2022.5.9

【地域密着型マンガアーカイビング先進事例】熊本県合志市の合志マンガミュージアムに伺いました

2022年4月28日、熊本県合志市の合志マンガミュージアムを訪問しました。

前回、熊本に来たのは6年前のチャリティーサイン会の時でした。当時はまだ熊本地震の傷跡が多く残って入り、私は小学校1年から4年まで、熊本市内の健軍の公務員団地に住んでいたものでショックを受けました。

今回は熊本市内から合志市に足をのばして、合志マンガミュージアムを訪問しました。

合志マンガミュージアムとは

熊本駅から北へ車で約30分、合志マンガミュージアムは2017年にオープンした熊本県合志市に位置する「妖怪」「忍者」「漫画」(妖・忍・漫)をコンセプトにした地域密着型のマンガミュージアムです。

今回合志マンガミュージアムを案内していただいた南木さん
合志マンガミュージアムに入るとすぐに「妖怪」と「忍者」のマンガが棚一面に広がる

熊本市内でマンガ専門の古書店を営んでいた橋本博現館長の「熊本県内にマンガミュージアムを作ろう」という意志のもと発足した「熊本マンガミュージアムプロジェクト(クママン)」がこの施設の設立の基礎になったそうです。そこに参加していた合志市職員の縁や、荒木義行合志市長の公約としてアニメ・マンガを活かしたまちづくりを進めていたこともあり、合志市でのマンガミュージアム設立に至ったのだとか。

手塚治虫記念館(兵庫県宝塚市)や石ノ森萬画館(宮城県石巻市)のような漫画家個人に焦点を当てた施設ではなく、京都漫画ミュージアムや横手増田まんが美術館のような大規模収蔵施設でもない。「地域密着」に主眼を置く第3のミュージアムとして、小規模でありながらも2万冊以上の幅広いマンガを、いつでも手に取って読むことができるという特徴を備えています。

合志マンガミュージアム最大の特徴

地域密着型で最小限のスタッフと費用で運営されている施設としても全国の自治体から視察も入るとのことですが、最大の特徴はマンガの陳列方法。合志マンガミュージアムでは1960年代から10年おきに年代順でマンガが陳列されています。こうした展示方法は非常に画期的で、年代を追ってどういうマンガが当時読まれていたかを一目で見ることができます。

1960年代の棚。この中になんと初版本も。これはスゴイ。。。

私が生まれる前に生み出された名作や、現在は貴重書となっており東京でもなかなかお目にかかれないビンテージマンガが並んでいることはさることながら、さらにそれを実際に手に取って見られることには非常に驚きました。

自分の生まれた年に、およそ+10年くらいで「懐かしい」と思える作品に出会えるので、親子三世代で楽しむことができます。

壁一面に各年代を代表するマンガが陳列されている
暖色のライトは本の傷みをやわらげ、かつ温かみのある空間を演出する
各々好きな場所を見つけてマンガが読めるが、今は感染症対策のため指定席制
橋本博館長のコレクションの展示は定期的に入れ替えがあるそう
貴重書ばかりで驚きの連続
橋本館長のコレクション展示の一つ、藤子不二雄先生の『バラとゆびわ』
これは超貴重書。なんと古本屋で300円で購入したとか…マンガに対する愛の深さが為した技

合志マンガミュージアムを支えるアーカイビングの技術と収蔵漫画の活用

合志マンガミュージアムではマンガの寄贈を受け付けています。その量は増える一方で、管理も非常に煩雑です。今回お話を伺った南木さんはこの膨大な量のマンガを管理するために、ゼロから研究を重ねて独自の管理手法を編み出したそうです。

管理・検索をExcelで独自にシステム化したというのもまた驚きです。これらの作業には地道で緻密な作業を要することは容易に想像できますが、こうした一つ一つの取り組みにマンガに対する愛を感じ、感服するばかりです。

年代、作者名、作品名などが記載されたラベルと、特注のマンガ用段ボールケース

寄贈で受け付けるマンガの中には、既に所蔵している作品も入ってくるわけですが、そういったマンガは市内の小学校に置いてもらうようにしています。昔は子どもにマンガを見せるのは良くないという風潮もありましたが、今は保護者もマンガに親しみを持って接していた世代ですし、マンガから学ぶことも多いという考え方が広まった結果でしょう。合志市の教育長もマンガが好きでとても協力的だそうです。生徒からも「学校に来るのが楽しくなった」という声が多く、特に保健室登校の子どもたちには非常にポジティブな影響を与えています。

私が取り組みたい不登校・引きこもり対策として、特に小学生に対しては、学校でマンガが読める環境というのは合志市では一定の効果を発揮しているようです。この取り組みについては、学校の現場や、生徒児童の声を聴きながらさらに詳細を調べてみたいと思いました。

最後に

マンガを通じて地域を活性化させたり、マンガの魅力の発信拠点となったり、地域コミュニティを作る代表例として、非常に有意義な視察となりました。私はマンガ図書館Zや国立国会図書館などでの取り組みで、デジタルアーカイブにも注力していますが、やはり紙の本の魅力も後世に継承し、より広く伝えていくことも大切です。私自身、収蔵されている貴重な書物を実際に目で見て、手に取り、とても感動しました。こうした感動を後世にも継承していけるような整備が必要ではないでしょうか。

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赤松健