3月19日の文教科学委員会にて、大臣所信に対する質疑を行いました。
私の持ち時間は30分で、文科大臣の所信演説の中から特に、以下の項目について質問しました。

  • AIと著作権
  • クリエイター育成支援基金
  • アウトオブコマース(絶版書)
  • ゲーム関連資料の保存
  • 宇宙政策

興味のある方はぜひ、参議院の公式サイトで録画をご覧ください。
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7804

(1)クリエイター・アーティスト育成支援の基金について (0:02:20 から)

文化庁が初めてゲットできた「複数年度の基金事業」である、クリエイター・アーティスト育成支援の補正予算。これを実効性あるものにするために、どのような内容を考えているのか、どのような結果を目指しているのか?(→文科大臣)

(2)AIと著作権 (0:05:02)

(※まず、文化庁の「AIと著作権の考え方(素案)」について、本日正午に素案でない「確定版」が公式サイトにアップされました。
https://bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_07/
配布資料の下部に「資料2-1、資料3について以下のとおり了承されました。」とありますが、その下の「資料2-1 AIと著作権に関する考え方について(1.5MB)」が確定版です。)

・・・その上で、私の質問は以下の通りです。

■2万5千件も集まったパブコメについて、文科大臣の所感をお聞きしたい。(→文科大臣)

■この「考え方」確定版は、著作権法の従来の考え方との整合性を考慮して、その範囲で検討されたものと思うが、今後も技術の発展などを踏まえて検討していくのか?(→文化庁)

■著作権法30条の4について、享受目的と非享受目的が併存している場合には、30-4本文の適用はないとのこと。例えば『ラブひな』のキャラの絵だけを複数枚追加学習させて、意図的に読み込ませた絵と、表現のコアな部分について共通した絵を出力する、という目的を持って学習させる場合には、「享受目的がある」という考え方になるか?(→文化庁)

■『ラブひな』のキャラの絵を学習した画像生成AIを使ったところ、『ラブひな』に出てくるキャラの絵と、表現のコアな部分が共通した絵ばかりが大量に生成できるといった事情がある場合、これは享受目的があるだろうと推認する事情になりうる、という考え方になるか?(→文化庁)

■例えば、私の作品のすべての絵を「AI学習用に整理したデータベース」にして、それを特定のWebサイト上に置き、勝手に読み込まれないようにアクセス制限(robots.txtによる収集制限や、ID・パスワードによるアクセス制限)をかけた上で、このデータベースを販売しようとしていたとする。このアクセス制限を回避して、勝手にこのデータベースの全部または創作的表現部分といえる一部分をAI学習のために読み込ませる行為は、30-4但し書きに該当するか?(→文化庁)

■依拠性について、例えば『ラブひな』のキャラの絵をi2iの生成AIに指示入力したり、『ラブひな』のキャラ名そのものを入力する場合には、依拠性が認められるという考え方になるか?(→文化庁)

■依拠性について、例えば生成AI利用者が『ラブひな』のキャラの絵の表現内容を知らなかったとしても、そもそもその絵(出力された絵と表現上の本質的な特徴が共通する絵)がAIに学習されていた場合には依拠性が推認され、これに対して利用者から反証がない限りは依拠性が認められるという考え方になるか?(→文化庁)

■文化庁は、今後は周知啓発を図っていくとされているが、具体的にいつまでに、誰に対して、どのような周知啓発を予定しているか? なるべく具体例を出して、分かりやすく伝えていくことが大事で、また事業者や提供者・利用者が委縮しないようにする必要がある。(→文科大臣)

■今回のパブコメを受けて、文化庁は「クリエイター等の生の声が反映されたものであり、このような声の存在を十分に踏まえていくことが重要だと考えています。」「本パブリックコメントでお寄せいただいた皆様の声を踏まえながら、関係当事者の間における適切なコミュニケーションの実現に向けて、関係省庁とも連携しながら取り組んでまいります」という発表をしたが、具体的にどういう取り組みを想定しているのか?(→文化庁)

■「学習元データの透明性」と「対価還元の仕組み」について、私は一昨年から取り組み、動画も2本公開した。文化庁も「コンテンツ創作の好循環の実現を考えた場合に、著作権法の枠内にとどまらない議論として、技術面や考え方の整理等を通じて、市場における対価還元を促進することについても検討が必要であると考えられる。」と記載している。国として、こういった仕組み構築を積極的に後押ししていくべきだが、文化庁の考えはどうか?(→文化庁)

■特定の声優や歌手の声を大量に学習して、その声優や歌手の声を再現できる生成AIが問題になっている。声といっても、これが著作隣接権の対象となる「実演」に該当する場合も、しない場合も考えられることも踏まえて、この問題について現状どのように考えているか。また今後どのように議論を継続していくのか。(→文化庁)

(3)新たな裁定制度に関するアウトオブコマースの扱いについて (0:22:15)

昨年に成立した著作権法改正のうち、新たな裁定制度に関して。今は市場に流通していないアウトオブコマース作品に「禁無断複製」などの定型的な表示があるからといって、直ちに新制度の対象外にしてしまって良いのかという質問を前回した。その際、具体的な判断に関する運用は、施行日までに文化庁がしっかりつめるという回答だったが、どうなったか?(→文科大臣)

(4)ゲーム関連資料のアーカイブについて (0:24:39)

ゲームの企画書や原画などの「ゲーム関連資料」の保存も重要だ。どういう意図で、試行錯誤を経て製品になったかのノウハウが詰まっており、ゲーム開発に関わる人にとって貴重な資料になりうること、また、他のコンテンツを創るうえでも参考になる可能性が大いにある。ゲーム関連資料もしっかりアーカイブしていくべきだ。政府のアーカイブ推進政策の中での位置付けと、文化庁での取り組み状況はどうか?(→文化庁)

(5)宇宙政策について (0:27:35)

SLIMは素晴らしい。H3ロケットも凄かった。先日、民間企業のロケット打ち上げが残念なことに失敗したが、こういった民間企業の更なるチャレンジについて、国が支援する仕組みはあるか?(→文科大臣) ・・・いかがでしたでしょうか。かなり専門的というかマニアックな内容でしたが、どの項目も「近年話題になっている」ものばかりです。また消費時間は29分で、割とベストな配分が出来たと思います。 ところで、こういった「国会での質問」ですが、先輩議員や理事などによる事前の質問内容チェックは特に無く、モロに議員本人(と政策秘書など事務所全体)の実力が問われてきます。この辺りの仕組みについても、いずれ漫画で解説する予定です。


 質疑の全文は以下の通りです。(国会会議録「第213回国会 参議院 文教科学委員会 第2号 令和6年3月19日」より、赤松の質疑部分を抜粋)


○委員長(高橋克法君) 

教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関する調査のうち、文教科学行政の基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。

○赤松健君

 自由民主党、全国比例、赤松健でございます。質問の機会をいただき、ありがとうございます。
まずは、クリエーター、アーティスト育成支援の基金についてお聞きいたします。

 文科大臣の所信でもありました次世代のクリエーター、アーティストの育成やその活躍、発信の場でもある文化施設での次世代型の機能強化に関する複数年度の基金事業について、これを実効性あるものにするためにどのような内容を考えているのか。あと、これまでの支援と比較して、特徴も踏まえて教えてください。あと、今回の基金事業によってどのような結果を目標としているのかもお教えください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 我が国の漫画やアニメ、音楽、現代アート、伝統芸能などのコンテンツは海外でも高く評価されており、国内市場にとどまらず、世界に発信することにより、我が国の成長力の強化にも資するものと考えております。

 これまで文化庁において、各年度において若手芸術家の表現活動を支援してまいりましたが、その中でも、特に才能があり、今後国内外で活躍が期待されるクリエーター、アーティストについては、戦略的に選抜し、公演の企画、制作から海外展開まで複数年度にわたって支援することが重要と考えております。このため、令和五年度補正予算において、次代を担うクリエーター、アーティストの育成支援のための基金を設置し、現在、公募に向けた準備を進めているところです。

 この基金の執行に当たりましては、既存の事業に比べて、グローバルに活躍する人材の育成、海外展開に重点を置いた審査を行う予定としているとともに、独立行政法人日本芸術文化振興会に新たに専門の委員会を設置して、専門的見地から複数年度にわたって事業の進捗状況の把握や助言、成果の検証を行う体制を整備することとしております。

 この基金による支援を通じて、次代を担うクリエーター、アーティストの活動をしっかりと後押しをして、我が国の文化、芸術の国際的なプレゼンスの向上、コンテンツ市場の拡大、海外との文化交流を通じた相互理解の促進につなげてまいりたいと考えております。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 次に、AIと著作権に関してお聞きいたします。

 大臣所信でもありましたAIと著作権については、文化庁が、文化審議会の著作権分科会法制度小委員会での有識者の議論を経て、昨年十一月にAIと著作権に関する考え方についてという骨子案を、続いて、あと十二月にその素案、これを公表されました。そして、今年の一月から二月にかけてパブリックコメントが実施されまして、約二万五千件という物すごい数の御意見が寄せられました。この数は、AIと著作権という問題についての関心の高さ、文化庁がこのような考え方を出すことについての反響の大きさがうかがえます。

 そして、このパブコメを経て取りまとめられたものが先ほど公開されたようです。以降、これを素案じゃなくて本考え方と省略して呼ばせていただきます。その本考え方を出すに至った経緯を教えてください。また、パブリックコメントに応じて多数の意見が寄せられた、このことについて文科大臣の所感を教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 赤松委員よく御案内のとおり、AIと著作権の関係につきましては、これまでも、クリエーターなどの権利者、AIの開発事業者、AIの利用者、それぞれの立場から懸念の声が示されていた状況でありました。

 今回の考え方は、これらの懸念の払拭に向けて、文化審議会における議論を経た上で現時点における著作権法の考え方を再整理し、お示しをしたものであります。

 また、この考え方に対するパブリックコメントでは、先ほど赤松委員から御指摘のとおり、約二万五千件という大変多くの御意見をお寄せいただきました。御意見をいただいたことに感謝するとともに、AIと著作権につきまして関心がこれだけ高いんだということを認識したところでございます。

 今後は、この考え方についての正確な理解の促進に向けまして、それぞれの関係者にとって分かりやすい形で周知啓発するよう努めてまいりたいと考えています。

○赤松健君

 本考え方では、現時点で著作権法の従来の考え方との整合性を考慮して、その範囲内で検討されているものと理解しております。
 今後も技術の発展等を踏まえて検討していくのか、教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 本考え方は、御指摘のとおり、クリエーター等の権利者の懸念を払拭するとともに、AIの利活用に係る著作権侵害のリスクを最小化できるように、現時点における著作権法の考え方を再整理したものでございます。

 文化庁におきましては、相談窓口等を通じた著作権侵害に関する具体的な事例の集積、AIやこれに関する技術の進化、諸外国における検討状況の進展等を踏まえながら、引き続きこれらの状況に応じた必要な検討を行ってまいりたいと考えてございます。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 AIと著作権の問題を考えるに当たって、まず、著作物をAIに学習させる段階と、生成AIによって生成物を生成、利用する段階のこの二つに考えて分ける必要があるというのは、この本考え方でも明記されております。

 その上で、まず学習段階においては、著作権法三十条の四がこれ問題となっております。この三十条の四は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合、つまり、非享受目的である場合に限って著作権者の許諾なく当該著作物を利用できる旨規定しています。その上で、享受目的と非享受目的が併存している場合には三十条の四の本文の適用はないということは以前から示されているところでした。

 ただ、生成AIにおいて享受目的と非享受目的が併存する場合とはどういう場合なのかはよく分かりませんでした。この点がある程度明確になったという認識ですので、具体例を挙げて確認いたします。

 例えば、私が昔描いた漫画で「ラブひな」という漫画ありますけど、その「ラブひな」という漫画のキャラクターの絵を、絵だけを複数枚追加学習をさせて意図的に読み込ませた絵と、表現のコアな、表現上の本質的な部分について共通した絵を出力するという、こういう目的を持って学習させる場合は享受目的があるという考え方になるか、教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 お尋ねのような場合には、追加学習の程度等にもよりますが、御指摘のとおり、考え方でお示ししている享受目的が併存する場合に当たり得ると考えてございます。

○赤松健君

 私の「ラブひな」に出てくるキャラクターの絵を学習した画像生成AIを使ったところ、この「ラブひな」に出てくるキャラクターの絵と、あと表現のコアな部分が共通した絵ばっかり大量に生成できると、こういった事情がある場合に、これは享受目的があるだろうと推認する事情になり得るという考え方になるか、教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 学習で用いた著作物と創作的表現が共通した生成物の生成が著しく頻発するといった事情は、この考え方においてお示しいたしておりますとおり、開発、学習段階における当該著作物の利用について享受目的の存在を推認する上での一要素になり得ると考えているところでございます。

○赤松健君

 本考え方では、三十条の四のただし書の適用に関して、まず、有料、有償販売データベース、あとロボットテキストの記述によってこのクローラーのアクセス制限の措置をすると。あと、IDとパスワードを使った普通の認証によるアクセス制限とか、そういう措置の評価についても言及されています。

 例えば、私の作品の、これまでの作品の全ての絵をあらかじめAI学習用に整理したデータベースにして、これを特定のウェブサイト上に置いて、勝手に読み込まれないように先ほどのアクセス制限など掛けた上で、そのデータベースをライセンスなり販売しようとしたとします。このアクセス制限を回避して、勝手にこのデータベースの全部又は創作的表現部分と言える一部分をAI学習のために読み込ませるという行為は三十条の四のただし書に該当し得るという考え方になるか、教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 お尋ねのような場合は、本考え方でお示しをいたしておりますとおり、著作権法第三十条の四ただし書に該当し得るものであり、したがって同条による権利制限の対象とはならない、すなわち著作権侵害があり得るということが考えられるというところでございます。

○赤松健君

 次に、依拠性について、例えば私の拙作「ラブひな」のキャラクターの絵をイメージ・トゥー・イメージ、I2I、生成AIに指示入力したり、「ラブひな」のこのキャラクター名そのものを入力したりするという場合には、これ依拠性が認められるという考え方になるかも教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 お尋ねのような場合、本考え方でお示ししているとおり、当該既存の著作物に対する依拠性が認められ得るものと考えてございます。

○赤松健君

 依拠性について、例えば、生成AIの利用者が「ラブひな」のキャラクターの絵を、表現内容をこれ知らなかったとしても、そもそもその絵がAIに学習されていた場合には依拠性が推認されて、これに対して利用者から反証がない限りは依拠性が認められるという考え方になるのかも教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 お尋ねのような場合は、本考え方でお示しを申し上げているとおり、AI利用者は既存の著作物を認識していないものの、それがAIの学習に用いられていることにより客観的に既存の著作物へのアクセスがあったと認められることから、通常、依拠性があったと推認されるものと考えているところでございます。

○赤松健君

 文化庁は、先ほどお話あったとおり、今後は周知啓発を図っていくとされておりますけども、具体的に、いつまでに誰に対してどのような周知啓発を予定しているのかも教えてください。架空の作品でもいいので、これまで確認してきたように、なるべく具体例を出して分かりやすく伝えていくことが大事だと思います。また、事業者とか提供者、利用者が萎縮しないようにする必要があると思いますが、どうでしょうか。大臣、お願いいたします。

○国務大臣(盛山正仁君)

 著作権などの侵害リスクに関するクリエーターの懸念を払拭することと併せて、この考え方が拡大解釈されることでAI開発事業者やAIサービス提供事業者が萎縮することを回避するという観点から、この考え方についてそれぞれの関係者に正確に理解していただくことが重要であると考えております。

 このため、クリエーターなどの権利者やAI開発事業者、AIサービス提供事業者、AI利用者といったそれぞれの当事者向けに、赤松先生御指摘のとおり、具体例も交えて速やかにポイントを分かりやすく発信してまいりたいと考えております。さらに、著作権侵害を防ぐためには、この考え方だけではなく、著作権制度全般に関する基本的な考え方についての理解が重要であるとも考えております。

 引き続き、セミナーや講習会などを通じて広く周知啓発に努めてまいります。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 今回のパブリックコメントを受けて、文化庁は、クリエーター等の生の声が反映されたものであり、このような声の存在を十分に踏まえていくことが重要だと考えています、あと、本パブリックコメントでお寄せいただいた皆様の声を踏まえながら、関係当事者の間における適切なコミュニケーションの実現に向けて、各省庁とも、関係省庁とも連携しながら取り組んでまいりますという発表をされています。これ、結構すごいことです。

 具体的にどういう取組を想定しているのか、御説明をお願いいたします。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 ただいま大臣から御答弁を申し上げましたとおり、今回の考え方の周知徹底にはしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。その上で、ただいま御指摘がありました今回のパブリックコメントでいただいた御意見のうち法解釈のみでは対応できない部分につきましては、民間の関係当事者間での対話を通じて適切な生成AIに関する著作物利用についての認識の共有がなされることが望まれるところでございます。

 このため、文化庁といたしましては、このような取組を促し、AIの適正な開発及び利用の環境を実現する観点から、一つには生成AI及びこれに関する技術、二つにはAIの学習データにおける著作物の望ましい利用方法、三つ目には海賊版を掲載しているウェブサイト等につきまして、関係者間で情報共有をする場の創設を検討しているところでございます。

 関係省庁や関係団体とも相談の上、速やかな実現に向けて検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

○赤松健君

 学習元データの透明性と対価還元の仕組みについて、私は画像生成AIが急速に発展したおととし辺りからこの問題に取り組みまして、様々な団体とか権利者からヒアリング重ねてまいりました。

 昨年一月と七月に、AI開発者とあとクリエーターと法律の専門家をゲストに、画像生成AIの発展や課題に関するユーチューブ動画も発表しております。その動画の中で、クリエーターからの懸念の解決策として、学習基データのこの透明性の確保する、これが一番重要であると。また、法律によるのではない方法で権利者への対価還元の仕組みが必要だと訴えてきました。

 こういった仕組みは民間が率先して構築していく方がいいんですけれども、ただし、本考え方の終わりの方で、コンテンツ創作の好循環の実現を考えた場合に、著作権法の枠内にとどまらない議論として、技術面や考え方の整理等を通じて、市場における対価還元を促進することについても検討が必要であると考えられると記載されています。

 国が検討の必要性を明確にしている以上、国としてどういった仕組み構築を積極的に後押ししていくべきなのかと、文化庁の考えをお聞かせください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 この考え方でお示ししているとおり、クリエーター等の権利者に対する対価の還元は、著作権法の枠内にとどまる議論ではなく、横断的見地から、内閣府知的財産戦略推進事務局等において議論が進められているところでございます。文化庁もこれに協力しているところでございます。また、AI学習についての対価還元に関しましては、民間の関係当事者間での対話を通じて、生成AIにおける著作物等の利用についての認識共有が図られることも重要であると考えているところでございます。

 したがいまして、文化庁といたしましては、先ほど御答弁申し上げましたAIの適正な開発及び利用の環境を実現する観点から、AIの学習における望ましい著作物等の利用方法等について、関係当事者間で情報共有を図る場の創設を検討しているところでございまして、今後、関係省庁とも連携して、この当事者間の情報共有の場の速やかな実現に向けて検討を進めてまいりたいと考えてございます。

○赤松健君

 本考え方では、今後、著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係において検討すべき点の有無やその内容に関する検討を含め、様々な技術の動向や諸外国の著作権制度との調和、ほかの知的財産法制における議論の動向なども見据えつつ議論を継続していくことが必要であるとされています。

 この点に関して、昨今、特定の声優さんとか歌手の声を大量に学習して、その声優や歌手の声を再現できる生成AI、もうネット上で非常に問題になっております。声といっても、これは著作隣接権の対象となる実演に該当する場合もしない場合も考えられるということを踏まえて、この問題について現状をどのように考えているか、また今後どのように議論を継続していくのか、お聞かせください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 ただいま御質問がございました、声優の方々などの声が生成AIにおいて模倣される懸念に対して、声についての法的な保護を求める意見があることは承知をいたしてございます。

 声優が脚本等の著作物に従って演技する場合は、著作権法上の実演に当たりまして、実演家である声優の権利が著作権法により保護されてございます。他方で、いわゆる声の質、声質につきましては、著作権法による保護の対象とはならないと考えております。著作権法による保護の対象とならない場合でございましても、声を利用する行為は、その態様によって、著作権法以外の知的財産権、例えば不正競争防止法などでございますとかいわゆるパブリシティー権の侵害となる場合もあると考えているところでございます。

 生成AIにおけます声の保護につきましては、内閣府の知的財産戦略推進事務局のAI時代の知的財産権検討会におきましても検討が行われておるところでございまして、文化庁としては、このような関係省庁における検討ともしっかりと連携してまいりたいと考えてございます。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 AIはこれくらいにして、次は、新たな裁定制度に関するアウト・オブ・コマースの扱いについてお聞きします。

 昨年に成立した著作権法改正のうち、新たな裁定制度、これ昨年の文教科学委員会で、私がこれ、新たな裁定制度におけるアウト・オブ・コマース作品の扱いについて質問いたしました。今は市場に流通していないアウト・オブ・コマース作品に、禁無断複製などの定型的な表示があるからといって、それをもって直ちに新制度の対象外にしてしまっていいのかという問題意識をお伝えしました。

 その際、具体的な判断に関する運用は施行日までに文化庁がしっかり詰めるという回答をいただきました。この点について、その後の検討状況を教えてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

 新たな裁定制度では、利用の可否や条件など著作権者の意思が確認できない著作物等について、一定の要件の下で利用を認めることとしています。

 通常、著作物、書籍等にされた複製禁止、転載禁止などの表示は、著作物の利用を禁止する著作権者による意思表示と理解されますが、いわゆるアウト・オブ・コマース作品については、過去の時点での利用の可否が示されてはいるものの、当該表示をもって一律に現在の著作権者の意思を判断すべきでないとする意見があったことなどから、文化審議会におきましては、著作権者の意思をどのように確認するかについては今後の検討課題とされたものと認識しております。

 これを踏まえまして、昨年の七月、文化審議会において改めて議論を行い、アウト・オブ・コマース作品のうち、過去に公表された時点で示されている複製禁止、転載禁止などの記載にかかわらず、新たな裁定制度の対象となり得る範囲の明確化を図りました。

 この検討結果を踏まえた上で、今後、改正法の施行日までに、新たな裁定制度における著作権者の意思の確認方法など、必要な事項を告示として定めてまいりたいと考えております。

○赤松健君

 ありがとうございます。

 次は、ゲーム関連資料のアーカイブについてです。

 ゲームの企画書とか原画などのゲーム関連資料の保存と利活用は、現状、ただビジネスにはつながりにくいということで、ゲーム会社など民間で促進するに当たって課題があると聞いております。

 しかしながら、こういったゲーム関連資料は、これまで世に出たゲームがどういう意図でどういう試行錯誤を経て製品になったのかのノウハウが詰まっているんですよね。ゲーム開発に関わる人にとって貴重な資料になり得ると。また、ほかのコンテンツを作る上でも参考になる可能性が大いにあると思っています。私としては、文化的価値の高い資産としてこのゲーム関連資料もしっかりアーカイブしていくべきだと思っています。

 昨年、アメリカのニューヨーク州ロチェスターにあるストロング遊びの博物館という、ゲーム所蔵数では世界最大規模を誇る博物館に視察に行ったんですけれども、ゲームだけじゃなくて、ゲームの企画書、設計書などがしっかり保存されていました。

 日本で開発されたゲームに関する資料がどんどん海外に流出して、価値に気付いたらもう既に遅いというようなことになりかねません。こういったゲーム関係資料のアーカイブについて、政府のアーカイブ推進政策の中での位置付け、これを教えてください。また、文化庁の取組状況を教えてください。

○政府参考人(合田哲雄君/文化庁次長)

 お答え申し上げます。

 令和五年六月に閣議決定された知的財産推進計画二〇二三におきましては、ゲームも含めたメディア芸術につきまして、我が国の優れたメディア芸術分野の人材育成及び関連資料の収集、保存、展示、活用を推進すると定められているところでございます。

 文化庁におきましては、この知的財産推進計画二〇二三などを踏まえまして、これまでも、ゲーム関連資料のアーカイブ推進を図るために、大学やゲーム保存団体等におけるアーカイブの取組への支援、ゲーム作品名や制作年、それから制作会社等の情報が閲覧できるメディア芸術データベースの整備等に取り組んできたところでございます。今年度は、それらの取組に加えて、ゲーム制作会社を対象に、ゲーム制作工程上発生する絵やプログラム等の中間生成物が置かれている状況に関するアンケート調査を実施し、実態の把握にも努めているところでございます。

 また、来年度より、予算をお認めいただければ、新たに中間成果物の収集、保存、活用に係る調査研究事業を漫画、アニメ分野より実施することとしており、ゲーム分野の着手に向けた検討も行ってまいりたいと考えているところでございます。

 引き続き、関係者、関係機関等とも連携をしながら、これらの施策にしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

○赤松健君

 最後に、宇宙政策についてお聞きします。

 大臣の所信でもお話ありましたとおり、今年一月にJAXAの月着陸実証機のSLIMが、何と目標地点から約五十五メートルのところにピンポイント着陸したと。すばらしいですね。あと、本年二月にはH3ロケットの打ち上げにも成功しました。世界での日本の宇宙技術のプレゼンスを高める、非常にすばらしい結果ですよね。

 国家戦略としては、昨年、JAXA法を改正して基金を設立して、民間事業者や研究機関をサポートする体制をこれ整えました。基金の執行に際しては、本年度内に取りまとめる宇宙技術戦略を参照していく予定となっているものと認識しています。

 このような中で、先日、民間企業によるロケット打ち上げがこれ残念なことに失敗してしまいました。ただ、これに臆せず、果敢にチャレンジしていただきたいと私は思っているんですよね。こういった民間企業のこの失敗、失敗と言っていいのか、失敗はないんですけれども、次のデータになりますからね、その後の更なるチャレンジについて、国が支援することとか仕組みがあれば教えていただきたいと思います。

○国務大臣(盛山正仁君)

 委員御指摘のとおり、近年、宇宙開発の主体が官主導から官民連携へと変わりつつある中、我が国の民間企業等による宇宙分野での技術開発や事業化の取組、これを支援していくことは重要であると考えております。

 文部科学省としては、JAXAとともに、様々な業種の民間企業の宇宙事業への参画を期待した官民協業によるJAXA宇宙イノベーションパートナーシップや、宇宙分野のスタートアップなどが有する先端技術の社会実装の促進を目的とした中小企業イノベーション創出推進事業、こういったものを通じまして我が国の民間企業等における研究開発を支援しているところです。

 また、これらの支援に加えまして、令和五年度補正予算において宇宙戦略基金を新たに設置しました。民間企業等の主体的な研究開発を強力に推進することとしております。

 今後も、関係機関と連携し、我が国の民間企業等における宇宙開発への挑戦を支えてまいりたい、ほかの国との競争に負けないように支援をしていきたいと考えております。

○赤松健君

 ありがとうございました。これで質問を終わります。