初日(1):パリ日本文化会館

フランス視察の初日、天気は晴れ。 まず朝10時半から、日本文化の発信拠点「パリ日本文化会館」を視察。
『UFOロボ・グレンダイザー』の特別展「GOLDORAK XPERIENZ」や、『男はつらいよ』全50作品一年間連続上映など、大人気イベントを連発した施設ですね。

現在は『土門拳 日本のリアリズムの巨匠』展をやっており、本日最終日ということで、大賑わいでした。一階エントランスにはゲーム『グランツーリスモ』の展示も。

伝統的な日本文化も大切ですが、最近はやはりポップカルチャーの集客力が高いようです。 エッフェル塔に程近い素晴らしい場所にあり、広い図書館や大きな上映ホールも2つ完備。茶道や華道の教室なども通じて日本文化を広めている、海外における日本文化発信拠点としては最強レベルの施設と思いました。

こういった施設を更にもっと活用し、「日本コンテンツの良さを生かしたまま、海外進出を助成する」施策を進めていくべき。その場合、やはり漫画・アニメ・ゲームが中心となっていくでしょう。詳しい議員がなかなか少ないので、帰国後に(広報も含めて)今後の方向性を探っていきたいと思います。

初日(2):マッセグリア議員との面会

次に昼12時から、フランスの議員会館でドゥニ・マッセグリア議員(国民議会:日本の衆議院に相当)と面会。デジタル・カルチャーに詳しく、フランス議会ではそれを先導する議員です。以前はレトロゲームの研究会も主催していたそうで、私との相性も抜群!

まずフランスの議員会館内のレストランで会食しつつ、映画業界の助成や、ゲーム保存の話、アニメ業界や生成AIに至るまで、ガッチリお話ししてきました。 もちろん、得意の似顔絵パネルも進呈。マッセグリア議員は早速オフィスに飾っておられましたよ。

続けて、フランスの国会議事堂(国民議会)を案内して頂きました。議事堂内に入ったのはこれが初めてです。とにかく「ここはルーブルか?!」と思うほど絵画や装飾、彫刻が施されており、広さ自体は日本の議事堂の方が広いのですが、その美しさと重厚さ(文化の歴史の重み)には感銘を受けました!

有名な館内図書館や、本物の議長の入場シーン(鼓笛隊の太鼓が鳴る)も見ることができ、初日からフランス視察のハイライトが来た感じです。 この体験を、平和や友好、文化交流のための「議員外交」に活かさなくてはいけません。次は私がフランス(のみならず各国の)議員を日本の国会議事堂に招待する番ですね。

初日(3):フランス国立図書館リシュリュー館

初日の最後は、15時半からフランス国立図書館(BnF)の「リシュリュー館」を視察。

フランスでは図書館と美術館の関係性が近く、図書館が(本以外に)美術品を多く所蔵していて、館内で展示していることもあるようです。リシュリュー館も2階が美術館になっていて、太古の金貨や陶器、はたまたバッハやモーツァルトの自筆楽譜など、垂涎のコレクションが展示されています。一部のコレクションでは日本のDNPが保存と展示に協力していましたよ。

もちろん図書館部分も素晴らしく、改修工事が終わって、映画のワンシーンに出てきそうな格好いい図書館となりました。人気の「漫画(&仏バンドデシネ)」収蔵にも力を入れており、日本漫画を数多く読むことができますので、漫画家や漫画好きの皆さんもぜひ行ってみてください。何と『ラブひな』もありました!

次の一手は、フランス全土の図書館が本の著作者に対して支払っている、補償金に関する調査ですね。何と、はるか遠くの日本人漫画家(赤松など)にまで、毎年かなりの金額が振り込まれており、その「文化に対する敬意」と同時に、かかる手間と時間を考えると気が遠くなります。一体どういう哲学で図書館側が支払っているのか。今後調べていきます。

二日目:Japan EXPO 2023

フランス「Japan EXPO 2023(ジャパンエキスポ)」に公式ゲストとして参加。
ジャパンエキスポとは、漫画・アニメ・ゲームなどのポップカルチャーを中心に、伝統文化を含む日本文化をテーマとするパリの超巨大イベントです。

シャルル・ド・ゴール空港空港の近くの巨大展示場で開かれ、今年は4日間でのべ30万人の来場者が見込まれています。コスプレ参加者も多く非常に華やかで、もう地平線まで人、人、人。私は8年前にゲスト参加したのですが、その頃より確実にパワーアップしています!

さて、まず11時からは各メディアの取材。雑誌やwebニュースなどの取材を15分ずつ4組受けました。質問はどこも本格派で、赤松作品のみならず、日本漫画の今後や、アニメと世界展開、表現規制や生成AIまで多種多様。バッチリ回答しましたが、全てフランスのメディアなのであまり見る機会は無いかも? 明日も取材が一時間あります。

昼食の後、14時からサイン会。今回専用のサイン色紙に、一時間サインを描き続けました。皆さん、赤松作品のコミックスやグッズなどを持ってアピールして下さり、ありがたい限りです。明日もサイン会が一時間あります。

最後に16時半から、芸術的カンファレンス。「フランスの創造性に与えた漫画の影響力」と題して、フランスの漫画(バンドデシネ)家さん達3名と舞台上でお話しするイベントです。日本漫画が世界に及ぼした影響や、それによって自分たちの作風がどう変わったかなど、具体的かつ興味深い話が続きました。 私からは、G7似顔絵企画の時のような「漫画を通じて各国が友好を深める」+「各々の作品の質を上げる」ことから始めて、やがて世界平和につながる道を模索する旨を発言し、熱いフランスの観客から拍手を頂きました。明日は「学術的カンファレンス」と題して、今度はフランスの議員さんや出版社代表とお話しします。これも楽しみ。

もう、とにかく来場者が多くて多くて、しかも主に日本の漫画アニメ好きな人々ばかりなのです。ここまで「日本のポップカルチャーが大好きなフランス人」が多いだなんて、皆さんも会場を見たら感激しますよ!

三日目:Japan EXPO 2023

本日も「Japan EXPO 2023」に公式ゲスト参加。
土日曜に入って、ジャパンエキスポはますます凄い来場者数。まさにコミケ並みの混雑です。

まず11時から、各メディアの取材。20分ずつ3社。中でもMANGA-NEWS!さんは赤松作品を読み込んでおり、作者もビックリの専門的な質問を連発。例えば「ラブコメからバトル展開に移行する際の心境や読者の評価」など。他の作品に関する質問からも、その深いマンガ愛が伝わってきました。

昼食の後、14時半から「学術的カンファレンス」。 赤松を迎えて、一昨日のドゥニ・マッセグリア議員、仏漫画出版社のゴワール総括D、JapanExpo共同創始者トマ・シルデ氏というメンバー4名が、「フランスや世界各国における日本の影響力、また漫画が果たす役割を産業と政治の観点から考察する」という非常に本格的な内容です。

司会のステファン・ヤルノ氏(ジャーナリスト)の仕切りが抜群。「なぜ日本の漫画が世界で受け入れられたか」という比較的ライトな話題から入り、日本コンテンツの内容面に関連して「表現の自由のあり方とポリコレ」について議論された後、今度は「生成系AI」について各自がその考え方と今後を語るという、ジャパンエキスポでは今までなかったタイプの硬派なイベントとなりました。 フランスの観客はこういった議論が好きなようで、会場は大入り。メンバーも非常にエキサイティングだったとのことです。

16時から、最後のサイン会。 本会のスペシャル公式ゲストである北条司先生に続いて、一時間に渡りサインしてきました。皆さん、例によって思い入れのあるコミックスやグッズを手に「ネギまが初めて買ったマンガです!」など声をかけて下さいます。とても嬉しいですね。

途中で、経産省の「大阪万博2025」宣伝ブースを訪問しました。何と赤松は今回、経産省ブースの「大阪万博チラシ」にイラストとマンガを提供しており、ミャクミャク様とのツーショットも実現! ミャクミャク様の海外進出はこれが初だそうで、今後も応援していきます!

本会のスペシャル公式ゲストである、YOSHIKIさんとの面会が実現!(※お写真のSNS公開は許諾済み) いくつか質問いたしました。

  • 「アニメの音楽を担当されていますが、中でも心に残っているのは?」と聞いたところ、『進撃の巨人』だそうです。
  • 「曲を作る前に作品は読みますか?」と聞くと、「もちろん。」とのこと。
  • 「作曲の際、苦労される点は?」と聞いたところ、「メロディが自動的に降ってくるので、苦労したことは無い」そうです。
  • 「漫画やアニメで、世界における日本のプレゼンスを高めていきたいので、ぜひ協力してほしい」と申し上げたところ、「もちろんだ。」と答えて下さいました。

YOSHIKIさん、お忙しい合間での面会ありがとうございました!

四日目:市内見学

昨日まででJapanEXPO参加が終わり、明日からはフランスの公的施設の視察が詰まっているので、実はオフ日は今日だけです。
そこで小さめの美術館巡りをしつつ、名所を見たりお土産を買ったりすることに。

まず朝から「国立中世美術館」へ。敷地内に西暦1~2世紀の大浴場の壁や床がそのまま残っており、当時の様子がありありと伝わってくる、複雑な内部構造を持つ美術館です。その割にコンパクトにまとまっており、有名な一角獣の連作タペストリーまで全部見ても二時間かかりません。ここは何度も行きたい!

次に歩いて「ドラクロワ美術館」へ。1863年までドラクロワがアトリエ兼自宅にしていた邸宅が、今は美術館になっており、絵画のみならずアトリエや画材、美しい中庭まで楽しめます。
こういった、ルーブルやオルセーなどの巨大美術館とは違った「専門性を持ちコンパクトな美術館」は、よりゆっくり作品を鑑賞することができる上に、大抵予約なしで入れるので、大変混雑しているパリではお薦めなルートとなっています。

その後、昼食をとりつつリュクサンブール公園へ。そのスケールは圧巻。天気も良くて素晴らしく気持ちいいです。そのままデパートへ移動し、お土産を購入。

さて、明日からは真面目な視察が続くので、質問表などの再チェックをしつつ、早めに寝ます!

五日目(1):フランス国立視聴覚研究所(ina)

本日から3日間、フランスの公的機関(主に文化&アーカイブ関連)を連続して視察していきます。
目的は、「フランス政府や国民の文化(特に映画やゲーム)に対する考え方と、その具体的な助成策」をヒアリングし、日本で活かせるものがあれば活かす、というもの。
ただし、日本の場合は「漫画(=内需で成り立つ)」を起点に、その「(劇場版)アニメ化」や「主題歌(=音楽)」という独自展開に世界の注目が集まっており、中国や韓国で大ヒットした『THE FIRST SLAM DUNK』も『すずめの戸締まり』も、最近の『推しの子(特にOP)』も、グローバルスタンダード化ではなく「日本らしさ」が愛され世界中に望まれているのだと考えます。 よって、フランスの映画の助成策(=免税や助成金が凄い)をそのまま真似るわけではなく、「日本らしさを維持したまま、使える手法や共同制作の道を探る」といったニュアンスです。

まず朝9時半から「フランス国立視聴覚研究所(ina)」を訪問。

ここはフランスの全テレビ100局(+全ラジオ92局)を24時間365日録画(&録音)し続け、延々とデジタルアーカイブしている施設です。また、フィルム映画やビデオテープ、カセットやLDなど、ありとあらゆるメディアもデジタル化して保存しています。そのためには、VHSビデオデッキをはじめ様々な再生機器が必要。それを整備するホスピタルがもの凄い!もうここに住みたい!

また、それらをHDDに記録し、やがて磁気テープ(FujiFilm製)に移して超長期保存を行います。
ただデジタルアーカイブするだけではなく、研究者や報道などがこれを閲覧することができ、SNSでの広報も行っていました。また、AIによるTV番組(=動画)の分析を行い、「過去数年間の全TV番組で、男女の出演比率はどうなっているか?」程度なら、数字を出すことができます。これは凄い!

結果、inaには2500万時間もの番組データが集積され、「テレビ&ラジオ番組のアーカイブと利活用」に限っては最強の公的施設となったのではないでしょうか。このまま続けていけば、フランス国民がこの施設から得られる恩恵は計り知れません。

・・・しかも、予算規模的には「えっ?」と思うほどリーズナブルな感じでした。もちろん職員さん達の努力があるのでしょうが。 これは、ぜひ日本にも欲しい施設だと思うのですが、皆様いかがでしょうか。

PS. 職員さん達に私のファンがおり、歓迎を受けました。

五日目(2):書店視察

昼食の後、書店Fnacへ。漫画コーナーの売れ筋TOP10は、まさに日本と似たような感じ。私としては、「文化の異なる国の人が、特定のキャラ絵やストーリーを見て、同じように好感を持つ」というのは、本当に凄いことだと思っているのです。これは世界平和へつながる道です。

五日目(3):フランス国立映画センター(CNC)

15時から「フランス国立映画センター(CNC)」を視察。
CNCは、フランスの文化省の下にあるものの経済的に自立し、非常に強い権限をもった機関です。潤沢な資金力で、映画業界全般に対して助成を行っています。映画の企画段階から、脚本、撮影、配給、宣伝、海外展開などあらゆるサポートを実行中。
その資金源は「映画チケット代の10%」「テレビ等の売上から税徴収」「ネトフリ等からも税徴収」など。それらを新規映画のため製作側に配分するのですが、
★前作の売り上げに見合った支援が自動的に得られる(=映画が当たるとプロデューサーは次回作を作りやすくなる)
のが特徴となっています。日本だと「当たった作品にだけ投資をするのか!」と怒る人が出そうですが、フランスではそうなっています。もう一つ、「アーティスティックな映画を、専門家が審査して支援する」形もあり、その二本立てですね。

その助成額たるや恐るべき金額で、CNCが映画やテレビなどに行った支援の総額は、年間7億ユーロ(1ユーロ=155円なら約1085億円)! とにかく税金をとりまくって、助成もしまくり、免税で新規分野を招き入れ、それらの基準を法律やガイドラインでガチガチに固める、というのがフランス流のやり方でした。(そういう国民性なのだとか)

ゲーム開発も同じく、免税措置や助成金がもの凄い!
20年前に支援を始めた時は、「ゲームなんて」という批判もあったそうですが、CNCでは「ゲームも文化的財産なので、援助すべき対象」と考えており、メタバースなども支援中。 アニメ製作も同様で、TV版がヒットしたら次に劇場版アニメを作りやすくなったり、とにかく数多くの助成金システムがあり、聞いていて目が回るほど。助成金が「世界一あるのでは」とCNC担当者の方は語っておりました。

もっとも支援を受けるには「文化的自立性」「フランス的なもの」という二本柱が必要で、他にも様々な審査があるのです。特にフランスの企業や文化が発展したり、雇用が生まれたりすることが重要。こういった独特の「哲学」がないと、単にフランスの真似をしても大失敗することでしょう。

最後に「生成系AIについてどう考えるか?」と質問しました。すると、
「クリエイター達は恐怖を感じており、AI会社とクリエイターの協議会を行った」
「CNCとしては、特に繰り返し作業など、AIの得意な分野に注目している」
「恐怖よりも、いかに上手く使うか、ということをCNCは考えている」 「作品応募の際、生成系AIで作ったかどうかを申告するルールは作った」
との回答を得ました。
また「今後、生成系AIを使った映画の助成はありうるのか?」と質問したところ、先程の二本柱がしっかりしていれば、助成はありうるとの回答でした。ちなみに、学習元データへの配分は考えていないとのこと。EUと言えばAI規制の印象でしたが、現場で聞いてみると、当然一枚岩ではないですね。

結局2時間くらいヒアリングしまして、双方疲労困憊。書けないことも多いのはご容赦ください。
私からは、「日本では映画の興行収入トップ10は多くがアニメであり、まずはマンガ原作のアニメを基点に世界に進出できないかと模索している。その際、またCNCを訪問して良いか」と聞いたところ、「歓迎する」とのことでした。

六日目(1):ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター

本日も、フランス文化芸術関連の施設を視察。
まず朝10時から「ポンピドゥー・センター(ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター)」へ。ここは1~3階までは公共情報図書館で、4~6階までは国立近代美術館となっています。
BnFのリシュリュー館もそうでしたが、フランスでは「図書館と美術館が融合している」場合が結構あります。日本ではその二つは完全に別モノですが、そもそも図書館だって古い所は「貴重な文化遺産」を持っていることも多いわけですから、それを展示したら美術館みたいなものですよね。また、図書館には若い学生を呼び寄せる効果があり、客層の幅が広がって相乗効果があるようです。

まずポンピドゥー・センターの情報図書館(1F-3F)へ。ここには40万冊以上の蔵書があり、一人で自習できるスペースもあります。例によって日本のマンガも多く置いてあり、赤松作品では『魔法先生ネギま!』が全巻揃っていました。来年は「第9番目の芸術=マンガ(バンドデシネ)」の企画展を開くそうです。 私からは、「そこまで日本マンガに入れ込んでくれるのは嬉しいが、フランス自体の国益には直接つながらないので、国民から反発はないか?」と聞いてみました。すると「共存できると思う。フランスのクリエイターがより発展するためのツールであって、世界でどういったことが起こっているかを大きな興味をもって学ぶべき。他国のカルチャーがフランスのアートの栄養になる。だから競争ではなく対話だ。」とのこと。素晴らしい哲学です。

続けて、ポンピドゥー・センターの近代美術館(4F-6F)へ。 こちらはピカソ、マティス、シャガールなど、”オルセー以降”の年代を担当する巨大美術館になっています。本日は偶然定休日で、この圧倒的な展示施設を、私の貸し切り状態で見ることができました。こんな機会は滅多にありません! しかも、例えばドイツの画家オットー・ディクスが描いた、ジャーナリストのシルビア・フォン・ハーデンの肖像画について、見所と意図を美術館の代表の方が丁寧に解説して下さるという・・・。

大体の収録年代は、以下の通りです。
(1)ルーブル美術館:古代~1800年代前半
(2)オルセー美術館:1800年代後半~後期印象派
(3)ポンピドゥー・センター近代美術館:1900年代以降
私も昨年からこの順で回ってきました。ただし本当なら、一施設につき数日間は欲しいところです。

六日目(2):SPRE

14時半からは、フランスの音楽に関する管理団体で「SPRE」を視察。
例えば日本のJASRACは、作曲者や作詞者から著作権の移転を受けて、利用者に対して許諾を行う組織です。でも日本の著作権法では実演家(歌や楽器)やレコード製作者には権利が無いので、JASRACは助けてくれません。そこで、実演が収録されたレコードを公衆に聴かせる行為に対する権利、いわゆる「レコード演奏権・伝達権」が、主にレコード会社から求められています。 今回は、既にそういった権利があるフランスの事情を、調査しに来たわけです。SPREは、日本のJASRACに似た組織(SASEM)と協力して、実際にCDやレコードを流して商売をしている施設(ディスコとかも)から報酬を徴収し、会員の団体に配分している団体です。

私からの質問は、フランスでこの法律が施行された1986年当時の「導入直後の評判」「ロビイングに協力した実演家」「徴収の苦労話」「現在の評判」「作詞家や作曲家との仲」「店舗との仲」など、導入へのハードル調査に集中。フランスでこれを実現したジャック・ラング並みのカリスマと実行力無しでは少々厳しい感じはしました。
SPREに関する細かい部分は、政策秘書の広野さんが丁寧にヒアリングしましたので、日本に持ち帰って検討します。

そういえば10年前、「出版者への権利付与(=出版社に著作隣接権を与える)」を、漫画家側から阻止した中心人物が私(赤松)です。権利者側から見ると、新たに他の徴収が増えるのは、やはり不安があるのですよね。その辺をどうするか等、問題は山積みです。

六日目(3):日本食街見学

パリのオペラ座近くでは、ラーメンやうどん、寿司など日本食が大人気です。実際にサン・タンヌ通りに行ってみたところ、本当にラーメン屋に大行列が!

これには、日本のアニメや漫画の影響がある(=キャラクター達が食べているのを見て、自分も食べたくなった)と言われています。店の行列に並んでお客さん達にヒアリングしてみたところ、ラーメンに関しては確かに影響はあるようです。
「日本の漫画アニメが、海外での日本食ブームに一役買っている」説、今後も調査していきます。(他にも「日本の漫画アニメが、海外からの日本観光ブームに一役買っている」説もあります)

ラーメン自体は(日本のラーメンとは多少解釈が異なっているかもしれませんが)パリの日本食として普通に美味しかったです!

七日目(1):オペラ・ガルニエ

いよいよフランスの最終日!
本日は朝9時半から、あのオペラ座(オペラ・ガルニエ)の視察です。 と言ってもオペラ座で観劇するわけではなく、私の場合は「政府による支援はどうか」や「衣装や大道具などの保存や修復について」など、文化助成策やアーカイブ関連の視察が中心となっています。
・・・こういう視点からオペラ座に来た日本の国会議員は初めてだそうで、しかもクリエイター出身ということで破格の扱いを受けまして、誰もいない「オペラ座の舞台」に上げて頂いたり、衣装の裁縫部署(非公開)などまで詳しく見せて頂きました。嬉し~!

オペラ座は、150年前にシャルル・ガルニエの設計で建築され「ガルニエ宮」と呼ばれます。同じようにギュスターヴ・エッフェルが設計したのが「エッフェル塔」。ガルニエとエッフェルは友達で、何とオペラ座にも当時最先端の「鉄」が使われており、エッフェル氏が鉄骨のリベットのコツを教えたそうなのですよ!これは興奮モノですね!
そして、地下でその鉄骨の露出部分を見まして、リベットも現役の実物を触ることができました!写真の朱色の鉄骨がそれです。「鉄」により、オペラ座は従来不可能とされていた超巨大な空間を確保し、150年後の今もそのまんま使われているのです。凄すぎる!

他にも、普段見られない「舞台裏」を見せて頂き、かなりマニアックな写真を撮りまくり。もちろん豪華絢爛な彫刻など内装も素晴らしいのですが、まずそれを支える構造物あっての装飾ですよね!

さて、ヒアリングでは前述した「政府からの支援策」や「アーカイブ(デジタルも)」を中心に、「人材育成」と「海外との関わり」などについても詳しくお聞きしました。
その際、先方が「オペラ座としては、日本の漫画やアニメ作品に関連する上演を考えたい」とおっしゃるもので、最初は「それは良いですね」とか受け流していたのですが、あまりに何度も「出版社との関わりはあるのか」とか「来年日本に行くので会ってくれ」とか聞いてくるので、「え・・本気なんだ・・・」と気付きまして、真面目に色々お話してきました。
昨日も書きましたが、日本の漫画アニメがフランスで人気なのは本当によく分かりました。図書館や美術館にも日本のポップカルチャーが異常進出しています。しかし、あまりに日本文化が目立ちすぎると、フランスの伝統的な文化を壊してしまうのではないかと不安になってしまうのですよ。
しかし、昨日に続いてオペラ座の偉い方も、「私達のミッションは伝えること。特に歌劇の方は新しい観客にも感動してもらいたい。」と強気です。恐らく、それくらいではフランスの伝統文化は揺るがない(=逆に養分にしてしまうだけ)という自信があるのでしょう。
この貪欲な姿勢がある限り、フランス文化の未来は相当に明るいだろうと言わざるを得ません。

七日目(2):ケ・ブランリ美術館

海外視察と称してはいますが、毎年自費で来ているので、活動は基本自由です。しかし今年も「1:文化関連の公的機関の視察」と「2:漫画を通じた日仏友好」でスケジュールはギチギチ。観光は全然できませんでした。 とにかく「国会議員+漫画家」のネームバリューが強力で、フランスではどの施設へ行っても大歓迎される感じです。この立場を活かして視察を進め、その成果は日本でバッチリ形にしていきたいと思っています。

さて、飛行機まで時間があったので、民族文化や芸術を扱うフランス国立「ケ・ブランリ美術館」へ。昨年「キモノ」展が大ヒットした当館では、今『もののけ姫』のタペストリーが展示されています。このタペストリーは「フランスの伝統的な産業技術+日本のアニメ」のコラボ企画であり、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『風の谷のナウシカ』と計5点が制作される模様。近くで見ると圧巻の迫力です!
https://tokyoartbeat.com/articles/-/aubusson-tapisserie-news-202301
自由度が高いこの美術館を起点に、何かやると良いかもしれない。大英博物館でのマンガ展みたいな。

・・・以上、いかがでしたでしょうか。 一連の報告で、フランスの異常なまでの「日本愛」、そして「それを取り入れて更にフランス文化を発展させていこうという貪欲さ」を感じて頂けたかと思います。 日本は(そんなに愛されてるんだから)もっと自信を持ち、むしろ負けないくらいの貪欲さで文化や作品を発展させていかなくては!