今回の南フランス視察では、主に3つのジャンルを調査しました。

(1)日本も参加する核融合実験施設「ITER(イーター)」
(2)南仏の美術館、図書館、書店
(3)カンヌ映画祭の会場とシステム

海外視察と称してはいますが、議員は私一人で、自費で来ている上に、自分の興味のある(政策に関係ある)施設以外には行かないマニアックな行程のため、「マルセイユの雰囲気を味わいたい」などの方はご期待に沿えませんのでスミマセン。
日程の都合上、都知事選は期日前投票を済ませてきました。また56歳の誕生日(7/5)はこちらで迎えることになりました。


0日目:エクサンプロヴァンス美術センター 「コーモン館」

さて、日本の羽田空港を7月1日の深夜23時に出発し、ドイツのミュンヘン空港で乗り継ぎして、マルセイユ空港には現地時間7月2日の13時頃に到着しました。ミュンヘンで4時間ほど待ったので、到着まで計20時間くらいですね。
視察の初日は一応明日からですが、夕方からエクス=アン=プロヴァンスの美術センター・コーモン館の「ボナールと日本」展へ。

ナビ派の代表画家であるピエール・ボナール(1867~1947)は、日本の「浮世絵」にも魅了されており、”ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)”とまで呼ばれていた模様。この「ボナールと日本」展は、そんなボナールの作品と日本の浮世絵を比較しながら楽しめるという、超素晴らしい企画展となっております。

スケッチなども含めて、確かに「浮世絵から(構図・テーマ・技術などの)インスピレーション」を受けている様子が伺えますね。特に遠景と近景の捉え方や、衣服の柄まで含めた色彩についても。単にアイデア的なものだけでなく、日本の版画の技術なども研究した模様です。

赤松は、「海外で日本文化がどう受け入れられているか」に(将来の市場調査の側面からも)とても注目しています。その意味でも、こういった「現地の画家と日本文化」をテーマにした企画展は理想的。今回は時間が少なかったので、企画展のカタログで研究したいと思います。フランス語なので自信ないですが・・・

明日は、今回の目玉である「ITER」の視察です!

初日(1):グラネ美術館

いよいよ南フランス視察の初日です。まずエクス=アン=プロヴァンスに来たからにはココ! 近代絵画の父、ポール・セザンヌ(1839~1906)が生まれたこの町の代表的な美術館「グラネ美術館」です。

名称の由来であるフランソワ=マリウス・グラネもこの町出身の画家で、グラネのコレクションの他にも様々なコレクションが寄贈・委託され、非常に本格的な美術館となっています。

一階の展示もかなり見所十分なのですが、注目はやはり二階。画家ごとに区切られたコーナーの一角、セザンヌ展示室! 実はセザンヌ自身もこの美術館に通って、グラネのコレクションに多大な影響を受けたとのこと。素晴らしい好循環です。

「著名コレクターからの寄贈」が美術館設立の切っ掛けになっている事例が欧米では非常に多く、そこは国民性や文化・宗教の違い、そして寄附(や相続)の税制の違いも影響しているであろうことを考えると、じっくり研究する必要がありそう。
アート市場の活性化は、赤松の重要政策の一つなので、しっかりやります。

初日(2):核融合実験施設「ITER」

午後からは、今回の視察の目玉である核融合実験施設「ITER(イーター)」へ!

「核融合って何?」という方は、以下のマンガを参照のこと。

要するに、水素のような軽い原子核同士がくっついて、より重い原子核に変わるのが核融合反応で、その際に非常に大きなエネルギーが発生します。それを発電など平和利用に使おうというわけです。核融合は、核分裂と違って連鎖反応が無いので、深刻な事故が起こりにくく、また資源も地球上どこでも豊富にあるため、夢のエネルギーと言われています。

今回の視察では、そんなITER計画の

  • 理念の素晴らしさ
  • それゆえの問題点

についても解説します。

まずは、ITER首席戦略官である大前敬祥さん(@takaomae)の案内で、ITER(というか国際的な核融合実験の枠組み)の歴史について学びました。 ここは非常に重要な部分で、現在ITER計画は「日本・EU・米国・インド・中国・韓国・ロシア」の7極によって進められているのですが、もともとは1985年にジュネーヴで行われた「レーガン大統領とゴルバチョフ書記長による、核融合エネルギー実用化のための国際協力」の合意から始まっています。つまり、ここで「昔は各国が秘密で核融合を研究してきたけど、これからは国際的に協力してやっていこう!技術も交換しよう!」となったわけです。

そんな核融合実験の巨大プロジェクトであるITERに参加し続けることは、国家としても重要なのです。だから戦争(例えばウクライナ侵攻)があっても、ロシアはちゃんと担当パーツ(PFコイル1)を納入するし、長期的な目線で「ITER計画からの脱落」は避けてきます。また、中国や韓国など「ITER計画に参加し、核融合技術を習得したい」という国も現れ、ここでは「核融合エネルギーの平和利用」という理念で各国が一致団結しているのです。(※それによって発生した問題点については後述)

さて、核融合の歴史の勉強の次は、いよいよITER施設の現場視察です!日本からは50名ほどの職員が派遣され、得意分野の施設やパーツを担当しています。

■視察1:熱除去施設(COOLING BASIN & COOKING TOWER)
日本の国会議員としては初めて熱除去施設の屋上まで登り、巨大な8つの冷却ファンの大きさを体感することができました!マスクをしていますが、別に危険はありません。ファンの回転はそこまで速くはなく、1分間に300回転程度。冷却水は元は川からのものです。

■視察2:PFコイル、TFコイルの倉庫
PFコイル、TFコイルの実物を保管しています。これがとにかく巨大で、こんなパーツを持ち上げて組み立てるかと思うと気が遠くなります。しかしパーツそのものはプラモみたいで興奮しますね。
PFコイル1は、2022年のウクライナ侵攻後にロシアから届いていて、そこからEUに入ってきて、2023年頭にITERの国際機関に持ち込まれているので、極めて微妙な政治的バランスが加わっています。

■視察3:クライオブリッジ
クライオプラントからトカマク側へ、マイナス269℃液体ヘリウムを送ったり戻したりするのですが、それを繋いでいる部分です。ブリッジの中を走る配管のことをクライオラインと呼び、配管の所掌はインドです。見所は、耐震のトカマク側との接合部分で、微妙な隙間が空いています。

■視察4:冷凍プラント(クライオプラント)
圧縮機室と冷凍機室があり、広さはサッカー競技場の面積くらい。ヘリウム冷凍機が3系列あって、それぞれ1個だけでも世界最大。「Air Liquide」というのはフランスの会社名ですが、日本のメーカーも活躍しており、現場でも頼りにされています。

■視察5:地下のトカマクビルの下
トカマクピットのあるトカマク建屋は「免震パッド」の上に乗っており、国会議員では初めて、その下にも入ってきました。建屋の重さに加えて、トカマクマシン全体は23,000トンもあるので、それだけの重さを支えることになります。もし核融合実験が始まれば(中性子が出るので)もうここには入れません。これが見納めです。

■視察6:電源
ジャイロトロン(電子レンジみたいなもの)のための電源です。QSTのロゴがありますね。2つで1セット、全部で8個ありますが、まだ稼働していません。

■視察7:組立棟
組立棟では、2つの台で同時に2つ組み立てることができます。サーマルシールドを真空容器(400t)の上にはめて、その上からD型のTFコイル1、2をくっつけます。それで1セクターが完成。この作業を誤差2ミリでやるために半年かかるということでした。その作業をする直前に、真空容器の溶接部が変形していたので直す作業をやっている場面です。1セクターの重さは、だいたい1,200tくらいで、それを750tを釣り上げられるクレーン2つを使って持ち上げて、免震パッド上のトカマクピットに運びます。

■視察8:トカマク建屋(トカマクピット)
さあ、これがITERの心臓部、トカマク型装置の本体です!那珂研究所のJT-60SAより縦横が2倍の大きさで、あまりの巨大さにビックリ!
この中でいずれは超高温プラズマが発生するのかと思うと恐ろしいですが、今はまだパーツの組み立て中ですので安全です。右側にニュートラルビーム(ガンダムのビームライフルみたいな感じ)が入ってくる穴が3つあり、ジャイロトロン(電子レンジみたいな感じ)は左側にあります。それらで加熱します。

施設の視察後は、ITER首席戦略官である大前敬祥さんと質疑応答。 「日本はITERに貢献しているものの、自国の産業化のために活用できていないという指摘もあるが、他のITER参加国はITERをどのように活用しているのか」と大前さんに聞いたところ、以下の回答でした。

A:EUはここでの建設が雇用に直結している。組立をするためはヨーロッパ企業が受注する。ヨーロッパの地に染み込んでいく核融合関係予算は大きい。大きな産業形成できる根拠としてイーターヨーロッパの予算だけでなく、ITER機構が使うお金もヨーロッパに溶け込んでいく。中国は、チャイニーズITERを作るための活用進めている。お金と人材もいる。ITERのネクストステップではなく、ITERそのものを作ろうとしている。ヨーロッパ企業以外に現地の組立を受注しているのが中国。赤字でも受注する。国営企業だから可能。彼らはITERを通じて徹底的にITERから学んでいる。

■まとめ
実は昨日も、ITER計画の遅れについてニュース報道がありました。
例えば超電導コイル1つとっても、全てのコイルを一つの国(例えば日本)が作れば、どれも品質が揃って都合が良いはずなのですが、「それでは各国の技術共有ができない」ということで、別々の国で作って、それぞれ持ち寄っているのです。これは国際協力的には良いのですが、「各パーツの品質や納期が安定しない」という欠点があり、ITER計画全般の遅れにつながっているようです。
やはり「ITERの理念の素晴らしさ」は認めつつも、国内での核融合実験(JT-60SAの後継や国内ベンチャー企業も含めて)を積極的に進めて、ITERとの両輪で考えていく必要があるでしょう。日本に戻り次第、議連やPTでの調査を進めます。

・・・それにしても、ITER施設の巨大感と精度には超燃えました!核融合施設は精密機械であり、巨大さと精密さを両立させなくてはいけない部分が、難しさでありロマンです。まさにガンダムの世界(核融合だけに)。また来たいです!

初日(3):シャトー・ラ・コスト

初日の夕方からは、ITER大前さんのご紹介で、「ブドウ畑」+「現代アート」+「建築」が融合したワイナリー「シャトー・ラ・コスト」を視察。

由緒あるブドウ畑に、六本木ヒルズの蜘蛛ブロンズ像でお馴染みルイーズ・ブルジョワ作品や、安藤忠雄が設計したアートセンターなどが点在しており、非常に不思議な空間となっています。

この「シャトー・ラ・コスト」は現地でも人気スポットのようですが、単に「○○畑にアートを置く」だけでは成立しないのは明らか。500エーカーの広大な敷地全体を使った大展覧会があったり、映画の野外上映など各種イベントも催されているようで、かなり総合的なプロデュース能力がないと、ここまでの空間は実現できないでしょう。

こういった「アート+〇〇」の形は近年流行っているようで、観光庁の今年の「特別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業」でも、現代アートによる高付加価値化を目指すアイデアがいくつか採択されました。実は「アート市場の活性化」は今年の「骨太方針2024」にも書かれておりますので、今後も研究を重ねて、日本なりのやり方で実現を考えていきたいと思っています。

2日目(1):Musée des Explorations du monde

南仏2日目のメインは「カンヌ国際映画祭」の会場の視察です。・・・と、その前にまず、カンヌ全体を一望できる場所へ。それが「カストル博物館」。現在は「Musée des Explorations du monde(世界探検博物館?)」と呼ばれています。

何と12世紀に作られた中世のお城の中にあり、貴族や実業家の探検家たちが世界中から集めてきた古美術品や狩猟道具、楽器から絵画まで手広く展示されています。 コレクションの大部分を寄付した、リクラマ男爵の肖像画がこちら。

目玉の展示作品は、カラヴァッジオの弟子のうち唯一の女性アーティストが描いた作品。旧約聖書のユディトのエピソードから、相手を酔わせて首を切った場面。この施設では最古の建物である暗い教会内に展示されており、最高の雰囲気を醸し出しています。

これらの収蔵品も十分興味深いのですが、とにかく建物全体の外壁と荘厳さが圧巻。極めつけは中心部にそびえ立つ「カストル塔」で、当時の階段もギリギリ残っており、頂上からはカンヌの街を360°眺めることができます。そしてこの塔から「カンヌ国際映画祭」メイン会場の全体像を観察し、いよいよ現場へ向かいます。

2日目(2):カンヌ映画祭会場

あのレッドカーペットで知られる「カンヌ国際映画祭」の会場を視察してきました!
赤松は実は映研出身で、「東京国際映画祭(毎年10月)をアジアNo.1の映画祭にできないか」という密かな野望を持っています。そのためには、まず世界No.1の会場を調べる必要があるということで、今回のカンヌ視察が実現したものです。もちろん、事前に「東京国際映画祭」の主催側からレクチャーも受けましたので、予習は十分です。

映画祭というのは、単に映画を上映するイベントではなくて、公開予定映画のみならず企画や脚本段階からの売買マーケットであり、もちろんプロモーションの場でもあり、情報交換や人材発掘も行われ、著名俳優やマスコミも世界から集まって、まさに映画祭こそが映画コンテンツ産業をそのものをリードしていくと言っても過言ではありません。

カンヌ映画祭会場の視察ポイントは、

  • 会場の規模感(=東京で似たような施設はありそうか)
  • 開催期間以外はどう使っているか
  • 予算や公的補助金など金銭面について

まずアーティスト用のエントランスから入場。来場したアーティスト達が、一言メッセージ石版を残していますね。

メイン会場は40年前にできたもので、フェスティバル中にはもちろん映画も上映されますが、開会式と閉会式もここで行われ、2011年にはG20カンヌ・サミットの会場にもなりました。現在は、ドルビー・アトモス化の工事をしています。開催期間以外は、積極的に工事をしているのです。この他に、オーケストラが入る1000人収容ホールがありました。

こちらが、有名なレッドカーペットが敷かれる階段です(※今は敷かれていません)。ここを世界の著名セレブが歩き、マスコミも押し寄せるわけです。思ったよりは大きくないですね。ただし屋外であるため広さはあり、雨に備えて透明な屋根が設置されるそうです。

映画祭の期間外では夏フェスやコンサートなども開催されており、今は4500人くらい若者が集まり、エレクトロミュージックの祭典などを行なっているとのこと。

カンヌ市長が、日本の「ゆるキャラ」にインスピレーション受けて作った、カンヌのオフィシャルマスコット「LERO」は、島の名前に基づいています。
とにかく、今回で会場の規模感だけはバッチリ体感できました。ただしそれ以外にも、とにかくカンヌは「街全体の魅力」がハンパなくて、周囲の建物の色彩や存在感、美しい海と人で溢れるビーチ、その歴史と史跡、さらに南仏にしては治安も良く、そんな街が全力で開催する映画祭に追いつき追い越そうというのは、もう国(というか東京都)を挙げた予算と努力が必要でしょう。

世界3大国際映画祭は「カンヌ国際映画祭(毎年5月)」 「ヴェネツィア国際映画祭(毎年8月)」「ベルリン国際映画祭(毎年2月)」ですが、開催する月で有利不利もありますので、まずは「アジアNo.1」を目指す所から行きましょう・・・。
帰国後に東京国際映画祭の方々と打ち合わせをしたいですが、勝算があるとすれば、もちろん「アニメ」でしょう。日本のアニメはカンヌでもよく知られており、私も「クリエイター議員」としての待遇を受けました。視察コースも、割とクリエイター向けだったと言えます。 そして何と、先ほどのメッセージ石版に、赤松も描かせて頂きました。名誉なことです。

2日目(3):エデン映画館

カンヌの興奮冷めやらぬまま、次は「現存する世界最古の映画館」と言われる「エデン映画館」の視察です。

もともとは、あの「リュミエール兄弟」がラ・シオタにある自分たちのセカンドハウスの部屋で映画を上映していたのを、偶然居合わせたエデン・シアターの支配人が「ぜひウチで上映しないか!?」と言って上映が実現したのがエデン映画館の始まりとのこと。リュミエール兄弟が「映画館」のコンセプトを開発したとも言えますね。(みんなで一緒にみるという発想を取り入れた)
当時のエデン・シアターは、映画上映以外にも、演劇、ボクシングの試合や政治家の演説にも使われていました。シアターの場所を所有しているのは市で、映画館を運営しているのは非営利団体(アソシエーション)となります。運営資金については、CNCから助成金が出ているとのこと。

とにかく世界最古のスクリーンを見られて感動。当然スクリーン自体は現代の品なのですが、柱などは当時のものだそうです。当時の映写機材も(もう動きませんが)残っており、35mmや16mmの機材を見て楽しめます。私は大学時代、映研で8mmフィルム世代の末期に活動しており、シングル8の最高機種ZC-1000も自前で持っていましたから、もう映画機材に目がないのですよ。実際に手回し式の映画装置をグルグル回すことができてもう感動の一言です。

ちなみに今は何と「七夕祭り」を開催していて、日本のアニメも上映されています。やはりここでも、日本と言えばアニメです。ドラゴンボールZとか名探偵コナンとか。ただしもうフィルムではなく、デジタル上映でした。

ネトフリ時代になっても売上げはあまり変わっていないそうで、今後も劇場での上映を続けていってほしいと心の底から思いました。頑張れエデン映画館!

2日目(4):マルセイユ総領事館

視察2日目の最後は、「マルセイユ総領事館」の北川総領事の公邸での会食です。

ちなみに在フランス日本国「大使館」はパリにあり、他に「総領事館」がストラスブールとマルセイユにあります。大使館は「外交活動をする権限」がありますが、領事館には無いという違いがあります。また「公邸」は大使館や総領事館の代表者が住む施設であって、大使館などとは別の建物です。

こういった在外公館や公邸での会食では、「現地で日本文化がどういった感じで受け入れられているか」、「現地で具体的にどんな問題が起こっているか」、「日本企業や留学生の数や様子」など、様々な情報を直接聞くことができるので、非常に貴重です。

マルセイユ総領事の北川さんによると、やはり最近の留学生が日本に興味を持つ最大のきっかけは、アニメや漫画だろうとのこと。実は「ジャパン・エキスポ」のマルセイユ版も存在するので、今後もポップカルチャーを通じてマルセイユでの日本の存在感を高めていけないかと思いました。

3日目(1):エクス=アン=プロヴァンス政治学院

早くも南仏視察の最終日です。本日は、朝9時から大学「エクス=アン=プロヴァンス政治学院」を視察。

実は昨年、NY州ロチェスター大学を視察したところ、「日本からの留学生がほぼゼロだった件(※バブルの頃は多数いた)」にショックを受け、最近の留学生の実態調査を進めています。ただし「エクス=アン=プロヴァンス政治学院」は、日本の早大や中大、明治学院大などと交換留学を行っており、日本からの留学生がゼロということはありません。また、私が進める「デジタルアーカイブ」や、「生成AI」について、教育現場での考え方や取り入れ方などもヒアリングしてきました。
校舎は教会を改造した部分もあって、非常に荘厳なイメージでしたが、内部は洗練されデジタル化が進んでいました。

Q:ロチェスター大学では日本人留学生が殆どいなかったが、どう考えますか。
A:うちはコンパクトな大学ということもあり、日本人は5~10人毎年レギュラーに来るので、減ったという印象はない。大学の住居を割り当てるのに丁度良い人数だ。260ユーロで、個室でそれぞれの部屋に浴室がついていて、共同で使えるキッチンも完備されている。学生が個人でエクサプロヴァンスにワンルームを借りようとすると、600~800ユーロはかかる。日本とは、さらに3つの大学とパートナーシップする予定。

Q:現在の日本人学生の数(留学かどうかは問わない)と全学生に対する割合をお教えください。
A:一年プログラムで今年は5人。9月には4人来る予定。外国人としてのフランス学習という形で単位を取りに来ている。3つのレベルに分かれている。英語の授業もある。語学留学が多いがそれだけではない。国際関係や法学を勉強する学生が来る。うちは地中海沿岸地域では、そういうことをしている唯一の学校。

Q:日本以外の、アジアからの留学生の数をお教えください。
A:3つの韓国の大学と協定している。毎年1~2人くらい。

Q:年間どの程度、日本の大学へ留学しているかお教えください。
A:フランス人学生は、一年間は外国で履修するのが義務。フランスでもそういう機関は少ないがうちはそう。提携大学だと一年プログラムがある。あとは半期の研修プログラムもある。

Q:日本に留学する学生は、ここで日本語勉強していた学生が多いのですか?
A:1学年で日本関係やっているのが8~10人。5学年で合わせて30人くらい。3年目でどこか外国に一年留学する。日本語を学ぶほとんどの学生は、アニメの影響が強い。日本の文化に興味をもって日本語を学ぶ学生が多い。日本に留学して日本で結婚して帰ってこなかった学生もいる。

Q:大学で資料をデジタル化しているか、デジタルアーカイブについての試みをお教えください。
A:アーカイブについては、データ保護規則(RGPD)に基づき、個人の権利を侵害しないようにしながら収集・保存しないといけない。主に学生の学歴に関して、公的なアーカイブについての法律があって、火事などで無くなった場合にも、学位を出したという記録は保存しないといけない義務がある。我が校は1956年に設立されたが、当時のものは紙で保存されている。公的アーカイブ関係の法律では、昔の紙のディプロマもいまはデジタルアーカイブしないといけないことになっている。

Q:生成AIについて、学内でどう扱っているかお教えください。
A:エクスマルセイユ大学ではAIを禁止している。我がシアンスポでは考慮中。使うのを許可するとしても色々規定しなければいけないと思っている。昨年からワークグループ作って検討している。教員だけでなく学生も勉強会をしている。

3日目(2):サン・ミトル公園(能舞台)

次に、日本庭園と能舞台(EUで唯一)で知られる「サン・ミトル公園」へ。エクス市は熊本市と交流都市協定を結んでおり、何と公園内には本物の能舞台が移設されています。

この能舞台は、1992年に熊本市在住の能楽師・狩野丹秀氏が日本にあった能舞台をエクス市に寄贈したもので、狩野氏などによる公演が何度も行われたそうです。こうした「文化を通じた二国間友好」は、私も非常に力を入れておりまして、今回も「マンガ」を通じた日本文化の紹介に邁進してきました。こういう時、クリエイター出身だと便利です。

3日目(3)日本マンガ専門店「TSUNDOKU(積ん読)」

昼過ぎからマルセイユに移動し、日本マンガの専門店「TSUNDOKU(積ん読)」を視察。

仏バンドデシネ作家がデザインしたという店内は美しく、新刊のみならず、テーマ(例えばオリンピック)に応じた古い作品も展示されています。赤松健作品『UQ HOLDER!』もありました。

さらに地下にある展示室が見物で、日本の昭和的イメージが味わえる観光スポットとなっています。昔懐かしいアーケードゲームは無料。昭和生まれのオタクなら感涙モノです。こんなスペースがマルセイユにあるなんて・・・!

怪しげな駄菓子店や、「マンガ好きなら元ネタがすぐ分かる看板」が楽しいです。この4看板、元ネタ分かりますか?

3日目(4):ペンヌ・ミラボー市立図書館「Ideetheque」

さて、南仏最後の視察先は、ペンヌ・ミラボー市立の図書館「Ideetheque(イデテーク)」です。レ・ペンヌ・ミラボー市の市長が、直々に説明して下さいました。

従来の図書館だけでなく、演劇ホール・ダンススタジオ・料理実演室・ゲームコーナーなど様々な活動が可能な施設となっていまして、マンガコーナーも充実しています。拙作『ラブひな』もありました!

Q:設立時期と経緯は?
A:2022年9月に落成式を行った。それ以前からメディアテックはあったが、コンセプトを進化させて、bibliothèque(図書館)にとどまらずゲームやダンスなど他の活動もできる施設として、Idéethèqueを作ろうということになった。市の図書館は、このIdéethèqueのみで、遠くからでも交通費無料でアクセスできるようにしている。市は約22000人の人口で、約7000人が会員になっている。地中海サステナブル建築の賞をとった。環境にやさしい建築として。

Q:運営体制は?
A:運営は市が行なっている。リージョン、やメトロポールなど複数のシステムに属しているが、県の助成金が一番大きい。ボランティアはおらず、全て市の職員が運営に携わっている。ダンス教室なども市が直接やっているが、ダンスの先生も含めて全部の職員が市の職員だ。

Q:デジタル化について教えて下さい。
A:デジタルについては国立図書館がすべて行っていて、データを共有している。コンピューターを持っていなくても図書館に来ればデータを閲覧できる。

Q:地域との関わりは?
A:隣に学校がある。学校の建物と図書館の建物は、同じ建築家が建築した。学校終わって直接子供来られる。学校にも図書館はあるが、教室で使う本を先生がこっちに探しに来ることもある。アーティストを招聘したときに、学校でもワークショップをするようにしている。これは子供達に文化触れさせられるようにするためだ。

赤松は、毎年フランス各地の図書館を視察しており、特に一昨年はフランス国立図書館(BnF)でゲーム保存の詳しい視察を行っています。

また、昨年はBnFの「リシュリュー館」を視察。フランスの歴史ある図書館は(本以外にも)美術品を多く所蔵していて、館内で展示していることもあります。

図書館や美術館、博物館の整備とデジタルアーカイブ化は、赤松の重要政策の一つですので、今後も調査を続けます。

3日目(5):まとめ

さて、これにて帰国です!昨年の視察の半分の日程でしたが、かなり充実した視察となりました。特に「核融合施設(ITER)」と「カンヌ国際映画祭会場」という目的のハッキリした視察で、どちらも「見たいものを十分に見ることができた」ことに感謝しています。
現地でヒアリングを受けて下さった方々、ありがとうございました! また、現地で56歳の誕生日を迎えまして、マルセイユ総領事公邸でサプライズの誕生日ケーキを頂きました。感謝です!