児童ポルノ禁止法は、子どもを性被害から守るために1999年1月に施行されました。その後は改正案が出るたび「『児童ポルノ』に創作物を含めるか」が取り上げられ、2013年には個人保有の禁止を盛り込んだ改正案が国会に提出される機運がありました。実写ポルノは実際に子どもを性虐待し、被害を与えるものです。しかし創作物は、架空の児童を描くにすぎず、実在する被害者はいません。本来、現実の被害者を守るための法律が、創作物を取り締まるのは筋違いです。その主旨を通すために政治の現場に働きかけ、過度な表現規制を退けることができました。

日本ではマンガを楽しむファンがたくさんいます。そのうえ、漫画家を目指す人、プロ並みの絵師から簡単なイラストくらいなら描ける人まで、多くの人々が「描くこと」に慣れています。読み、そして描くことが日常になっている日本は、世界で最もマンガのリテラシーに長けている国と言えるでしょう。こうした土壌が優れたコンテンツを生み出し、表現の豊かさを育てているのです。資源に乏しい日本ですが、創作は「無限大の文化資産」を生み出す可能性に満ちています。この力を伸ばしていかなくてはいけません。

行き過ぎたジェンダー平等論や、イラストの洋服のシワの数を問題視する女性差別論などの偏った意見が国連を始めとする欧米団体の報告者に影響を与え、そうした団体などから、実態を正しく反映していない見当違いな勧告がなされることがあります。そうした偏った考え方、誤解、曲解に基づく海外からの規制圧力からクリエイターや創作物を守り、同時に海外に向けて適切な説明や反論を行わなければなりません。 同様に、海外プラットフォームによる日本文化への根拠なき、一方的な検閲・規制に反対していきます。

二次創作やコミケ文化は新人作家を輩出しマンガ界の発展に大きく貢献してきました。しかし、TPP（環太平洋パートナーシップ）協定を締結するにあたり、著作権は非親告罪化となり、第三者が二次創作の作家を著作権侵害で訴えることが可能になるという危機に直面しました。同人誌や即売会の文化が絶たれる寸前だったのです。 政治に積極的に働きかけ、結果として二次創作を脅かす部分については非親告罪から除外することができました。

そして、漫画家を悩ませる問題のひとつに著作隣接権があります。「著作者ではないが、作品の発表に大きな役割を果たした人達に認められる権利」である著作隣接権が認められるかどうか、認められるとしたら誰に認められるかという点は、創作活動においては、権利処理が作品の利活用に必要不可欠であるため、非常に重要です。著作者以外の、例えば出版社が著作隣接権を持てば、作品が生まれると同時に出版社が権利を持つため、自分の作品なのに自由に利活用できない状況になる恐れがありました。漫画家にとって「自分以外の権利者が大量に増殖しかねない危険で厄介な権利」をむやみに増やすべきではないです。出版社の著作隣接権については、私が中心となって、ネット生討論会やブログで反対活動やロビイングを行い、漫画家の権利を出版社から守りました。 原作者も二次創作者も、クリエイターではあるものの法律の専門家ではありませんから、誰もが難解な著作権や著作隣接権を使いこなしたり、ましてや権利が適切な制度設計から外れようとしているかまで気が回らないのが実情です。その点を、業界での契約書の導入、著作権や著作隣接権へのロビイングを担いつつ創作活度申してきた私が、もちろん現場の皆さんの意見を聞きながら、あらゆる創作者を守り育てる形で推し進めていきたいと考えています。                

同人デビューは1990年、大学生2年生の頃です。プロを目指してマンガを描く日々では、年2回のコミケ参加は毎回が腕試しであり、創作の励みでした。商業誌でプロデビューのあとも同人誌を描き続け、現在でも既刊新刊をコミケで頒布しています。同人誌即売会の参加歴は非常に長く、会議室クラスはもちろん、コミケのシャッター前も数多く経験してきました。 私自身の体験も含めて、二次創作やパロディは繊細で高度な文化活動だと思っています。これからも発展をサポートし、私も同人作家を続けていくつもりです。

2020年以降の新型コロナウイルスの猛威により、同人誌即売会をはじめとする多くの対面イベントが存続の危機に陥りました。これまでも同人文化はTPP協定による著作権の非親告罪化をはじめ、様々な困難を乗り越えてきました。これからも文化の裾野である同人文化を守り、自由な創作活動が阻害されないよう活動してまいります。