2022.3.12

山形県・銀山温泉は「アニメ聖地巡礼」の元祖?! ~コロナ禍でも頑張る歴史的な温泉旅館を訪ねて~

2022年3月7日~8日、山形県に出張してきました。

元々は「やまがたAI甲子園」という高校生の人工知能コンテストの審査員として招待されていたのですが、コロナで順延となり、しかし「尾花沢市観光物産協会」と「銀山温泉」にお話を聞く約束はしてあったため、予定通り山形行きは決行したものです。
主にお聞きしたかったのは、例えば「アニメ聖地巡礼」が地域活性化にプラスなのかマイナスなのか、しっかり(ネットではなく)現場の声を聞きたかった。そしてコロナ禍で困っていること、その具体的な対策案など、できる限り持ち帰って、何とかしたいと思ったわけであります。

私は父母の実家が山形(村山市楯岡)で、小中学校の夏休みは毎年山形に来ていましたが、冬の山形は殆ど初めてで、晴れていたものの積雪の分厚さには圧倒されますね。

凄い雪と氷柱(つらら)!

尾花沢市観光物産協会はアニメ大好き!

さて、まずは「尾花沢市観光物産協会」さんです。
この新聞記事をご覧下さい。

読売新聞(山形版)、2020年2月に送って頂きました

右下の「根強い人気 新装版も」の部分で、『ラブひな効果』を懐かしむ阿部かおるさん(56)という方に、一目会いたい! 会ってお礼を言いたい!・・と思っていたのです。
そして、その尾花沢市観光物産協会に行きましたら、おられましたよ! 阿部かおるさんご本人が!!

左端の方が阿部かおるさんです

何と、お手製の「ラブひな」パネルコーナーまでありました。記念にサインを入れてきましたので、お近くの方は見てきて下さいね。他にも、「温泉むすめ」や「ラブライブ」のポスターなども。

著作権的には作者がOKなので問題ありません!(笑)

https://www.obane-kankou.jp/尾花沢市観光物産協会雪とすいかと花笠のまち尾花沢。自然豊かな寒暖差が作り出すスイカ、牛肉、蕎麦はブランド品 大きな笠がダイナミックに廻る発祥地www.obane-kankou.jp

尾花沢市は東北地方の市の中では人口が最も少ない自治体です。しかし銀山温泉など観光資源には恵まれ、観光客が年間150万人も来る一方で、旅館など部屋数は少なめ。新幹線が新庄まで延線になったとき、急に年齢層が変わって若くなったとのこと。
ドラマなどコンテンツの舞台に使われることも多く、『ラブひな』が流行った時には、阿部さんも全巻買って勉強したそうですよ。感謝です!

地域活性化について、アニメとのコラボは大歓迎で、
■ アニメ絡みで実害を被ったことは無く、むしろアニメ好きの方々はとても丁寧で、無料で宣伝して下さるのでありがたい存在
■ アニメを売り文句にしたいくらい
■ 最近は、アニメ好きの方が作中に銀山温泉が登場したことを教えてくれる

先日プチ炎上していた「温泉むすめ」について聞いてみましたが、現地では特段何も無かったそうです。「温泉に行かない人が言っているのでは?」とのこと。ただ「例えばコスプレ大会をしますというのは、銀山温泉の景観が変わってしまうので、そこはご遠慮願いたい」だそうで、それは納得ですね。
アニメは海外との文化交流にも一役買っていて、先日も台湾語とバンコク語でライブ配信をしたそうなのですが、やはりアニメの話は外せません。とても盛り上がるのだそうです。

「一本のアニメがあるだけで助かる町っていっぱいある」と阿部さん。アニメの聖地巡礼での地域振興での盛り上がりについて、協調しやすい制度作りによって、アニメ1本作品1つから広がっていく、コンテンツでの繋がりも今後考えていきたいとのことで、終始にこやかでした。

一つだけ、ちょっと頼まれたことが。実は新庄市に「HUNTER×HUNTER」の冨樫先生のご実家(冨樫紙店)がありまして、特に秘密ではなくて、原稿などの展示物も飾ってあるのですが、そのツアーを観光協会でやったらしいのです。でも集英社の版権使用が厳しくて、名前を叫ぶのはいいけど、キャラを出すのは無理で、そういった権利関係について「どこに聞けばいいのかがわからなかった」とのことで、ネットか何かで申請書とか書式があればいいなぁ、とおっしゃってました。ちょっと大手出版社に提案してみますね。

ラブひな「ひなた荘」のモデル、銀山温泉はコンテンツで盛り上がった

午後は、いよいよ「ラブひな」の舞台、銀山温泉へ!
思えば1998年の8月18日。アシスタント2名を銀山温泉に派遣し、一泊で写真を撮りまくってきてもらいました。私自身はネーム作業で行けませんでした。
それから24年。とうとう私も銀山温泉に到着ですよ!

何度も書いたのにあまり知らない風景に感動!
聖地巡礼の基本「単行本と現実との比較」作業

これこれ!何度も何度も書いた、アニメにも出てきたこの風景! 感動です!
そして何と「ひなた荘」のモデル「小関館」は老朽化のため改装中で、一階部分は以前は平らなヒサシだったのですが、明らかに「ひなた荘」っぽいデザインになっていました。聖地が原作に寄せてきた!(笑)・・・かどうかは分かりませんが、作者としては嬉しい発見です。

これが「ひなた荘」のモデル「古関館」です!

出迎えてくださったのは、小関館や銀山荘の若き社長、その名も小関社長。イケメンです。

このパネルは利益供与になるとマズいので回収してきました(笑)。
上部に古関館(というかひなた荘)が描いてあります。

コロナ禍ではありますが、銀山温泉は(有名な割に部屋数が少ないこともあり)4月以外は予約いっぱい。4月は雪も無ければ紅葉も無く、スイカも何も無いので、ここなら予約が取れそうかも?!
目指す観光地の姿としては、「日本人に愛される観光地をまずを目指そう」と考えているそうです。行政に対しても、多言語化は結構だが、景観を損なわないようにQRコードを出す程度に抑えてくれと言っており、そもそも年間で12万人くらいが限度ということで、「古き良き日本的な美学」を持った温泉地作りを目指しているとのことでした。

ただしドラマやアニメなど、コンテンツに関しては協力的で、やはりNHK朝ドラ「おしん」で圧倒的に観光客が増えた経験が大きいのですね。アニメ聖地巡礼についても、
■ 特に困っていることはない
■ 風紀を乱しているという話も聞いたことがない
■ 作品を大事にしている方が来てくれてうれしい、助かっている
とのご意見でした。

「温泉むすめ」プチ炎上についても、小関社長のところに外部からの問い合わせなどは特に無く、取り扱いが若干デリケートになっているのは知っているが、それくらい、とのこと。「もし銀山温泉自体が攻撃対象になった場合はしかるべき措置をとるが、我々を使って楽しんでもらうのは本来の目的だから、そこに温泉むすめがそぐわないなんてことはない」とおっしゃっておりました。
また、個人的に著作者の権利は注意深く見ているそうで、私(赤松)も携わっている海賊版対策について、「日本で盛んなマンガやアニメについて、そういったカルチャーは保護していかなければならない」と応援して頂きました。

銀山荘のフロント前ロビーにて

銀山温泉は、その名の通り昔は銀を採掘しており、その岩盤は固く、311の時もあまり揺れなかったのだそう。今でこそ年中満員ですが、「おしん」の前までは全然お客さんが来なくて、「おしん」で2~3年ほど盛り上がって、そのあと下火になりましたが、やはり山形新幹線の新庄への延長で再び客足が戻ったそうです。
大正ロマンと言われている建物は、大正から昭和初期に作られたもの。おしんが大正生まれで、対象の建物が残っているということで撮影に使用されました。また、山形の観光で一番大きかったのは、2000年頃にIT革命で旅行が個人化して、秘湯に行きやすくなったのが相当大きいと考えているそうです。

銀山温泉として一番困っているのは、ずばり「過疎問題」です。観光客が増えても、旅館の人手が全く足りないのです。社員寮が40部屋でもまだ足りません。従業員の半分以上が県外出身者です。市内に若い人がいないというのもあります。そうなると、山形の食文化が残るかという問題もあるでしょう。冬越しの保存食など、従業員もよく知らないので、説明も出来ません。何が作られたか、どうやって作られたか、その背景にどのような食品がいつの時期に手に入ったかという文化的背景を伝えていく必要がありそうです。

最後に、「コンテンツの力は本当に勇気づけられる。」と語る小関社長。旅館では貸衣装屋もやっていて、夏場は外に店も出し(冬は宿泊客のみ)、コスプレ的な人もちょくちょく見るそうです。「もう、うちは来てくれて楽しんでくれて、盛り上がってくれるならもうそれだけでありがたい」とおっしゃってました!

現地では、聖地巡礼は好意的に受け入れられていた

総じて、(ネットでは色々あるかもしれませんが)銀山温泉の現地では、「アニメ聖地巡礼」は好意的に受け入れられていると感じました。漫画ファンやアニメファンは、ブログやツイッターで無料で宣伝をしてくれる上に、礼儀正しくそしてあまり騒がないという、いわゆるテンプレ的オタクな感じが意外と地方観光とマッチしているようです。

私としても、歓迎されている以上はアニメ聖地巡礼について推進していくと同時に、地方が抱えている問題にも関わって行けたらと思います。

赤松健