こんにちは。赤松健です。
今回は、直近で話題となった二次創作とその保護政策について説明させてください。私は、二次創作についてこれまでも、これからも強い意志で守り抜きます。
二次創作という不安定な文化
二次創作とは、原作をもとに作られた創作物一般のことで、ざっくり言ってしまえば、ネットに数多く発表されている人気作品のキャラクターを描いた絵など、原作ありきの作品は広く二次創作です。
そして、この二次創作は、法的にはグレー、立場が不安定なものとされているものが多いです。
著作権法上、二次創作の作品によってはその作品作りをする行為も著作者が独占できる権利のうちに入っており、著作者の許可が無い二次創作は著作権侵害とされてしまう可能性があるからです。
ネット上に数多く発表されている二次創作で、著作者の許可を取っているものは多くないと思われます。しかし、無断でコソコソやっている、というよりは、原作者や著作者も二次創作の盛り上がりによるメリットがあることを認識し、二次創作をいわば「黙認」するということが長い間日本のマンガ・アニメ・ゲーム文化で一般的になり、それがもはや文化として広く認識されているのが現状でしょう。
不安定な二次創作は、原作者・著作者と二次創作者の間のいわば「阿吽の呼吸」によって成り立っているものでした。
ゆっくり茶番劇事件を受けて
その間に割って入って、商標権という法的制度を利用し、第3者が権利主張してきたのが「ゆっくり茶番劇事件」と言えます。
この事件については、原作者のZUNさんや、「ゆっくり茶番劇」の盛り上がりの場であったニコニコ動画を運営しているドワンゴの栗田さんが積極的に動き、最終的には商標権放棄という結論に落ち着きました。
しかし、これは「ゆっくり茶番劇」という二次創作の1ジャンルの危機が去ったという話に過ぎません。
商標権制度の利用によって、二次創作が脅かされうるという状況自体は変わっていないのです。むしろ、その手法が広く知られたことによって、危険性は増したとすら言えるかもしれません。
実際に、「ゆっくり茶番劇事件」は二次創作文化の1ジャンルを萎縮、消滅寸前にまで追いやりました。今回の件を受け、「ゆっくり茶番劇」関係の動画を一挙に削除したという声もありました。ニコニコ動画は、削除した動画につき復旧作業の個別対応等のユーザーに寄り添う献身的な姿勢を見せており素晴らしいですが、引き続き対応に迫られています。
商標権については、一度通ってしまったものについても、事後的に無効にする審判制度があります。また、そもそも今回の件のような動画ジャンルの名称の商標権取得については商標権の効果が及ばない(商標的使用とならない)とする意見も少なくありません。
しかし、特許庁によれば、商標の無効審判の平均審理期間は13.1か月です(2019年)。審理しているうちにその二次創作文化は消滅してしまうでしょう。商標的使用とならないと言われても、二次創作のユーザーがリスクを取ってまでやるとは思えません。
現行の商標権制度では、二次創作文化へのリスクがどうしても拭えません。二次創作の適切かつ正当な保護のためには、法改正等の対応が急務です。
商標権制度自体は、ブランド等の保護のために必要な制度ですから、具体的にどうバランスを取っていくのか見当が必要です。これまで二次創作を守ってきた私自身も全く新たな場面ですから、その模索をしていき、二次創作文化を保護する法制度の確立を目指します。
過去にもあった第3者による二次創作の危機
過去にも、原作者・著作者と二次創作者の間で成り立っていた二次創作が、第3者により危機に晒されてしまうおそれがあり、私も二次創作保護の先頭に立つ1人として戦った時がありました。
2015年、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定による著作権法の非親告罪化です。
著作権法は、親告罪といって、被害者が著作権を侵害している相手を訴えて初めて検察官が侵害者を起訴できる仕組みになってします。しかし、TPP協定に合わせて著作権法が非親告罪化、すなわち検察官という第3者の独断で起訴できるようになってしまう可能性があった、これがTPP協定による著作権法の非親告罪化問題です。
起訴のおそれを受け入れながら二次創作をする人などほぼ0でしょう。二次創作文化の絶対的危機だと感じた私は、4年以上メディアにて問題意識を述べ続け、世論を形成し続けました。世論の声を背に受け、最終的には、文科大臣や政府関係者、マスコミ、コミケ等当事者の打合せをセット、二次創作を保護する形での非親告罪化の範囲を限定する言質を取りました。こうして、著作権法の非親告罪化による二次創作文化の突然死は防がれたのです。
二次創作は、立場が不安定な文化です。しかし、私自身も数えきれないほど同人誌即売会に行ったり、ネットで二次創作を楽しんでいますから、二次創作が素晴らしい文化であると身をもって体感し続け、心から思っています。
今は商標権という新たな局面ですが、今後どんな局面になっても、TPP非親告罪化時のように、二次創作文化の保護政策を掲げ、戦い抜きます。