本日13時からの「外交・安全保障に関する調査会」で初めての参考人質疑に立ちました。
「参考人質疑」とは、学識経験者などを招いて専門的な意見を聞いたりすることです。(※証人喚問とは違います)

議題は、「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序  構築~」のうち、「軍縮・不拡散①(NPT・  CTBT・FMCT・INF・新START)  」について。
参考人として、内閣府原子力委員会委員長代理・元軍縮会議日本政府代表部特命全権大使 佐野利男さん、公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター所長 戸崎洋史さん、長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長・教授 鈴木達治郎さんにお越しいただき、それぞれの意見を聴いた後、各参考人に対し質疑を行いました。

私からは以下の2点を質問しました。

  • 今年5月に広島で開催予定のG7サミットにおいて、日本政府としてどのようなメッセージを発していくべきか。
  • 一昨年発効された核兵器禁止条約について、日本が今後どのように向き合っていくべきか。

興味のある方はぜひ、参議院の公式サイトで録画をご覧ください。
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7238


 質疑の全文は以下の通りです。(国会会議録「第211回国会 参議院 外交・安全保障に関する調査会 第2号 令和5年2月15日」より、赤松の質疑部分を抜粋)


○赤松健君

 自民党、全国比例の赤松健でございます。

 本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。私も二〇二〇年の著作権法改正の際にそちらの参考人の席に座ったことがございます。本日は忌憚のない意見をお聞かせください。

 まず、お三方に質問いたします。
 昨今、核をめぐる情勢が緊迫しています。その大きなきっかけはやはりロシアによるウクライナ侵攻でありまして、先ほど佐野参考人おっしゃっていましたけれども、昨年八月のNPT運用検討会議でロシアの反対により合意文書が採択されなかったと。あと、また、アメリカとロシアの二国間条約である新START、これにおいても、先ほどもお話ありましたけど、昨年、ロシアがアメリカの査察を拒否する、条約の実効性が不安視されています。で、ロシアのみならずアジアでも、中国が核武装を強化しており、さらに北朝鮮による核実験なども見過ごせません。

 このような中、今年五月に広島で開催予定のG7サミット、ここで、核兵器のない世界、これが主要議題の一つになると思われます。ここで、日本政府として、G7サミットにおいて具体的にどのようなメッセージを発していくか。先ほど鈴木先生からお話少しありましたけれども、お三方にお聞きしたいと思います。お考えがありましたら教えてください。お願いします。

○会長(猪口邦子君)

 それでは、佐野参考人からでいいですか。

○参考人(佐野利男君)

 ありがとうございました。

 どのようなメッセージを発していくかというのは大変難しいと同時に、大体内容的には分かっていると思うんですよね。G7の首脳に被爆地、資料館を訪問していただくということもあるかと思いますし、それから今まで日本が培ってきた様々な努力をG7でシェアしていただくということがあろうかと思いますね。

 と同時に、そういう一般的な話と同時に、やはり東アジアにおけるこの緊迫した状況というものをG7でシェアしていただいて、つまりウクライナの次は台湾だという話ですよね。そういう話をシェアしていただいて、現実的にどのような対応が取り得るのか。つまり、向こうはNATOがあるわけですが、太平洋にはNATOはないわけで、日米同盟、米韓同盟があるだけですね。その辺りの現実的な対応というものを日本を除くG7の首脳に十分認識してもらうというのが一番重要だと思います。

○参考人(戸崎洋史君)

 ありがとうございます。

 G7の中でこの核軍縮に対する大きな意見の相違は恐らくないのだろうというふうに思いますけれども、やはり、そのG7という場で核兵器のない世界に向かっていくんだということを再確認すると、そのまず直近の一歩として、核兵器は決して使われてはならないということをここでも改めて確認していくと、広島の場で確認していくということは非常に重要なのだろうというふうに思います。

 それからもう一つは、岸田総理がNPT運用検討会議でも御提案されましたヒロシマ・アクション・プラン、私、このヒロシマ・アクション・プランというのは非常にすばらしいものだったというふうに思いますけれども、これをそのG7の場で確認するといいますか、一緒に推進していくということを確認する、可能であれば、そのための具体的な措置ということで何かここに追加していくということ、そういったことがそのG7の場で合意できればとてもすばらしいのではないかなというふうに思います。

 もちろん、その地域の問題、佐野大使もお話しされましたけれども、それぞれヨーロッパとアジアで非常に厳しい核の問題に直面しているわけですから、それをクロスリージョナルで確認し、そのための取組を一緒になって行っていくということも確認していただければなというふうに思っております。

○参考人(鈴木達治郎君)

 ありがとうございます。

 先ほども少しお話しさせていただきましたが、やはり核兵器は絶対使ってはならないという規範を是非広島からアピールしていただきたいのが第一。

 それから、もう既にお二人からお話ありましたが、東アジアのこの緊張関係に対して拡大抑止の話と同時に、やはり対話外交をどうやって進めていくか、緊張緩和のための政策をどう考えていくかということについて是非お話を進めていただきたいと思います。

 それから三番目は、先ほどのパワーポイントの私の資料の最後の方にあります、広島県、長崎県から出されているG7サミットの提言というのがありますが、その中で、先ほど申しました核軍縮と持続可能性に関するフレンズ会合や国連の軍縮会合というのがありますが、これ、ひとつ是非検討していただきたい。核軍縮の問題と持続可能性は、実は深い関係にあるということですね。

 それから、その中でもう一つ私が特に注目しているのは科学的助言の創設というのがあるんですが、実はTPNWには科学的助言グループをつくるということが今決まったんですけれども、この核軍縮の分野で実は科学的助言する機関が国際的にはないんですね、気候変動にはIPCCという重要な機関があるんですけど。これも是非、もし、こういうG7のようなサミットで議論していただければと思います。

 以上でございます。

○赤松健君

 ありがとうございました。

 これもお三方にお聞きしたいんですけど、おととし核兵器禁止条約が発効されまして、日本は参加していませんが、日本がこれに今後どのように向き合っていくべきか、御見解をお持ちでしたら教えてください。

○参考人(佐野利男君)

 ありがとうございました。

 核兵器禁止条約について先ほど御説明する時間なかったんですが、この一番大きな問題点というのは、核兵器禁止条約に入った途端、日本が日米同盟と相入れない状況に陥るということですね。日米安保と両立しません。なぜならば、核兵器禁止条約は、核兵器の禁止のみならず核抑止の概念そのものを否定しているわけです。したがって、今非常に厳しい北東アジアの現実の中で、日本がこれに入ってしまうことは丸腰になるということを意味します。したがって、核兵器禁止条約に日本が入るという政策オプションはないと考えます。

 この条約の会議があるわけですね、去年の六月にあって、来年もあるんですかね。これに出る出ないという話がありますが、私は出る効用はないと思っています。なぜならば、核兵器禁止条約、今六十八か国ですか、締結している全ての国はNPTのメンバーであって、NPTの場で十二分に議論できるわけですね。これ四週間、向こうは禁止条約の三日間でしたかね。したがって、議論の場はNPTで十二分に確保されていると。

 それから、橋渡しということをよく言いますけれども、日本は橋渡しやってきたんですね、今まで、核兵器国と非核兵器国の間の。これは会長十分御存じのように、核廃絶決議というのを一九九四年からもうずっと続けて、この内容はまさに中道、中道といいますかね、真ん中を、核兵器国と非核兵器国のちょうど真ん中を狙った決議です、中道の決議です。そういう形で実質的に橋渡しの役割というのをやってきたんですが、この核兵器禁止条約については日本はもはや中間派ではありません。日本は核兵器国とほぼ同じ立場に立っていて、核兵器禁止条約派とはたもとを分かってきた経緯があります、考え方もそうです。したがって、核兵器禁止条約派と核兵器国及び西側同盟との橋渡しをするということは、日本にとっては極めて難しいことだというふうに考えます。

○参考人(戸崎洋史君)

 ありがとうございます。

 私も、核兵器禁止条約に対する日本の対応、考え方というのは、ほぼ佐野大使と同じ意見でありますけれども、一点だけ付け加えるとしますと、核兵器の廃絶を目指していく中では、安全保障も規範も両方重要なんだというふうに思います。他方、規範だけを先行していったとしても、そこに安全保障が伴わなければ世界は混乱に陥ってしまう、より悪い世界になってしまうかもしれないというような危惧もあるという中で、それを両方、両輪として進めていかなければならないということは一点付け加えたいなと思います。

 そして、オブザーバー参加ですけれども、私も、今の締約国会議に日本が参加すべきかというと、そうではないのではないかなというふうに思っています。この会議は締約国のためのまず会議であるということ、それにオブザーバーとして参加するというのは、基本的には中立であるべき、中立的なものであるべきなのに、そこに参加する国が良い国、参加しない国は悪い国というような色づけがなされるというのは少しおかしいかなというふうに思っていますし、それから、真剣な対話という意味であれば、この締約国会議などではなくて、別の場をつくって真剣に議論することというものもできる。

 私も、賛成派、反対派の真剣な対話というのは大事だと思っていますけれども、それが締約国の会議の場であるべきかというと、そうでもないのではないかなというふうに思います。お互いが同じ立場で議論すると、別の場でというのが大事だと思っています。

○会長(猪口邦子君)

 時間来ておりますが、鈴木参考人、お願いします。

○参考人(鈴木達治郎君)

 ありがとうございます。

 TPNWについてのお二人の参考人の御意見、ちょっと私は違います。やはり、TPNWは日本が柱としている核兵器廃絶の究極の目標であり、岸田首相御自身も出口であるというふうに、重要な条約であるとおっしゃっていましたから、私は、重要な条約であるというふうに感じておられるのであれば、少なくともその趣旨に賛同を示し、協力をすると。もちろん、今お二人がお話しされたように、今すぐ署名、条約は難しいかもしれませんが、そのために努力をするという意思表示をすることが世界の核軍縮に向けてのリーダーシップを取るということだと私は考えていますので。

 実際に、核の傘の国でも、ドイツ、オーストラリアを始めオブザーバーが参加されて、現場に行かれると分かりますが、いかにそれが緊張緩和に役立つかということですね。そのTPNWの今回の第一回締約国会議の場所でNPTとは大きく違ったのは、やはり市民社会の方々との対話の場が全然違うんですね。本会議の中で既に市民社会の方々が次々しゃべられるという、被爆者の方もしゃべられるということですね。

 そういう意味で、そこに日本も含めた核の傘の国がちゃんと意見を述べると、なぜ我々は今参加できないのかということ。それは、やはり対話の場をつくるということは大事な意思表示になると思いますので、先ほど書かせていただきましたように、現実にさらに被爆者支援、被害者支援ですね、TPNWが今やろうとしている、これは日本のノウハウが非常に役に立ちますので、条約に参加していなくても協力ができる分野があると思いますので、そういうところは是非協力していったらいいんじゃないかと思います。

○赤松健君

 これで終わります。