2021年8月22日以降の私が参加したフォーラムで使用した資料(「複雑化・多様化する表現の自由を巡る問題」)に「アクタージュ」の記載があることで、「赤松健「性犯罪で逮捕されるのは表現の自由の侵害」」、「「性犯罪ごとき」での逮捕や打ち切りはすべきでない?」等のツイートが見られます。

しかし、私は、そのような主張は一切行っておりませんし、当然そのような考えもありません。もちろん、性犯罪で逮捕されるのは表現の自由の侵害ではないと認識していますし、性犯罪を「ごとき」などと軽んじてもおりません。

ではなぜ、私の資料で「アクタージュ」を取り上げているのか、以下その理由を説明します。

2020年8月8日、週刊少年ジャンプで連載中の漫画「アクタージュ」の原作者が強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。
同月10日、週刊少年ジャンプ編集部より、作画担当の宇佐崎しろ先生との話し合いのもと「アクタージュ」の連載終了が決まったとの発表がなされました。
さらに、同月17日には、既刊本は無期限出荷停止、新刊本は発売中止、電子版も無期限の配信停止という発表もなされました。

このような対応については、被害者への配慮から当然であるといった意見、社会への影響からやむを得ないといった意見、作品に罪はないといった意見、打ち切りは仕方がないが既刊本まで出荷停止するのは行き過ぎた自主規制であるといった意見等、表現の自由にも関係する様々な意見がありました。

私は、「アクタージュ」の件については、週刊少年ジャンプ編集部と作画担当の宇佐崎しろ先生とが話し合った結果とのことですので、上記の民間による自主的な対応を支持しています。

作者や出演者等が犯罪を犯した場合に作品・コンテンツはどう取り扱うべきかについては、法律のルールはなく、個別のケースにおいてそれぞれの当事者が考えなければならない問題です。

「アクタージュ」のように共同で制作され他の作者や出演者等がいる場合、その作品をどう取り扱うべきかは特に難しい問題です。

同じ資料の「2021年~」「裁判」のところで取り上げている「映画『宮本から君へ』」もまさに同様のケースと考えています。

この映画の場合は、出演者の一人が撮影後・公開前に麻薬取締法違反の疑いで逮捕されましたが、改編や追加撮影を行わず公開されました。
(この映画に関しては、出演者の一人の犯罪行為を理由とした助成金の交付内定の取消しといった別の問題もあります)

それぞれのケースで別々の対応がなされており、どうあるべきか検討が必要です。

以上のように、私の資料で「アクタージュ」を取り上げているのは、作者や出演者等が犯罪を犯した場合に作品・コンテンツはどう扱われるべきかを皆さんと議論したいとの考えからです。