁や、方だとか出版社の御尽力もありまして、日本人向けの漫画の海賊版の上位十サイトのアクセス数は一時の漫画村時代の四億とかから月間一億アクセスぐらいまで減少しているということは、これは非常に対策は効果があったと思います。
 それで、しかし、ベトナムにおける海賊版サイト運営が非常に今深刻になっておりまして、海賊版の上位十サイトのうちに、約半分はベトナムなんですよね、ベトナム側から運営されていることは判明しています。これはなかなか海賊版の運営者の摘発にまでには至っていないんですけれども、これ、撲滅には非常に難航していると聞いております。
 ところで、先月四月二十九日に盛山文科大臣がベトナムで外相と会談されて、海賊版対策について会談されたと伺っております。この外遊の成果を教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 今、赤松先生御指摘のとおり、四月二十九日にベトナムのソン外務大臣と会談を行ってまいりました。

 私からは、海賊版サイト対策等の著作権に関する共通の課題について引き続き両国が共に包括的な対策を進めていくことが重要であるとして御協力をお願いいたしました。また、文部科学省とベトナム文化・スポーツ・観光省との間では、二〇一五年に締結した著作権及び著作隣接権に係る協力に関する覚書に基づき、これまで著作権の知識や理解の普及啓発を継続的に行い、両国の関係を強化してまいりました。

 文部科学省としては、今回の会談を踏まえ、ベトナムとの連携を一層深めて、引き続き海賊版対策に取り組んでまいりたいと考えています。

○赤松健君

 ありがとうございます。すばらしいです。

 近年、日本のコンテンツを外国語に翻訳して、それで海外向けに運営しているところもあるんですよね。こういった海外における海賊版を撲滅するためには、やっぱり相手国への働きかけが必要ですけれども、これ、今回のやつを契機にして、より一層国際連携を強化していただければと思います。

 次に、AIと著作権について御質問します。

 最近、特定の、ある特定の漫画家とかクリエーターの絵柄、絵柄に特化したLoRA、LoRAというのはローランクアダプテーションですよね。これをネットで公開して作者に嫌がらせする、挑発するといった悪質な事例が激化しております。著作権法上、これがどのような整理になるかお答えください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 プロ漫画家の絵柄に特化した、今委員御指摘いただきましたLoRAを作成する場合のように、既存のクリエーターの作品と創作的表現が共通する生成物を生成AIによって出力させることを目的とした追加的な学習を行うため当該作品の複製を行うような場合は、享受目的が併存すると考えられます。

 したがいまして、このような享受目的が併存すると評価される場合は著作権法第三十条の四は適用されず、他のいずれの権利制限規定も適用されない場合には、著作物を利用する場合には著作権者の許諾が必要と考えているところでございます。

○赤松健君

 そのようなAIと著作権の考え方について、令和六年三月十九日の文教科学委員会において、クリエーターなどの権利者やAI開発事業者、AIサービス提供事業者、そしてAI利用者といったそれぞれの当事者向けに具体例も交えて速やかにポイントを分かりやすく発信していきたいと盛山大臣から御答弁いただきました。

 その後、具体的にどのような発信をされたのか、あるいは準備しているのか、教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 委員御指摘の考え方については、より多くの方に内容を御理解いただくため、ポイントを簡潔にまとめた概要版を作成し、先月十五日に公表しております。

 この考え方については諸外国からも関心が高いものでございまして、この資料について現在英語による発信の準備を進めております。また、関係団体からの要望に応じて講演等を通じて考え方の内容の周知を図っており、今後も求めに応じてそれぞれの当事者に向けた分かりやすい形での周知を行ってまいります。そしてさらに、広く一般向けに考え方の内容を周知するため、本年夏頃をめどとしたセミナーの開催に向けて準備を進めております。

 引き続き、それぞれの当事者に向けた分かりやすい形の周知に向けて最適な形での発信を行っていきたいと考えています。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 AIと著作権に関する法律相談に対応した窓口というものが開設されたと認識していますけれども、生成AIにも対応しますと公表されてからこれまでどれぐらい生成AIに関する相談が来ているのか、これ相談事例集めてより具体的な啓発に役立てることが重要だと思っていますけれども、そういった取組、検討されているか、教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長

 お答え申し上げます。

 委員御指摘の法律相談窓口につきましては、AIの開発や利用によって生じた著作権侵害の事例及び被疑事例を収集することで、今後のより精緻な法解釈の検討等に役立てることを目的として本年二月に開設したものでございます。

 相談窓口への相談内容は多岐にわたりますことから、具体的な相談状況については今後精査、分析等を行う予定としており、現段階で具体的な件数をお答え申し上げることは難しい状況ではございますが、例えば、自作のイラストをAI学習用データとして無断転載されているため転載先のウェブサイトに対して削除請求をしたい、あるいは生成AIを利用していることを理由に誹謗中傷を受けたといった相談をいただいているところでございまして、考え方に基づいて御回答などを申し上げているところでございます。

 また、今後、相談事例の集積状況を注視しつつ、相談が集中する事項につきましては改めて適切な形で考え方の周知を行うなど、具体的な周知啓発に役立てることも検討しているところでございます。

○赤松健君

 こういった問題は、クリエーターと権利者団体とAI開発事業者が適切なコミュニケーションを取っていくということがこれ非常に大事です。前回その質問をしたんですけれども、文化庁から、特に、法解釈のみでは対応できない部分について民間の関係当事者間の対話の場をこれ文化庁が設定するという画期的な答弁がありました。これ、こちら、先日開催されて今後も継続していくと聞いております。これ、非常に期待しています。

 続いて、クリエーター、アーティスト支援について御質問します。

 まず、アニメについて、最近は、「スラムダンク」とか「すずめの戸締まり」とか代表されるように、日本のアニメが世界を席巻しています。「君たちはどう生きるか」、アカデミー賞を受賞するなど海外でも高く評価されている。アニメは漫画原作が非常に多いんですけれども、これ、アニメをきっかけに漫画の部数が伸びたりするんです。主題歌に起用された音楽がすごくバズったりするということがあって、ほかの分野に波及効果が高いと、これ日本の著しい成長産業です。ここに重点を置いてコンテンツ産業を更に拡大させていくというのが日本の成長にとって必要であると考えます。

 他方、足下では、アニメーターを始めとしたアニメ業界の担い手が不足しているという現場の声が上がっています。

 そこで、アニメーター育成のための支援の取組について教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長

 お答え申し上げます。

 我が国のアニメを始めとするコンテンツは、日本独自の文化的な土壌の中でアニメーター等の多様なクリエーターが独創的なアイデアに基づいて自由に創造し、それが独特の世界観と高い質を持つことにより世界に強いインパクトを与え、我が国の誇るべきソフトパワーの源となってございます。

 一方で、我が国のアニメーションは国内外において幅広い層の支持を受け、多大なる発展を続けてまいりましたけれども、一つには、市場規模の拡大に比してアニメーション制作の現場においてアニメーターが不足している、二つ目には、日本のアニメの技術継承やデジタル化が進む中で必要な知識、技術の習得機会が不足している等の指摘があることも承知いたしてございます。

 そのため、文化庁といたしましては、アニメーション人材育成調査研究事業を通じまして、アニメーション制作の現場の技術継承や人材育成体制の確立等への支援、それから、就業者を対象とした技術向上教育プログラムの提供、アニメーション業界志願者を対象とした基礎教育プログラムの提供などに取り組んでいるところでございます。

○赤松健君

 アニメーターとかのアニメ業界の担い手とかアニメ制作スタジオ本体に売れた分だけしっかり収益還元されるというような仕組みを官民連携で構築していくことが私重要だと考えています。

 また、アニメーターなどの育成システム、効率化されていないというのがありますから、これ、アニメスタジオに育成コストが掛かっているという話もあるんですよね。

 そこで、アニメのノウハウの共通化、これ支援必要だと考えているんですけど、この点に関する文科大臣の意気込みも含めて、お考えをお聞かせください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 アニメーターを始めとするクリエーターにつきましては、構造的に発注者との関係において弱い立場に置かれ、事前に業務内容や報酬額、支払時期等が十分に明示されないまま不利な条件で業務に従事せざるを得ない状態にある、あるいはアニメーション制作のデジタル化などの制作環境の変化に対応した人材育成の機会が不足しているといった指摘があることを承知しております。

 このような課題に対応するため、文化庁におきましては、クリエーターが安心、安全な環境で芸術活動を行うことができるよう支援する文化芸術活動に関する法律相談窓口を整備するほか、アニメーター等に共通して求められる知識、技能等を習得する人材育成プログラムに関する調査研究を実施し、その成果の普及を促進していくこととしております。

 また、先ほど政府参考人が御答弁をいたしましたが、クリエーター等が尊厳を持って自由に創造するために、取引慣行等の実態調査やその結果を踏まえた指針の作成を行う公正取引委員会、内閣府、経済産業省等の関係省庁との連携の下、適正な契約、利益還元、風通しよく透明性の高い文化芸術団体への体質改善も重要であり、政府一体で対策を進めてまいりたいと考えています。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 今、日本のコンテンツは、アニメ、漫画以外にも、実写、もう「ゴジラ-1.0」、大成功しましたよね。こういったものを、今のこの機運を後押ししていくことが結構重要だと思います。

 なんですけれども、映画の海外展開に当たってネックになっているのはやっぱり制作費だと聞いております。これ、海外、特にハリウッドと比べると桁が違うということになっています。

 そこで、制作費をこれ支援するとかの仕組みの研究を始めるべきではないかと考えています。また、映画制作に関わるスタッフの育成も重要だと考えています。

 若手スタッフの現場研修や人材交流の機会提供などの支援が考えられますけれども、これらの点について、意気込みを含めて大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 映画を始めとする我が国のコンテンツは海外でも高く評価されております。国内市場にとどまらず、世界に発信することにより我が国の成長力の強化にも資するものであるとも考えています。

 これまで、映画分野における若手クリエーターが自由に創造活動を行うことができるよう、文化庁におきましては、優れた日本映画の制作活動に対する支援や、映画業界との連携による短編映画の制作を通した若手映画監督の育成、制作現場における実地研修を通した若手映画スタッフの育成、さらには海外映画祭への出品支援やジャパンブースの出展等を通した日本映画の海外発信などに取り組んできたところであります。

 加えて、昨令和五年度の補正予算におきましては、映画を含めた次代を担うクリエーターなどの育成、市場を企画、制作段階から海外展開までを含めて弾力的かつ複数年度にわたって支援するための基金を独立行政法人日本芸術文化振興会に設置いたしました。

 また、クリエーター等の個人を守ることに力点を置いた取引慣行等の実態調査やその結果を踏まえた指針の作成を行う公取を始めとする関係省庁と緊密に連携をして、適正な契約、利益還元、風通しよく透明性の高い文化芸術団体への体質改善といった、クリエーターが尊厳を持って自由に創造できる環境を整えながら、我が国の誇るべきソフトパワーの源である映画産業全体の活性化を図ってまいりたいと考えています。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 続いて、アートなんですけれども、国際アート市場は年々実は拡大しておりまして、二〇二二年の年間取引額は全世界で約六百七十八億ドルと言われています。日本は、世界のアート市場の中ではちょっと一%ぐらいで第八位とかなんですけれども、二〇二一年まではランク外だったんで、日本のシェアは拡大しているんですね。これ、つまりアートは成長産業でありまして、日本も伸び代が見込まれる、産業政策的には重要な分野と私は思っています。

 こういったアートの成長を促進するためには、これは、アートがマーケットにおける一時的な価格のみでは価値が決まらないという特性を理解する必要があります。アートの市場規模を安定的に成長させるためには、マーケットとアカデミアが両輪で回る好循環が必要です。

 そういう観点から、アーティストを始め、キュレーター、批評家等の専門家の育成、アーティストと海外キュレーター、アカデミア、海外旅行、ギャラリーなどのネットワークがこれ強化が重要だと私は考えています。その点に関して、現状の支援策などがあれば、意気込みを含めて教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 現代アートの分野は美術市場の評価によって市場価値が支えられる構造となっていることから、作品を作り出すアーティストとともに、御指摘のあった、作品を選定し、展覧会を組織するキュレーターや批評家などの価値をつくり出す人材の育成を同時に進めていくことが課題になっていると理解しております。

 このため、先ほども申しましたが、令和五年度補正予算において措置されたクリエーター等育成支援事業において、アーティストのみならず、キュレーター、批評家などの価値付けを行う人材の育成や、海外キュレーター、海外美術館等とのネットワークの強化に取り組むことにより、クリエーターなどの戦略的な海外展開を推進し、アート分野の成長を促進してまいりたいと考えています。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 次に、デジタルアーカイブに関して質問します。

 国のデジタルアーカイブ政策については、知財推進計画にもデジタルアーカイブの推進というのが挙げられまして、これジャパンサーチを中心に進んでいると認識しております。

 そこで、官民で構成される政府のデジタルアーカイブ戦略懇談会、デジタルアーカイブ推進検討会も開催されていると認識しています。これまでのデジタルアーカイブ推進に関する取組を踏まえて、現状でデジタルアーカイブに関する諸課題としてどんなことが挙げられるのか、お答えください。

○政府参考人(奈須野太君/内閣府知的財産戦略推進事務局長)

 お答え申し上げます。

 デジタルアーカイブについては、国立国会図書館を始め、各分野のアーカイブ機関と連携して、二〇二〇年にポータルサイトであるジャパンサーチを立ち上げて、これを核としながら、文化資産、学術資料などのデジタルアーカイブの構築、共有と利活用促進に向けて取組を行っております。

 その課題としては、ジャパンサーチに係る連携先やコンテンツへのアクセスの拡充のほか、国などのアーカイブ機関における予算や人員体制などの課題があるというふうに考えております。

 また、国など以外のデジタルアーカイブの取組については任意の自発的取組に依存しておりますので、有効なエコシステムが構築されていないために民間による自律的な取組が進んでいないというような課題もあると考えております。

○赤松健君

 デジタルアーカイブ社会の実現のためには、機関や受皿がないところでのアーカイブ活動についてもしっかり把握して支援していく必要があると考えますけれども、この点についての考えはいかがでしょうか。

○政府参考人(奈須野太君/内閣府知的財産戦略推進事務局長)

 お答え申し上げます。

 国において現在進めているデジタルアーカイブの取組は、国や独立行政法人などの図書館、博物館、美術館などが保有するコンテンツを主としておりますけれども、こうした機関が存在しない分野においては、アーカイブ活動の把握それから支援が、その必要性を含めて検討課題になるというふうに認識しております。

○赤松健君

 国がお金を掛けて全てデジタルアーカイブせよということでなくて、民間でできることは民間でやるべきで、国はそのインフラを整えるということが大事です。

 その上で、官民の役割分担の視点を持ってデジタルアーカイブの推進を図るべきだと考えていますけれども、そういった観点からどのような取組をなさっているのか教えてください。

○政府参考人(奈須野太君/内閣府知的財産戦略推進事務局長)

 デジタルアーカイブの推進において、御指摘のとおり、官民の役割分担の視点を持って推進することは重要な観点と思っております。

 国においては、国や独立行政法人などの図書館、美術館、博物館が保有するコンテンツを主としてデジタルアーカイブを進めております。また、日本の多様なコンテンツに関する情報をまとめて検索、閲覧、活用できるプラットフォームであるジャパンサーチの取組を推進しております。

 民間の事業者につきましては、その保有するコンテンツのデジタルアーカイブ化を進めて、これを民間ビジネスの支障にならないように配意をしつつジャパンサーチと連携していく、連携できるようにしていくことは重要な検討課題であるというふうに認識しております。

○赤松健君

 先ほど課題で挙げられた、有効なエコシステムが構築されていない、民間での取組は進んでいないみたいな点については、これ官民で行っていくべきだと思っていますけれども、現状でそういう取組はありますでしょうか。

○政府参考人(奈須野太君/内閣府知的財産戦略推進事務局長)

 民間事業者による取組に関しての有効なエコシステムが構築されていないと先ほど申し上げたのは、デジタルアーカイブについて利活用による収益化のモデルが見出しにくいというような民間事業者からの声を踏まえて御紹介したということでございます。

 したがって、そのようなエコシステムを構築するに向けては、各分野についてデジタルアーカイブを進めることのメリットを確認するとともに、優良事例の発掘、それから共有化を推進していくということが必要ではないかというふうに考えております。

○赤松健君

 挙げていただいた諸課題を踏まえてデジタルアーカイブをこれ加速化するためには、横断的な推進計画を策定して、産学官が連携できる協議会みたいな場所を設置して、そして人材とお金の問題を解決するために予算措置を裏付けるデジタルアーカイブ振興法みたいな根拠法が必要だと思いますけれども、お考えをお聞かせください。

○政府参考人(奈須野太君/内閣府知的財産戦略推進事務局長)

 デジタルアーカイブ推進のための法律の制定に関する議論は承知しておりますが、その必要については、必要性については、デジタルアーカイブに関する取組の進捗や幅広い関係者による議論を見極めていくということが重要であると考えております。

 政府においては、デジタルアーカイブの取組を加速化、具体化するために、本年二月、デジタルアーカイブ戦略懇談会を立ち上げて、二〇二六年度以降のデジタルアーカイブ推進計画案などを検討しているところであります。こうした推進体制の下で、本年六月を目途に策定を予定している知的財産推進計画二〇二四においても、デジタルアーカイブの構築、利活用に向けた取組をしっかりと位置付けて、関係府省庁や各分野の外部アーカイブ機関との連携の下で取組を進めてまいりたいというふうに思っております。

○赤松健君

 是非検討していっていただければと思います。

 続いて、観光DXについて御質問します。

 観光振興に資するデジタルアーカイブを含む観光DX、これに対する取組状況について教えてください。

○政府参考人(石塚智之君/観光庁審議官)

 お答え申し上げます。

 昨年三月に閣議決定された第四次観光立国推進基本計画では、持続可能な観光地域づくり戦略の一環として、旅行者の利便性向上、周遊促進、観光産業の生産性向上等を図るための観光DXの推進が位置付けられておるところです。

 観光庁では、観光DXを通じまして、稼げる地域、稼げる産業の実現を目指し、先進モデルの構築に向けた実証実験を実施しております。例えば、先生が御関心のデジタルアーカイブに関する取組としては、令和四年度及び五年度において、日本観光振興協会が取り組んでいる全国の観光地情報を集約する全国観光情報データベースの構築及び機能拡充等の実証事業を通じてデジタルコンテンツの利活用が推進され、旅行者の利便性向上、周遊促進、観光産業の生産性向上等に取り組んできたところです。

○赤松健君

 全国観光情報データベースの実証事業は観光DXによる観光振興に関する民の取組を後押しするもので非常に有意義なんですけれども、そういった民の取組の後押しという点を含めて、政府による今後の観光DXの取組について、意気込みを大臣よりお答えください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)

 今、観光地に行きますと、日本人の方もインバウンドの方もスマホを片手に歩かれているという姿をよく見るところでございますが、先ほど観光庁から答弁申し上げましたとおり、旅行者の利便性向上や、それから、せっかくここに来ていただいたらもっと地方に行っていただく、そういう気を起こす、起こしてもらうという意味でも非常に重要ではないかと思いますし、そして、観光産業自身、生産性が非常に低い産業と言われておりますので、処遇改善ということも含めまして、その生産性向上のためにDX化本当に進めていかなくてはならないと、このように思っております。

 そして、今、全国観光情報データベースということで、このデジタル技術を活用して様々な観光情報に民間事業者が容易にアクセスできるようにすること、地域における民間の参画による観光振興の取組を後押しするものでございます。

 政府も全力を挙げてこのデータベース化を進め、そして、なかなか英語になっていないところもあるんですが、外国の方にも容易にアクセスできて、ああ、地方に行ってみようという気を起こしてもらう、そして、そうするためにはどういうふうな手続すればいいのかもすぐ分かるような形にまで持っていきたいと思っております。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 最後に、ゲーム保存について質問いたします。

 ゲームは、メディアによって経年劣化の速度に差があります。フロッピーとか弱いですね。経年劣化に弱いメディアは優先的に適切な形でマイグレーションして保存していくべきではないかと思いますけれども、そういった取組はされているか、国会図書館、教えてください。

○国立国会図書館長(倉田敬子君)

 お答えいたします。

 国立国会図書館では、令和三年に策定した計画に基づき、デジタル形式の資料に対する保存対策の試行や調査等を実施した上で、その結果を踏まえた取組を進めております。現在はフロッピーディスクや光ディスク等の電子出版物のマイグレーションに取り組んでおり、これらの中にはゲームも含まれております。

○赤松健君

 国会図書館の運用では、ゲームソフトの納本は新品、未開封だけとなっているんですけれども、その理由について答えてください。

○国立国会図書館長(倉田敬子君)

 国立国会図書館では、運用上、ゲームソフトの収集対象を未開封のもののみとしております。

 その理由は、コンピューターウイルスの感染リスクといったセキュリティーの問題などがあるためでございます。

○赤松健君

 ゲーム保存で有名なフランス国立図書館、BnFですね、とか、アメリカのストロング遊戯博物館に行ってきたんですけれども、いずれも開封済みのゲームがずらっと並んでいました。

 ゲーム納本をこれ充実化させるためには、これウイルスリスクなんかを回避する措置を講じて、それで、今後は開封済みでも収集すべきだと私は考えています。これ検討していただければと思います。

 時間ですので、終わります。