海賊版サイトはクリエイターの血と汗の結晶である作品を盗用して利益を横取りする卑劣な犯罪です。コロナ禍の巣ごもりで、海外 サーバにある海賊版漫画サイトがまた勢いを増しました。既存の雑誌やコミックはもちろんのこと、海賊版サイトはとくに新人作家に 大きな被害を及ぼしています。新人作家の多くは紙のコミックではなく、電子版のみで出版されるケースがほとんどです。電子版は盗 用が容易いため、海賊版の格好の餌食にされます。そのため新人作家は売り上げも読者もかなりの部分が海賊版サイトに持っていかれ ている状態です。作家の正当な収益と将来資産や利益を守る手立てを可及的速やかに取らなくてはなりません。 海賊版サイトを違法化して警察に突き出しても実効性が担保されるとは限りません。そこで私は、2021年に海賊版サイトの収入源である広告代理店を相手取った裁判を始めました。広告を止め、兵糧攻めにするという海賊版サイト対策として別の角度からの光を当てることが出来ました。もっとも、これは1手に過ぎず、サイバー警察局を通じた国際的な取り締まりの強化など不断の対策を推し進めねばなりません。
1999年1月に児童ポルノ禁止法が施行され、その後、改正のたびに「児童ポルノの中に創作物を含めるか」が議論されています。 2013年、児童ポルノの個人的保有の禁止を盛り込んだ改正案を国会に提出しようという動きがありました。このとき、山田太郎議員が 日本漫画家協会に連絡をくれました。これが山田議員との出会いです。実写の児童ポルノは、子どもが傷つき、被害に遭うものです が、創作物の場合、そこに実在する被害者はいません。架空の児童を描いた創作物を取り締まることよりも、現実の被害者を救済する ことがこの法律の目的であるべきです。 そこで、ちばてつや先生や松本零士先生とともに、当時の法務大臣・谷垣禎一議員や民主党代 表・海江田万里議員、党派を超えた規制派議員たちと面会。直接政治の現場に働きかけることで危機を免れました。
コミケを中心とした同人誌・コスプレ文化が、存続の危機に瀕しました。TPP協定加盟時に、著作権侵害がすべて「非親告罪」になる可能 性があったからです。現在、著作権を侵害した人を訴えられるのは著作権者本人のみ、という「親告罪」。しかし「非親告罪」となる と、検察官が独自に起訴できるため、パロディを描いた作家さんが危険にさらされます。コスプレや「歌ってみた」「踊ってみた」と いった動画、商業誌でのオマージュも、どれも違法だとして第三者から通報される可能性があります。これではクリエイターは萎縮して、創作活動も自由にできなくなり、当然コミケも開催中止・禁止の対象になるでしょう。そこで山田議員と一緒に積極的に条文交渉の現場に働きかけ、二次創作は「非親告罪」から除外されることになりました。そしてコミケは、変わらずにその歴史を続けていける ようになったのです。
2019年、漫画の海賊版サイト対策として、著作権法改正案が提出されました。この法案ではインターネット上に不法にアップロードさ れた画像をメモ代わりとしてスクリーンショットを撮ることすら違法になる可能性がありました。これには侵害を受けている著作権者 である漫画家たちが猛反論。私も有識者・参考人として、自民党知財戦略調査会、文科部会の合同役員会や国会でスピーチ。いわゆる 「スクショ違法化」の改正法案は排除されました。逆に、海賊版漫画を丸ごとダウンロードできるリーチサイトについては規制が及ば ないことに。これを違法とするため、1年以上に渡って関係各所に働きかけました。その結果、スクショ自体は法に抵触せず、海賊版サ イトへのアップロード行為やリーチサイトは違法であるという法案が、2020年に可決。衆参全会一致での可決は感動的ですらありまし た。
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、私たちの生活や価値観は大きく変化しました。特にこれまで私たちが当たり前のよう に親しみ、待ち望んでいたイベントやエンターテイメントは、今までのようには開催することができず、産業全体で大きな打撃を受けて います。私は一人の同人誌クリエイターとして、そして同人誌ファンとして、日本各地の同人誌即売会に足を運んできました。その私の アイデンティティの一部ともいえる同人誌即売会が、いま存続の危機にあります。これは同人誌即売会に限った話ではありません。音 楽、舞台、あらゆる芸術活動が危機的状況にあります。 この状況の打開策として政府は文化庁のArts For the Futureや経済産業省のJLOD‐Liveなどの支援を行っておりますが、同じクリエイ ターの皆様から、制度設計や申請手続き上の不備・不満の声を多数いただきました。私は山田太郎議員とともに、政府にこれらの声届 け、より良い制度設計に向けて協議を重ねてきました。決して”文化の灯”が消えることのないよう、クリエイター・事業者、そしてファ ンの皆様の声に耳を傾けながら、文化芸術団体に対する支援をこれからも拡充していきます。
ハリウッド映画で日本のゲームキャラクターが登場したり、東京オリンピックの開会式でも入場行進にゲーム音楽が利用されたよう に、今や日本のゲームコンテンツは国内のみならず、世界中で親しまれているコンテンツになりました。一方で、ゲームが健康に悪影響 を及ぼすものとして「ゲーム規制」を進める流れも国内外で存在しています。日本では、香川県が「ネット・ゲーム依存症対策条例」制 定したことが波紋を呼びました。私はこれまで山田太郎議員とともに、政府の担当者と精神科医などの専門家を交えて勉強会を開催す るなど、「ゲーム障害」を科学的に検証していくことに努めてきました。実は私自身も過去に「ウルティマオンライン」を十年以上プ レイし続け、寝食を忘れ、トイレも我慢するほど熱中していましたが、社会的機能の低下がないならば、ゲーム障害には該当しないよ うです。私はゲームの依存症のようなものが全くないとは言いませんが、ゲームを一律に「悪いもの」として政府や自治体がレッテルを 張り、一律に規制をしていくのは間違っていると考えています。ゲーム障害とは何か、科学的に紐解きながら、ゲーム障害と呼ばれるま でに至る背景や、根本的な問題に丁寧に取り組んでいくべきです。
映画・音楽・映像・写真などの創作の現場は多くのフリーランスに支えられています。たとえばアニメ業界を例に挙げると、アニメー ターの約半数が下請けにあたるフリーランス・自営業で、年収は平均125万円ほどという現状です。(『アニメーター実態調査2019』 より) 動画という高度な専門技術にもかかわらず、フリーランスは過労働と経済的困窮に瀕しています。これでは日本のアニメ業界に優れた人 材は集まってこなくなり、やがては日本アニメ産業そのものが先細りになってしまうでしょう。早急に改善策を打たなければなりませ ん。 創作・文化に関わるフリーランスの経済的・社会的な待遇を改善し、安定した日々の創作環境と、老後の不安に対する基盤作りは急務 です。健康保険加入や定期的な健康診断の促進といった健康面のサポートを提言してきましたが、さらに規模を広げ、スピードアップし ていきます。
アーカイブとは、文書や写真、創作物などを記録保管することを言います。ただ保管するだけではなく、デジタル媒体でアーカイブする ことで原本の焼失や消失、劣化を防ぐことができます。大切な創作物を永く後世に継承し、より広く世界に伝えるために、積極的に取 り組むことが必要です。 絶版した紙の漫画をアーカイブして配信する「マンガ図書館Z」は、消滅の危機にある作品をファンと作者のために末長く読んでもらう ために発案しました。「マンガ図書館Z」では広告収入を作者に還元することのほか、埋もれた名作を伝える役割を持っています。紙の 単行本にもならなかった過去の作品が読者の目に触れて、ドラマ化に至った例もあります。
著作隣接権は「著作者ではないけれど、作品の発表に大きな役割を果たした人達に認められる権利」です。音楽CDで言うと、作詞や作曲をした人が著作者で、「著作隣接権」は歌手やレコード会社などに認められる権利です。CDやテレビ番組では著作隣接権はごく普通の存在なのです。また出版社にとって「関わった作品に何らかの自然発生的な権利を持つ」ことは長年の悲願であり、数年ごとに「出版者(出版社)への著作隣接権付与」を国に求める傾向がありました。しかし、出版社への著作隣接権付与はもし実現すれば「届け出などなくても、作品が完成すれば自然発生する権利」であり、漫画家など著作権者から見ると、自分以外の権利者が増えてしまい、自分の作品なのに自由に利活用できない状況になる恐れがありました。そこで、赤松が中心となってネット生討論会やブログで反対活動やロビイングを行い、見事に退けました。