この記事を要約すると

・コロナ禍における政府からの一方的な中止要請・負担の大きい補助金システムによりコミケを始めとする同人誌即売会・エンタメイベント当事者から大きな不満の声が。

・政府が現場の声を聴かずに一方的な行動を続けたことが原因、政府へ現場の声を届けるべく、現状と要望をきちんと現場の方々からヒアリングしました。

・山田太郎議員協力のもと、現場の声が文化庁等に伝えられ、同人誌即売会・エンタメイベント再開に向けて補助金等の拡充に繋げることができました。


 こんにちは、赤松健です。

 2020年4月に初めて緊急事態宣言が出てからもう2年、予想をはるかに超える長期間コロナ禍が続く世界となってしまっています。このコロナ禍と同人業界・エンタメイベント業界に起きた問題点、私の動きについてご説明します。

同人業界・エンタメイベント業界からの政府への不信感

 コロナ禍における感染対策において政府や地方自治体は、同人業界・エンタメイベント業界に対しても一方的、それも開催直前の中止・延期要請を行い、同業界に混乱を強いました。

 赤ブーブー通信社が主催する「スーパーコミックシティ」もその1つです。スーパーコミックシティは、約1900のサークルが出店を予定していた大規模な即売会でした。2021年4月25日の開催を予定し準備をしていた同社は、同月23日、開催日のたった2日前にある連絡を受けました。同月23日に発令された緊急事態宣言に応じた「無観客、もしくはオンラインでなければイベントは中止または延期」という事実上の中止通達でした。

 この一方で、スーパーコミックシティが開催予定だった25日には、プロ野球や歌劇などが観客を入れての開催を行っていました。この裏には、内閣府の定める催物の開催制限の例外があります。それはこう記されています。

「無観客化・延期等を実施すると多大な混乱が生じてしまう場合も想定されることから、このような事態と主催者が判断する場合には、例外的に、25日から直ちに無観客化・延期等を実施しないこととして差し支えないこともある」

https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_20210423.pdf

 赤ブーブー通信社もこの措置が適用されるのではないかと、東京ビッグサイト側の担当者に訴えましたが、結局受け入れられることはありませんでした。しかし、開催されたプロ野球との違いは何なのでしょうか。不公平感が否めません。

 スーパーコミックシティは30年以上の長い歴史を持つ同人誌即売会です。私も何度も参加し、出展者の熱量や相互交流に何度も心動かされてきました。そんなスーパーコミックシティが、政府の一方的かつ不公平な判断によって中止を余儀なくされている。

 そして、悲しみに暮れているのは参加者の方でしょう。赤ブーブー通信社代表の赤桐さんも、開催中止を告げられた参加者についてこう語ります。

「家に本届いた子たちはどうするんだっていう。印刷会社が本を刷って持っていくだけの状態に、参加者はお金を払っていた。会社じゃない個人ですし、心配です」

https://www.j-cast.com/2021/04/27410485.html?p=all

 長年参加していた私としては、赤桐さんの心配の気持ちも参加者の気持ちも痛いほど分かり、胸がつぶれる思いでした。

 

同様に、同人業界・エンタメイベント業界からは政府への不信感を募らせる声が各方面から聞こえてきていました。

「感染者を出していないにもかかわらず、人流抑制のために突然活動を0にされた」「こちらはお客さんを入れて駄目なのに、飲食店は入れてよいことを恣意的に感じる」「「人流抑制」が耳に聞こえがいいから利用していると関係者は理解している。受け入れ難い」「ステージがあがったのは、行政と医療産業が上手く連携できず病床がひっ迫したことが原因であり、そのつけをその他の産業に押し付けられるのは困る」などなどです。

 こうした不満が起きるのは、政府が現場の声を丁寧に聴かずに、押し付け的な中止・延期要請と補助策を行っていることが原因だと私は考えていました。

同人業界・エンタメイベント業界の現場の声を政府に届けよう!

 そこで、政府に現場の声を届けるため、同人誌業界・エンタメイベント業界と長らく付き合いのある経歴・人脈を用いて、同人業界・エンタメイベント業界の関係者に広くヒアリングをしました。

 具体的には、同人誌印刷所「ねこのしっぽ」社長の内田さん、スーパーコミックシティやコミックシティを主催する赤ブーブー通信社代表の赤桐さん、小規模即売会運営をしているM.A.JOYさん、comic1の池上さん・北條さん、古参二次創作同人作家の有馬啓太郎さん、漫画・アニメ・ゲームの舞台化で知られる「ネルケプランニング」副社長様、声優で会社代表の緒方恵美さん、そして演劇の現状や支援策に詳しい福井健策弁護士と本件に深く関係するメンバーにヒアリングをしました。

 このヒアリングは、山田太郎議員と共に行いました。最初は、山田太郎議員が主導でこうした同人業界の方から話を聞くかたちでしたが、政治家主導で話を聞いても同人業界の方を萎縮させ、本音を聞き出せない可能性がありました。それでは、せっかく現場の方にヒアリングしたのに、実際には求められていない政策となってしまいます。ですから、同人作家でもある私がいわばハブとなってこういう場をセッティングすることで、率直な意見を聞き出そうという試みでした

同人業界・エンタメイベント業界の現場のヒアリングの結果

 一口に同人業界・エンタメイベント業界といっても様々な立ち位置の人達にお話を聞いたので、意見に相違はありましたが、以下のような意見を聞くことが出来ました。

  • 同人業界は、同人イベントが何よりもコアなので、サプライチェーンとなる業者も。果てしない補助金の連鎖よりも、まずは同人イベントがちゃんと行われるようなサポートが必要
  • 持続化給付金等はありがたいが、正直焼け石に水程度の金額しかない
  • イベント主催者として助かるのは会場費の減免制度。中止or赤字での強硬開催ではなく、サイズをコントロールして生き残るという第3の選択肢のサポートが欲しい
  • コロナ禍でのイベント主催は、感染対策となる消毒や個人情報の管理など開催にあたってのコストが膨大。増加した手続について聞けるような支援窓口がほしい。
  • 政府からの中止要請が突然すぎたり、中止要請した後の負担が開催者に丸投げな状態となっている。中止後の支援も事前に決まっていると開催に安心。
  • リアルイベントでなくライブ配信だとチケットが直前まで売れず、心労が大きいことが現場では深刻な問題。
  • J-LODliveの支援策はありがたい。一方で、この申請が厳密過ぎて「J-LOD鬱」という言葉が生まれるほど。「補償は損失額から計算すべき」との意見も。
  • 中止基準をエビデンスを持った明確なものにすべき。そうでないと、これから復帰にあたっても、基準が無いためずるずるとリスク評価のみで再開が遅れてしまう。
  • イベント主催者に補償があっても出展者にはない

 現場の声を聴いて初めて分かったことも、想像していたとおりのリスクが発生していることもあり、非常に意義深いヒアリングとなったと感じました。

現場の声を文化庁等に届ける

 こうしたヒアリングを終えた私は、今回のヒアリングにおける現場の声を山田太郎議員に託しました。山田議員はこの後さっそく、文化庁・経済産業省・新型コロナウイルス感染症対策推進室の担当者らと、アーティストや文化活動への支援について打合せを行ってくれました。

 現場のたくさんの方々からのヒアリング、山田議員の働きかけの結果、ARTS for the future!、J-LODliveといった補助金、持続化給付金等の給付金、資金繰り支援等の融資といった幅広い支援策の改善・拡充につなげることが出来ました!

 その後も私は、C99回債のため関係者と政府打合せに同席し、現場の声を届け続けるなど、同人誌即売会支援を継続しています。

 同人誌即売会を始めとする二次創作文化は私の育ての親ですし、演劇もマンガアニメゲーム文化と切り離せないものとなってきており、それらのリアルイベントに込められるクリエイターたちの熱量の源泉となる場が失われるのはあってはならないことです。

 コロナ禍という未知の状況とはいえ、政府とも協力して、未来ある形で同人誌即売会・リアルイベントの支援が行われるよう、これからも声を届け続けます!