この5月1~2日は、インドのムンバイで開催された「WAVES2025」の国際会議に出席してまいりました!いや~暑かった!(気温38℃とか)
インドは世界最大の人口(14億人)を持ち、国民の平均年齢は何と28才!そして巨大な中間所得層を持ち、みんなエンタメ系コンテンツが大好きという、コンテンツ市場としては将来有望すぎる凄い国でございます。
今回の訪印の主な目的は、
(1)日本の文科大臣政務官としてWAVESの閣僚級会議に出席し、世界各国に対して日本の誇るエンタメ・コンテンツの現在と未来を説明しつつ、現役クリエイターとしても日本文化をアピールしてくる
(2)インドにおける日本の漫画・アニメ・ゲームの存在感を調査し、できれば今後の市場開拓のための繋がりも作る
(3)インドのクリエイター達や専門ショップと交流を図り、相互理解と商業的な協力体制のきっかけを築く
(4)国民14億人を率いるモディ首相(または担当大臣)に、マンガ外交の第一弾として似顔絵パネルを進呈し、漫画アニメゲームを通じた両国間友好を語ってくる
・・・実際のところ、上記1〜4は(初回にしては)非常に上手くいきました!大成功と言って良いでしょう。以下、詳しく説明していきます。

1日目(1):WAVES2025
4月30日のうちに羽田空港からデリー経由でムンバイへ。大体9時間くらいでしょうか。デリーがインド政治の中心とすると、ムンバイはまさにインド経済の中心地です。とにかく至る所に今回の「WAVES2025」の看板やポスターが無数に貼ってあり、インド側の意気込みを感じます。
5月1日の朝10時頃から「WAVES2025」の開幕式イベント。最近テロ事件があったため警戒は厳重でしたが、音楽やダンスや特殊効果でとにかく賑やか!さすがはインドです。

そして、これは事前レクチャーで知っていたのですが、とにかくゲストの演説が多くて長いです。モディ首相の演説だけでも軽く40分はしゃべっています。これも日本では考えられない。しかし内容は素晴らしいことをおっしゃっており、「インドのコンテンツ産業はその規模を増加させる!アニメ市場も倍増!色々なクリエイター達がインドに新しい波を生み出している!」といった具合で、私もグイグイ引き込まれました。

・・・そう、今回のWAVES2025は、モディ首相の肝いりで開催される「コンテンツ&クリエイター系のイベント」なのです。「大臣政務官にしてクリエイター」である赤松が日本代表として派遣されたのも、そういった理由が当然あるでしょう。
今回集まった各国の要人たちとモディ首相との集合写真を撮った後、私はWAVESの各パビリオンを視察。特にクランチロールやSONYやJETROなど、コンテンツ系を中心に見て回りました。

1日目(2):マンガ専門店
さて、ここで一旦会場を離れ、前述した(2)インドにおける日本の漫画・アニメ・ゲームの存在感を調査するため、街のショッピングモールへ。まず「Jio World Drive」というメジャーな商業施設で、インドの日常における本屋や玩具店を視察。また「Game Baba」というインドでは珍しいマニア向けのゲームショップも訪問。コンシューマー向けのゲーム機はまださっぱり普及していませんが、スマホの普及率は高いので、伸びしろがあるにしても方向性を考える必要はありそうです。

最も驚いたのは、インド唯一ではないかと思われるマンガ専門店「The Comic Book Store」。日本の漫画家・赤松健が訪れるということでレッド・カーペットが敷かれ、カメラ数台が待ち受けていました。


ここには高い実力を持つインドのクリエイター達もいて、「今後インド国内でマンガ産業を成立させるにはどうしたらいいか」などの具体的な会談も行いました。ツールは(クリスタもありますが)プロクリエイトやフォトショップが多い模様。
とにかく日本は国民がみんなマンガを読むもので、内需産業として完全に成立しているのですが、インドでもまず内需として固めてから海外を狙うようにしないと、中身スカスカの産業になってしまうと思います。そのためには若いクリエイターがインド国内で人気になるのが一番。先方から具体的なプロジェクトの提案も受けたので、日本に持ち帰って検討します。
20時半からは、JETRO主催のネットワーキングディナー。WAVESでマンガ系シンポジウムを行った日本の著名人たちもいて、名刺を一気に消費。まさにインドでの映画・アニメ・ゲームの企業体をどうしていくかの話で盛り上がりました。

インドは「遅々として進む」という変な国で、基本は好意的に物事が進むのですが、とにかく手続きが面倒でしかも超遅いようです。これは現地に来た日本人誰もが言っています。ここはモディ首相にイニシアチブをとってもらうしかないと私は考えています。「アニメやゲーミング産業に力を入れる!」と断言されていたわけですから。それを話す機会をいつか得たいものです。
2日目:閣僚級会議とゲームセンター
さて、今回のメインの任務である「WAVESの閣僚級会議」が、5月2日の10時半から始まりました。これは今回集まった世界各国の文化系の政府要人たちが、自国のコンテンツ&クリエイターの話やインドのこと、そしてWAVESの意義や期待などを、4分程度ずつスピーチしていくもの。

割とみんな真面目な感じで、淡々と会議は進んでいきました。そこで、私は持参した「モディ首相の似顔絵パネル」をいきなり出して、
「皆さんは日本のマンガやアニメをご存じでしょうか? ナルト・ドラゴンボール・ドラえもん・・・実は私は政治家であると同時にマンガ家でもあり、今回モディ首相の似顔絵を描いてまいりました!」と英語でぶちかましたところ、会場は初めて拍手と歓声が!(笑)

さらに「私はマンガやアニメのパワーを通じて各国間の友好を築きたいと思っています!」と続け、後は日本語(+同時通訳)で日本のコンテンツパワーをアピール。
スピーチ終了直後は、ひな壇のヴァイシュナウ情報通信大臣とジャイシャンカル外務大臣が「こっちに来て下さい。そのパネルを受け取りたい。」と私を呼び、拍手の中でいきなり似顔絵パネルの贈呈式が始まりました。こんな特別扱いを受けた国は日本だけでしたので、まさにクリエイター系政治家としてのパワー炸裂です。これはどの国もマネできない。(笑)

ところで、この似顔絵パネルですが、事前にインド大使館に行き「首相の似顔絵を描くという行為が宗教的・文化的に問題ないかどうか」をちゃんと確かめてあります。G7広島サミットの似顔絵外交の時も、実は全ての大使館に行っておりまして、著作権的に問題ない写真を参考に描くようにしていますので念のため。皆さまご安心下さい。
閣僚級会合の後は、各国の要人たちでのランチ休憩。G7広島サミットの漫画を印刷した紙を持って行ったので、これが非常に人気で役に立ちました。「これはトルドーさん!メローニさん!」と大笑いです。絵(と音楽とスポーツ)はまさに国境を越えますね。
2日目(2):ゲームセンター
15時からは、インドが円借款で作った全長22kmもの橋を渡って、あのナムコがインドに出店しているゲームセンターを視察。

ゲーセンと言うと日本ではクレーンゲームが稼ぎ頭ですが、インドはおもちゃの関税が70%もありプライズ輸入が成り立ちにくいので、まだまだビデオゲームの比率が高めです。また「海賊版」に非常に悩まされており、その現状や対策など話し合いました。

ただインドは経済大国を目指しており、その過程で(中国もそうでしたが、まともな国として海賊版が多いと対外的に恥ずかしいので)対策は強化されると見ています。あと、ここはまさに政治家の出番ですね。
この写真はインドに2台しかない「太鼓の達人」。海外では現地の音楽を入れるなどの工夫をします。またゲーム料金は硬貨を使わず、専用カードにチャージする方式でした。(硬貨を使うのは日本だけっぽい)

・・・さて、たった二日間でしたが、異様に内容の濃い訪印となりました。現地のコンテンツ系日本企業から宿題も多く頂いたので、GWが終わり次第、早速調査開始したいと思います。
帰りは7時間半で、ムンバイから成田に着きました。思ったよりも近い国だと思います。今後もインドとは文化を通じて友好を深めたいものです。
