今回のアメリカ視察では、大きく分けて5つのジャンルを調査しました。

(1)過去ゲームのプレイアブル保存について
(2)美術館や博物館など文化施設の運営について
(3)エンタメ企業やゲーム企業など巨大コンテンツ業界の現場
(4)クリエイターや編集者など現場の方々との意見交換
(5)NASA

また、どの施設(5以外)でも共通する質問として、 ・デジタルアーカイブに対する考え方と進捗 ・生成AIに対する考え方と現状と今後 ・日本コンテンツを思うか ・フランス(税金や補助金が凄い)との考え方の違い があります。いかにも赤松らしいネタですね。


初日(1):ニューヨーク近代美術館(MoMA)

さて、日本の羽田空港を8月29日午前11時に出発し、13時間飛んで、アメリカのジョン・F・ケネディ国際空港に着いたら同じ「8月29日午前11時」。一日トクした気分。

お昼にホテルに着いて、すぐさま15時から「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」を視察しました。我ながら狂ったスケジュールです。
デザイン・建築・デジタル・キュレーターなどの部門トップが、MoMAの現状について質疑応答してくれました。(ちなみに私がLoveHinaなどを描いた日本の漫画家であることは知られています)

■特徴的な発言

Q:補助金が多いフランスと比較すると?
A:アメリカでは財団からの寄付や個人寄付が多い。企業スポンサーもたくさんある。MoMAも個人の寄付が基本。フランスやイタリアのように公的なお金でアートが支えられているのは利点と欠点がある。公的なお金は政治システムに結びつく。イギリスのように大幅な予算カットもありうる。

Q:これまで、表現の自由が阻害された経験は?
A:1999年ブルックリン美術館「センセーション展」など。ワシントンのナショナルギャラリーもファンディングが断ち切られたことがあった。公的な基金を使って呼ぼうとしたエキシビジョンが、もしかしたら内容に問題があり予算が打ち切られてしまう恐れがあったため、結果プライベートの別の美術館に持って行ったことも。

Q:MoMAの職員数、コロナ禍での運営状況、および外部からの財政支援は?
A:職員は約800人。コロナ禍前に多くの職員がインセンティブを受け取って自主退職したが、その後雇い直した。なのでそコロナ禍前後でこまで数字に大きな変化はない。

Q:デジタルアーカイブの状況は?
A:動かない作品では大体60%くらい。MoMAはデジタル化を始めた先駆けで、写真や建築デザイン部門では早くから始めた。ビデオの作品では80~90%。

Q:メタデータ整備で苦労する点は?
A:近年、PROVINANCE(来歴情報)のスキャンダルの問題があった。来歴情報のエキスパートは重要で、来歴を整えないとコレクションに加えるだけでなく、展示もできない。2ヶ月くらいそれでかかる。特にMETは持っているコレクションにエジプト、アフリカのものがあり、これらはもっと整備が難しい。

・・・最後に「画像生成AI」について、MoMA側の気持ちと現実の対応、そして今後の予想についてお聞きしました。 そこで返ってきた回答が、驚くべきものでした。

Paola Antonelliさん (Department of Architecture and Design, and Director, Research and Development)
「気持ち的には、新しいテクノロジーが出てくるとトラウマ的なショックがあり、慣れていくのは大変なプロセスとは思う。MoMAとしては、アーティストをサポートする状況を整えることが重要と考えている。生成AIをつかうことで良い作品が作れるならサポートしていくのは私たちの役目だ。」 「またトルコのアーティストで、AIを使ったインスタレーションの作品がある。スタッフとしても大変勉強になった。1つの作品を、お客さんが20分くらいとどまって見ている。」

この作品は「MoMAの収蔵作品」の画像やメタデータをAIに与えて、そこから新たな画像をリアルタイムで発生させるというコンセプトです。 今、MoMAでは最も観客滞在時間の長い作品で、1階の目立つ場所に置いてあります。日本の美術館では(法的にOKでも批判に耐えきれず)実現は難しいと思われます。

これは録画ではなく、リアルタイムの画像生成作品で、全く同じ画像は二度と出てきません。長く見ていると「他の作品の印象」を感じることはあるようです。 もの凄い大きさと迫力、そして美しさで、多くの客が足を止め、イスに座って眺めていました。

Q:画像生成AIについて、現場のクリエイターの声はどうか?
A:アーティストでは「活用したい」というポジティブな声の方が多い。クリエイティビティをより生かせるよう模索しているようだ。今後はAIを使った作品が増えてくると思う。またAIを使った作品展示も増えてくるだろう。

Q:「何を学習させたか」のデータの透明性と、ある程度の「経済的な見返り」がないと、若手のやる気がそがれると思うが、そういう声はないか?
A:開発者、アーティストと、守ろうとする人の競争の様子であるようには思う。ブロックチェーンで来歴をトレースし、使われるたびに最終的にアーティストに経済的なリターンになる等のシステムを作りたい。

最後に、「日本のコンテンツについてどう思っているか」をお聞きしたところ、フランスと同じような回答がありました。
A:MoMAの収蔵ビデオゲームは、50%以上のコレクションが日本のもの。デザイン部門でも、いろんなリサーチをしている。NTTの絵文字の展示もある。日本と日本のアートはトップに君臨する。コラボはいつでもウェルカムだ。

初日(2):現地の有識者と意見交換

領事館と大使館の違いをご存じでしょうか?「領事館」は外国で自国民の保護を行い、「大使館」は主に国家間の外交を担います。
初日の夜は、在NY日本国総領事館の森大使が在米のマンガ有識者たち3名を集めて、会食というか座談会というか今後のアメリカにおける日本コンテンツ振興に関する作戦会議を開催。

【有識者の皆さま】

  • 鈴木繁さま(ポップカルチャーに詳しいニューヨーク市立大学の准教授)
  • 森本真理さま(獣医師で漫画翻訳者。イベント通訳者も)
  • 渡邉成一さま(米国の紀伊國屋書店の東海岸エリア統括者)

話は「この道に入るきっかけになった漫画やアニメは?」という軽いネタから始まって、

・日本コンテンツがアメリカでどう扱われているかの情報交換 ・州ごとに違う表現規制の基準について
・やたらと数の多いアメリカでの日本アニメイベントの様子
・韓国Webtoonのアメリカでの状況 ・生成AIをどう考えるか など。

もはや「海外の人々が、アニメをきっかけに日本に興味を持つ」のは普通のことであって、そこから政府や在外公館や教育機関がどう動くべきかも詳しく議論。 特に近年、海外の教育機関では「日本語を学ぼう」とか「日本文化を研究しよう」という学生(と学部)が非常に減っており、将来を考えると今から適切な処置をすべきと考えます。
その際、人気と知名度が高い日本の漫画アニメと協調し有効に活用すべきだ、と多くの有識者が思っているのです。 漫画家+議員の私としては、うまく橋渡しを行いつつ、明確なビジョンを示していきたいと思っています。

二日目(1):テイクツー・インタラクティブ社

二日目は視察3件。

まずは「GTA(グランド・セフト・オート)」シリーズで知られるゲーム会社、テイクツー・インタラクティブ社へ。
ブランドとして Rockstar Games、2K Games、Zynga Game Networkなどを持ち、特に「GTA」は暴力的な表現や性的な表現で物議を醸すことが多いです。例えばGTA3は神奈川県で有害指定され、18歳未満への販売が禁止になっています。
そこで「ゲームと表現規制」「ゲームと犯罪の関連性」という、赤松の裏テーマに踏み込むべく視察を行いました(・・・が、あまりうまく行かなかった)。
テイクツー・インタラクティブ社は1993年に設立されたゲーム販売会社で、従業員は全世界に約2万人。うち9000人程がゲーム開発に関わっています。上層部の方4名が対面で質疑応答して下さいました。

Q:「GTA」について、開発経緯やヒット戦略について教えてほしい。
A:GTAは日本の役割が大きい。日本のゲーム会社がまず最初にエンタメとしてのゲームを開発したと思っている。米英では子供のおもちゃのイメージだった。若者向けのジャンルが無かったので、若者向けのインタラクティブなゲームが必要と考えてGTAを開発するに至った。

Q:「エロ・グロ・暴力」については各国で規制されていることが多いが、多様なバックグラウンド(人種、宗教など)を持つ人々が混在するアメリカだからこそ、特に気をつけていることはあるか。
A:ゲームはもともと子供のものという意識が高かったので表現規制が厳しかったが、今では他の映画などと同じくらいの表現の自由があるという意識が高まってきている。例えばNBAのゲームは子供を含めた誰でもできるレーティングがある。どういったレーティングなのか、気にしながら開発している。

Q:ゲーム開発において生成AIを活用しているか。
A:コンテンツクリエイションには生成AIは使っていない。どうやって使っていくべきか勉強している最中だ。AIの世界が発展してきており、ユーザー、コミュニティーがどう使っていくのかということにも関わるので、慎重に見ている。

Q:ゲームのプレイアブル保存について、御社で取り組みはあるか。
A:それぞれのレーベルで保管しているのみ。過去のゲームにはアクセスできるようにしている。アメリカでも、ただのオモチャというところから、アートの1つという図式に変わりつつある。すると当然、業界の歴史や実績を形にした方がいいという動きになってくる。

Q:アメリカにはゲームの納本制度はあるか。(※フランスにはある)
A:スミソニアンミュージアムがアーカイブを始めているというのはあった気がするが、ゲームには納本制度はないと思う。

Q:日本の市場をどのように見ているか。
A:日本のマーケットは重要だ。日本からゲームの歴史が始まったようなところがあり、日本人は高品質でシネマティックなものに慣れている。コンソール開発も日本のものが多い。

Q:モバイルのアプリゲームでは、アップルやグーグルからの規制が厳しくないか。
A:モバイルの規模が大きくなってきているので、コンソールで学んだことをモバイルにも生かしている。テリトリーに合わせたモバイルゲームの開発の仕方をしている。もちろん規制はあるが、だから大変というわけではない。

Q:30%の手数料は高いと思うか。
A:高いと思う。

Q:アップルからBANされたことはあるか。私はある。
A:ロックスターゲームをモバイルに移植したとき、特にアップルなど厳しいで許可されないケースもあった。最近は許される範囲が広がっているという実感がある。

Q:日本のファンへのメッセージをお願いします。
A:自分たちの作っているゲームを受け入れてくれる気持ちに感謝している。これからもプレイしてくれると嬉しい。

ーーー

・・・総じて、「紆余曲折を経て、今やりたいことは大体自由にできている」という回答でした。それならば別に問題無いですし、納得なのですが。 ただし、これは経営陣の見方であり、もっと現場のクリエイター達の意見は違っている可能性もあります。ゲーム会社の視察については、その対象分野を工夫しないといけないかもしれず。皆さんはどう思われます?

二日目(2):ニューヨーク市政府文化庁 (DCLA)

13時に、ニューヨーク市政府文化庁 (DCLA)へ。市長からNY市の Commissioner of Cultural Affairs に任命された、Laurie Cumbo さんと意見交換。

主に、

  • 文化芸術におけるニューヨーク市の特徴的な取り組み
  • 直近のニューヨーク市における文化芸術関連予算と内訳 ・連邦政府や州政府とはどのような関係にあるか
  • 現場のクリエイターは満足していると思うか
  • 独自の税制優遇措置があるか
  • %フォーアートプログラムの40年はどうだったか

などについてお聞きしました。

調査結果は私の文化政策に活かしますがツイッター上では割愛。

最後に、例によって「生成系AIについて、ポジティブかネガティブか」もお聞きしました。
A:「DCLAは、AIを活用するレベルには至っていない。アーティストやクリエイターの活動という面ではインパクトが大きいと思う。これからどういう意味をもっていくか探っているような状況で、未知の部分が大きいので不安があると思う。著作権で規制してほしいという声はある。個人的にはネガティブな印象。教育に及ぼす影響が大きい。AIがあれば勉強しなくてよいのか、AIで学ぶというのは自分が賢くなったことになるのか、と課題が多い。」

・・・ニューヨークは市は音楽・アート・映画・演劇などの世界的な中心地であり、予算規模も大きいので、AIに関しても慎重に動かなければなりません。また私も「若いアーティストのやる気をそぐ手は無い」と考えています。そのためにはどうすれば良いか、動画で考察していますので、長いですがお時間がありましたらご覧下さい。

二日目(3):マーベル・エンターテインメント社

15時半から、あのマーベル・エンターテインメント社を視察してきました! いや~、もう感動です。界隈では有名な(日本語ペラペラの)C.B.セブルスキー編集長が私の漫画のファンで(笑)、新社屋をくまなく案内して下さり、マーベルのかなり深い部分までヒアリングすることができました。

ただし映画に関してはSNSで発言禁止・撮影禁止ですので、原作の書籍部門についてのみ報告ツイートいたします。(ここからは私のメモが元になっていますので、マーベル社の公式見解ではありません。指摘や苦情は私にどうぞ。)

Q:どのようにしてヒットを生み出し、現在の規模になったのか。
A:私も知りたいくらいですが、マーベルの歴史は80年。1937年以来ヒットの公式があるものはあるが、うまくいかない時もある。マーベルと日本の漫画は違うと認識しているが、大事なところは共通しているところもあると思っている。まず人がいる、その後にスーパーヒーローが出てくる。ヒーローには、そのヒーローになった人間がいる。その人間に、見ている人が共感できないと、スーパーヒーローは成立しない。ヒーローは完璧ではだめ。キャプテン・アメリカは完璧に見えるが、なった理由はスキニーであるところで、失われた期間も長い。何らかの人間としての欠点があるから共感できる。DCの中でバットマンが一番人気があるのは、スーパーマン等と違って欠点があるからだと思う。これは持論ですが。

Q:日本の漫画は(内需で成り立ってしまうためか)日本らしさを変えていない。マーベルは最初から世界展開していく上で、どのような戦略を立て実行しているのか。
A:この20年間で考え方が変わった。ファンタスティックフォーやスパイダーマンが始まった60年代当時は月刊という形で、次の月に買ってもらうにはどうすればよいかを考えていた。始まった頃は舞台もニューヨーク、登場人物も白人の男性。60年代後半から70年代にかけて、イタリアとメキシコとフィリピンでマーベルコミックが売れ始めた。自分等の作品は広い層に受けるんだなと、そこで海外を意識するようになった。その頃から、キャラクターに有色人種や女性も多くなっていった。ただ、クリエイターは白人男性だったので、典型的な描写になっていた。中国だとブルースリー映画に出てくるようなキャラクターだったり、日本人なら侍とか。過去30年から20年くらいにかけて、国際的なライターが増えた。いろんな文化を持った人たちが実体験に基づいた作品を作れるようになってきた。編集部やクリエイターは文化的、人種的にも多様性がある、ニュートラルな人が増えた。昔の作品はステレオタイプで、それをいかに変更していけるかというのも課題。一番は作品を楽しんでもらえることが大事。政治的な状況に左右されずバランスをとる。

Q:マルチバースとか、パラレルワールド的な要素が増えてきたが、読者の評判はどうか。難解すぎないか。
A:映像面でいうと、追いかけづらいくらい複雑になっている気がする。枝分かれして複雑になっているので1つにまとめるようにしている。コミックだと色々なマルチバースがあるが、ファンが「これが真実」といっているのは616。616が公式。他のマルチバースで試して、うまくいったらその話を616のユニバースにうまく取り込む。

Q:キャンセルカルチャーのような、過去の内容に否定的な声があり、再出版を取りやめたことがあるか?
A:たくさんある。60~70年代にOKだった表現で今はダメなもの。そういうものは、やめて違う方向へということはたくさんある。

Q:それは修正して出版するのか。もう読めないようにするのか。
A:直し方は2つある。まず、クリエイターが存命の場合は必ず許諾をとる。クリエイターに相談した上で修正し、書籍上でもクリエイターの気持ちを解説する。また存命でないような場合には、昔のコンテンツを新しく重版する場合に、一番最初のページで、当時作られた背景で、今はこうだ、という説明を行う。

Q:作家と出版社との契約関係(出版社がどこまで権利を持つのか)はどうなっているか。
A:マーベルが100%権利を保有する。ただクリエイターごとに違う契約書があり、映画化やマーチャンダイジングすると%が上がるという契約になっている。

Q:作者が権利を持っていて、出版する権利のみ出版社にあるという日本のシステムをどう思うか。
A:個人的には日本のシステムは素晴らしいと思う。権利を共有するとお互いがんばろうと支え合える。

Q:WebToonについてどう思っているか。
A:将来はWebToonがメインになると思う。マーベルのWebToonも2年間展開している。サブスクで見られるサービス。WebToonは、2014年からネイバーやカカオと一緒に取り組み始めた。出版物は週刊、WebToonは毎日新しいものがみられる。既存のファンはあまりWebToonは好きではないが、新しいファンを取り込むには良い。

Q:生成AIについて、ネガティブに思っているクリエイターも多いが、CBさんの個人的な意見としてはポジティブかネガティブか。
A:マーベルとしては、クリエイターには生成AIを使ってはいけないと言っている。今のところ、訴訟リスクがあるからだ。ただ、もしクリエイターがAIの適切な使い方を学べたら、クリエイターにもベネフィットがあると思う。今1つのコミックを描くのに8週間かかる。AIを使えれば作業効率あがって、その分だけ稼げるようになる。今はネガティブな意見があるが、フォトショップができた時もそうだった。状況が整理できれば活用できるものだと思う。

ーーー

C.B.セブルスキー編集長の他にも私のファンのマーベル社スタッフがおり、ミニミニサイン会を行いました。こういう時、同業者(クリエイター)は有利だと思います。中の中まで入り込めます。 全てを報告できるわけではありませんが、今後もマーベル社には注目し続け、その極意を少しでも学び取って、政策(制作も)の参考にしていければと思っています。 ・・・それにしても実物大のアイアンマン、かっこいい!

三日目(1):ジャパン・ソサエティ

午前中は、1907年に創設された「ジャパン・ソサエティ」を視察。 マンハッタンの国連本部のすぐ目の前(!)にあり、日米の相互理解・感謝・協力を目的とした歴史ある施設です。総理なども来訪します。
もちろん「日本がどういう国か」の広報も行っており、これまでのハイ・カルチャー(歌舞伎など古典芸能)に加えて、近年はやはり日本の「漫画・アニメ・ゲーム」に力を入れている模様。(劇場版スラムダンクやシン・仮面ライダーの北米プレミア上映などもここで行った)
そこで最近ジャパン・ソサエティ(以下JS)が引き抜いたのが、今回ヒアリングを受けて下さった Peter Tataraさん。マクロスが大好きな、日本のポップカルチャーに詳しい専門家です。大きなイベント(Anime NYC)の主催者でもありました。
ピーター氏は拙作『ラブひな』も大好きで、すぐ打ち解けることができました。ラッキーなことです

Peter:「小さい頃にマクロスを見てこの世界にはまった。漫画アニメの世界を通じて日本のことを知りたいと思うようになった。そういう体験は、アメリカの若者に共通すると思う。」
Peter:「日本の漫画には共感しやすい。アメコミヒーローは体格がよく超金持ちだったりするが、ラブひなは若い学生が主人公で、自分と似たようなキャラがそこにいる。最近は映画スターやアスリートや歌手など、著名人がどれだけ日本の漫画アニメが好きかを発信し始めている。今の時代はもう、漫画アニメ好きはクールだという風潮になっている。そこでJSから、映画部門をやってみないかというお話をいただいた。」

Q:なぜJSはこんなに凄い場所にあるのか?
A:1971年にロックフェラー3世から土地の寄付をうけて、ここの建物は建てられた。各国の領事館や大使館も密集しているエリア。日本文化を広めるという目的は変わっていないが、手段は変わりつつある。特にビジネスや政治の役割としては、国連総会時にここで毎日のようにイベントを行っている。

Q:どんなイベントか?
A:アート・教育を中心に、茶道とか日本酒テイスティングのようなものから、ゲストの講演会などもやっている。映画部門だと一年間に60本くらいの日本映画を紹介している。100年以上の活動の中で、日本の在り方が変わってきている。次の100年間、日本とアメリカを繋げるためにはどういう活動が必要かを考えている。個人的には漫画アニメが大きな役割を果たすと思う。30歳以下の人が日本を好きになるきっかけは、漫画アニメにある。ポップカルチャーを利用して興味持ってもらって、日本をさらに深く知ってもらうのが私たちの役割だ。まさに「マンガ外交」である。漫画を通じて日本を知ってもらうのは、他の国にはなかなか真似できない。

Q:スタッフの数は?
A:約50人の従業員が働いている。プログラムとしては、パフォーミングアーツ、ギャラリー、フィルム、教育、講演、ランゲージスクールなど。あとはファイナンス、オペレーション、開発チーム、マーケティングチームがある。

Q:ピーターさんはJSをどう変えていきたいか?
A:今までJSはハイカルチャーをプッシュしてきて、ポップカルチャーには手をつけていなかった。近年の盛り上がりをみて、日本代表する文化の1つと方向転換していきたいと考えている。自分の目標としては、ハイカルチャーとポップカルチャーとのバランス。両方紹介していきたい。日本と米国をより近づけていくことが重要。ポップカルチャーは無視できない。

Q:米国では韓国のカルチャーやコンテンツの勢いが凄いが、どう思うか。日本が追いつき追い越すにはどうすればよいか?
A:日本政府がクールジャパンで押し出そうとしていたが、資金がアニメ漫画を通じて別のところに使われていたのではないか。日本のアニメや漫画は既にファンがいて、コンベンションをやると多くの(既に日本が好きな)人が来る。これは実は発展性がない。韓国が凄いのは、韓国コンテンツは既存のファンはいなかったところから、新しい方法でファンを獲得したところだと思う。特にネットフリックス、クランチロールは、アメリカ全土で一般的な視聴者層にリーチしようとしている。彼らの広め方を見て、ああいうやり方を見ていく必要が戦略として必要だ。

Q:韓国のBTSなどはアメリカナイズ、グローバライズされていると感じる。日本のコンテンツは、日本らしさを維持すべきか、世界に合わせるべきか?
A:コンテンツは日本らしさ追求してよい。ただプロモーションという観点で、例えばYouTubeで海外リージョンブロックされているようではダメで、どんなに素敵なものがあってもこちらで見られなければ広がっていかない。

Q:表現の自由に関して、アメリカと日本で違う部分はどこか。
A:状況は変わってきていると思うが、表現の自由は政治的な話題になっているから、オープンに議論しにくい状況あると思う。権力を持っている人が、自分たちがよく思わない表現を規制しようとすると、社会として健全に議論していくことが難しくなる。あとは、フェイクインフォメーションは、誰が正しいかどうか判断する権利があるかという問題がある。間違っている情報から守れる方法はあるのか、誰がそれをやるのか、難しい問題。基本的にはどの情報にも自由にアクセスできることが重要だと自分としては思う。

・・・ジャパン・ソサエティは、日米友好を深める実に多くの試みを行っており、外務省の信頼も厚いです。アメリカで私の「マンガ外交」を推し進めるならここを有効に活用すべきと確信しました。
ピーター氏からは、より具体的な施策のアドバイスも受けましたので、帰国したらさっそく動きたいと思います。こういった「日本が大好きな海外の人々」の助力を得て、もっと日本好きな人を増やせるとしたら幸せなことです。

三日目(2):ロチェスター大学関係者との意見交換

お昼にニューヨークからロチェスターへ飛行機で移動。東京から京都くらいの距離ですが、同じニューヨーク州の中にあります。
空港で急いで塩ラーメンを食べたら一杯20ドル。3000円くらいしました。空港の中だから特に高いとは言え、物価高と円安のダブルパンチで、これでは日本からの留学生は相当厳しいでしょう(※前フリ)。ニューヨークでは、普通の店でも驚くほど物価が高くて驚きます。
ちなみに私は自費で来ていますので、商品の値札を見ては毎日ビックリしています。さらにチップ(15~20%くらい)もありますし。

一時間強でロチェスター空港に到着。 17時からロチェスター大学で、ジョアン・ベルナルディ教授(日本語・視覚文化研究)ら7名の大学関係者との意見交換会。バブルの頃は日本人の留学生が多く学んでいたロチェスター大学ですが、今は殆どゼロです。これは由々しき問題で、海外での教育&研究機関での日本のプレゼンスは明らかに落ちています。(文科部会や国会の委員会でも問題にはなっていますが・・・)

赤松:「自己紹介を兼ねて、好きな漫画アニメを教えて下さい。」

  • Joanne教授(日本語・視覚文化研究): 「手塚作品だが、最初鉄腕アトムが日本のものだと知らなかった。」
  • Jeffrey准教授(英語学部学部長): 「ビッグ・オー、アストロボーイ(鉄腕アトム)、エイトマン。」
  • Shizuka准教授(日本語): 「ブラックジャック、ときめきトゥナイト。学生はアニメ漫画好きが多い。特にドラゴンボール、ワンピースは人気。」
  • Myounghee助教授(韓国語): 「日本漫画は韓国や中国の学生にも人気。」
  • Mariko教授(日本語): 「キャンディ・キャンディ。あとドラえもんは授業で使っている。」
  • Jesse助教授(東アジア文化): 「浦沢直樹の作品でMonster、それから20世紀少年とか。宗教事情を扱っている点に興味あり。」
  • Jameyさん(視覚文化研究科博士課程): 「永井豪の作品やガンダムなど。日本漫画の方がアメコミより人気がある。」

・・・さて、意見交換会の話題は、

  • ロチェスター大学での日本の存在感について
  • 漫画アニメにおけるアメリカでの表現規制について
  • ロチェスター大学でのデジタルアーカイブの進捗
  • 日本からの留学生を増やす手立てについて
  • 日本マンガと韓国WebToon
  • 生成AIについて(主に教育機関での考え方)

など多岐に渡りました。一部をご紹介します。

Q:日本からの留学生が激減している。ロチェスターの日本人留学生事情はどうか。
A:(Shizuka):私は、1988年からこの大学で教えているが、当初はそれなりに日本人の留学生がいた。その国の経済状態が反映されるとは思う。当時は円高だった。それで私も留学した。そのあと韓国人が増えた。90年代に韓国でバブルがあり、その後弾けていなくなった。今多いのは中国人。アメリカの大学の学費は凄く高い。あと英語力の問題もあると思う。

Q:日本に関する教育システムはどうなっているか?
A:(Joanne):日本語の授業がある。初級レベルは1クラス20~25人 全体で70人くらい。中級クラスが45人くらい。日本語専攻や、日本文化専攻がある。うちの大学は大きくはないが、頑張っている。他の学部の学生が日本語の授業を受けられるシステムにはなっている。

Q:どういう層が日本語に関心をもっているか。
A:(Mariko):80年代は、ビジネス(トヨタ、ソニーなど)に興味ある生徒が日本語の授業をとっていた。今はビジネスは全く関係ない。今は漫画アニメオタクが日本語を勉強している。しかし、彼らの方が長続きする。純粋に言語を学びたい人たち、日本語で漫画を読みたい人たちだ。こちらから日本に行くケースもある。 (Jamey):日本から講師としてクリエイターを客員教授として呼んでいる大学が増えている。音楽や古典の先生を呼ぶことは昔からあったが、最近の傾向として漫画家を呼ぶケースが増えている。

・・・漫画アニメや漫画家自体に期待する意見も多く出ましたので、私なりの協力をしていくつもりです。ただ日本人留学生現象の問題は、今すぐどうこうできる程簡単ではないため、今後文科部会や委員会の方でも議論し報告していきます。現に問題視している議員は多いのです。

ところで、外務省にJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)というのがありまして、評価が高いです。ご存じでしたか?
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/hito/sei/jet/index.html

四日目:ストロング遊戯博物館

いよいよ前半の山場、「ストロング遊戯博物館」の視察です!

視察の目的は、

(1)「過去ゲームのプレイアブル保存」を日本でも進めるため、各国の保存施設を視察してその哲学やコツを学び、日本の施設(やはり国立国会図書館だと思われる)でそれをうまく実現する。
(2)現在未来のクリエイター達が過去ゲームからインスピレーションを受ける機会を確保し、更にゲームなどコンテンツ文化の研究者の活動にも資する。
(3)公的にアーカイブを行うことによって、正しい内容のものを後世に残し、それにより海賊版サイトも減らす。

・・・「ゲームなんて」と馬鹿にするかもしれませんが、今は(スーパーマリオの映画が世界的ヒットになっているなど)日本の誇るべき特徴であり、むしろ最も注目度の高いテクノロジーであって稼ぎ頭のコンテンツであるとも言えます。

これまで私は、日本の既存の保存施設や大手ゲーム会社を回って仁義を切りつつ協力を求め、フランスの国立図書館(BnF)や、韓国のネクソン・コンピュータ博物館などを視察してきました。詳しくはこちらのブログ記事をご覧下さい。
https://kenakamatsu.jp/articles/26197

・・・が、今回(収蔵内容に関しては)アメリカ・ロチェスターの「ストロング遊戯博物館」が世界最強と分かりました!
まず広い!広すぎる!
そしてとにかく金がかかっている!!
保存するのか遊ぶのか、コンセプトがしっかりしている!!
新しいアイデアにあふれ、子供も研究者も両方満足できる!

また漫画クリエイターとして特別な歓迎を受け、ドリキャス版『ラブひな』など赤松原作ゲームが展示してあったり、普段入れない地下一階と三階の収蔵庫を見せて頂くこともできました。

ところで「ストロング遊戯博物館」は、Margaret Woodbury Strongさんが創設したからストロングなのであって、ゲームの強い弱いとは関係ありません。 もともとは彼女の「お人形コレクション」が元になっており、そこから「遊び全般」の保存に発展していったそうです。だから世界最初のバービー人形だとか、初期のボードゲームなど、物質的な玩具も大量に展示収蔵しています。これらも非常に貴重!

しかし何といっても凄いのが、ビデオゲームのコレクションです。アーケード筐体は大きいので保存が困難ですが、ここでは広さにものを言わせて大量に保管してあります。あのスターウォーズ筐体やスト1の叩くボタン型、セガが最初に出したパンチング筐体など本物が保管してあります。その数たるや・・・

また、故障の場合には3Dプリンタを使って新規に部品を作ってしまいます!そ、その手があったか!
韓国ネクソンではオークションで中古機から部品を取っていましたが、やはり限界があります。写真のナムコ「Panic Park」は持ち手とスピーカーの部分が壊れたため、3Dプリンタで新規作成。もう驚き!

ゲームに関するあらゆる書籍を集めた図書室だけでも、世界最大クラス。書類系では「ゲーム機の設計図」や「ICチップ等の回路図」なども保管しており、国内外の研究者が閲覧することができます。 またフロッピーなどデータが壊れやすいものから順に、デジタルアーカイブ化も進めています。もう完璧!

昼12時から「ストロング遊戯博物館」の会議室で質疑応答。回答して下さったのは、

  • Steve Dubnikさん, president and CEO
  • Jon-Paul Dysonさん, PhD, vice president for exhibits and director of the International Center for the History of Electronic Games
  • Lindsey Kuranoさん, electronic games curator
  • Andrew Bormanさん, digital games curator

Q:予算や財源の規模を教えて下さい。
A:今年の予算は約2億USドル(※今のレートで約290億円)。内訳は60%が入場収入、30%がインベストメント(予算からの投資で得たお金。創立者の遺産から5%を投資にあてている)、10%が寄付。

Q:収蔵品数は?
A:50~60万点。そのうち電源を使うものは、ビデオゲーム(アーケード含む)が6万点くらい。紙は別。フロッピーも別。データは最低でも75テラバイトある。

Q:日本の国会図書館では、未開封のゲームしか寄贈を受け付けない。これは法律ではなく、運用でそうしている。これをどう思うか?
A:開封済みのものも収集すべきだろう。当館ではそうしている。

Q:ゲーム基盤は劣化する。特にEPROMやコンデンサーなど。もし私が館長だったら不安なので本物の基盤は使わない。盗難も怖い。本物を使うというのはどういう哲学があるのか。
A:できるものは、実際のものを体験してもらいたいと思っている。アーケード筐体の裏側は触られないようにバリアされている。またプロトタイプのように希少価値があって壊れやすいものは展示しない。何を展示するかはキュレーターが決める。コンテンツのデータはとるので、シェアはできる。フロッピーの全てのデータを取りたいが、マンパワーが足りないのでレアなものからやっている。

Q:ガラケーのゲーム保存で、工夫していることは?
A:バックアップ非常に難しいので、開発者にファイルをもらったりする。サーバーが必要なもの(MMORPGなど)は、サービスが終了したものをどうやってプレイするかが課題。コンテンツだけでなく、プレイヤーがプレイしている動画も保存している。

Q:保存するにあたって困っていることはあるか。
A:とにかく数が多いので時間がない。デジタルゲームの保存が大変。デジタルゲームはすぐ保存しないと市場から消えてしまう。

Q:ゲームはフランスでは芸術と見られているが、日本では単なる娯楽と思われがち。アメリカでは国民や周囲の住人の理解は十分得られているのか。
A:20~30年前は、日本とあまり変わらなかったし、2006年頃ビデオゲームコレクションを作ったときは反対もあった。しかし今は世代交代して、ゲームをやっていた若者が大人になっている。アメリカでゲームをする平均年齢が31歳と言われている。またコロナ禍以降、ビデオゲームはコミュニケーションできるツールとして見直されたと思う。今では国も認めて、研究にも資金を出すようになった。

Q:ストロングに来場する年齢層は?
A:55%が大人、45%が子供。最近はゲームが、デジタル技術やプログラムに興味を持つきっかけになるという見方が増えてきた。

Q:生成AIについてどう思うか。
A:ポジティブに考えているが、人間のクリエイティブは必要。

Q:日本のメーカーは研究目的などで訪れるか。
A:あまり来ていない。ぜひ来てほしい。

・・・もうとにかく夢のような時間となりました。 はっきり言って、アーケード筐体の保管についてはこの規模を日本で実現するのは不可能ですので、ある程度ストロング博物館に任せてしまった方が良いと思います。 その分、ゲームカセットやフロッピーのマイグレーションを中心に、場所を取らないデジタルアーカイブ部門で日本がイニシアチブを取り、特に(そもそも多くのゲームを作ってきたのは日本のメーカーなので)紙の資料などもデータ化して後世に残していく努力をすべきだと考えます。 そのためには、

  • 開封済みのゲームパッケージも国会図書館へ寄贈可能にする(※法的には今も問題無い)
  • フランスやアメリカのように、ゲーム専門の担当者を置く
  • 研究者やクリエイターがプレイ&調査できる環境を整える(※今は申し込みの度に倉庫からゲーム機を持ってきて配線している)
  • カートリッジやフロッピーの内容を吸い出す装置はそれほど高くないので揃える
  • その際、ゲームメーカーの協力を仰ぎ、正しい内容を後世に残す という必要があるでしょう。

実はどれも、法改正の必要がありません。運用の問題なのです。帰国後、早々に有識者と関係者に連絡し、日本ができることを素早く行っていきたいと考えています。

五日目(1):現地調査

午前中から、ニューヨークの書店を(特に日本漫画の取り扱いについて)現地調査。

中でも驚いたのが「紀伊國屋書店・ニューヨーク店」。もう日本のアニメイトもビックリの品揃えで、売れ筋マンガも日本同様のラインナップ。英訳版はもちろん日本語版のコミックスに加え、アニメ関連やオタク系グッズ、ガンプラや画集なども強く、客の密度も凄い!

店員さんも日本人が多いので、NYに行ったら是非立ち寄ってほしい。場所はゴーストバスターズの冒頭に出てくる「ニューヨーク公共図書館」の裏手のブライアント公園の横です。 ちなみに紀伊國屋さんは他にも多くのアメリカ支店を出しています。写真を見る限り、どこも凄い品揃え。これはフランスの書店に匹敵する規模でしょう。驚いたなぁ。

ところで今回の視察の初日に、アメリカ紀伊國屋書店の東海岸エリア統括者・渡邉成一さんと対談しましたが、北米は(ラブひな時代から)かなり有望な市場であり、中でもジャパンソサエティ紀伊国屋は「日本コンテンツの広報」を行うための重要なプラットフォームとなるはず。憶えておかなくては・・・。

また、US最大の書店チェーン「バーンズ・アンド・ノーブル」も調査。マンハッタンのど真ん中にあり、日本漫画の品揃えはなかなかの量! ワンピやナルト、進撃や鬼滅など有名タイトル中心で、拙作『UQ HOLDER!』もありました。とにかく場所が良すぎて日本の広報的イベントをやるなら頼りになりそう。

五日目(2):現地のクリエイターと意見交換

13時から、アメリカの現役マンガ家さん(&編集さん)5名に集まっていただき、2時間近く意見交換会(※主に生成AIについて)を行いました。同じクリエイター同志ということで、非常に踏み込んだ内容になっています。

・前半:アメリカのマンガ出版業界の現状について
・中盤:マンガ家としての夢など
・後半:生成AIについて

★ 参加者

  • Ben Wilgus ( benjaminwilgus.com ) ベン・ウィルガスさん。作家・ライター・アーティスト・編集者で、コミックス歴は長い。子供向けと大人向けの両方の出版社で仕事をしている。
  • Eric Arroyo ( yamfamcomics.com ) エリック・アロヨさん。自身のスモールプレスも運営する漫画家。デジタルコミックのプラットフォームでも仕事をしている。
  • Patrick Crotty ( peow.studio/shop ) パトリック・クロッティさん。作家・ライター・アーティスト・デザイナーで、受賞歴のある出版社PEOWを設立。業界全体で多くの作家と仕事をし、インディーズとメインストリームの両方の出版社で仕事をしている。
  • Jane Mai ( comicsbeat.com/review-jane-ma… ) ジェーン・マイさん。絵を描くことを生業とする作家兼イラストレーター。複数の本を出版し、その愉快なストーリーと楽しいアートワークで高い評価を得ている
  • ホイットニーさん (今回のコーディネーター。編集者。)

Q:日本ではマンガの電子書籍の売り上げが紙を超えたが、アメリカでは電子書籍はどうか。(ちなみにフランスでは殆ど紙。)
A:電子書籍も増えているが、アメリカの市場でいうと85%がまだ紙。アプリで読んでいても、紙ベースで出たらコレクションとして改めて買うという傾向も。コロナ禍で少年ジャンプのアプリやクランチロールアプリの登録者数が伸びた。長編作を紙で買うの勇気ない人も、アプリなら読みやすいので、読者数が増えたように思う。

Q:作画ツールは何か。まず紙なのかデジタルで描いているのか。アメリカ全体としての傾向もお聞きしたい。
A:主にフォトショップやクリップスタジオなどデジタルツールを使っているが、紙に描いている作家もいる。アメリカ全体でも大多数がデジタルツールを使っており、下書きは紙でやるかもしれないが、取り込んでデジタルで仕上げする場合が殆どだと思う。

Q:アメリカに漫画アシスタントはいるのか。
A:アメリカでは、例えばアメコミ系のフルカラーの色付けなどで雇うことはあるかもしれないが、日本のような形のアシスタントは殆どいない。

Q:出版スケジュールはどうなっているか。
A:我々の場合は、連載などのスケジュールは無く、作品が完成したら発行するイメージ。アメリカ全体でも週刊連載などの定期発行は殆ど無い。マーベルやDCなどの薄い書籍は月刊などで出ているが、それ以外のグラフィックノベルはスケジュールに沿ってはいない。WebToon系は、もしかしたらスケジュールに沿っているかもしれない。

Q:WebToonはアメリカでは読まれているか?
A:アメリカでは、WebToonは20代前半以前の若い世代が特に好んで読んでいる印象。

Q:アメリカでは著作権や作家取り分はどうなっているか。
A:オリジナル作品については、著作権自体は作家が持ち、出版社は出版する権利を与えられるケースがある。あるビジネスモデルでは、出版にかかるマーケティングや印刷コストなどを引いて一定数以上売上げたら、その分はクリエイターに分配されるというシステムになっている。クラフィックノベルは、文章を書く人と絵を描く人とで、それぞれ著作権が分かれていて、その他カラーリングするクリエイターなどは、別途印税が入るというシステムもある。小さい会社では、クリエイターと出版社で印税折半の契約もある。

Q:日本で漫画を描いてみたいか、また漫画家としての夢をお聞きしたい。
A:現実的な夢は、自分のペースでコミックを描いて、生計をたてること。
A:あまり有名にはなりたくないがお金は稼ぎたい。自分の作品のアニメ化はそんなに思っていない。納得できないものは作ってもらいたくないので、もしそういう話があったら自分がコントロールしたい。
A:生計たてられて、ファンにファンアートを描いてほしい。映画化されるのが夢。
A:自分の作品が映画化したらいいが、なかなか難しいだろうとは思う。
A:編集者の立場としては、作品が映画やテレビなどのメディアに広がっていって、原作者がコントロールできて、いろんな媒体に花開いていくのを見たい。

Q:「究極の画力(+速度)」と「必ず売れるアイデア」では、どちらの能力が欲しいか。日本では神絵師への憧れがある。
A:アイデアがほしい。
A:アイデア。絵よりもストーリーの方が大事だと思う。
A:自分はアイデア持っているから、早く良い絵を描けるようになりたい。
A:昼間オフィスワークで夜クリエイティブやっているので、速く良い絵を描いてクリエイティブ時間を増やしたい。アイデアは悪くないと思っているので。

Q:生成AIについて、肯定的か否定的か、否定的な場合はどういう点が不安かお聞きしたい。
A:(以下の意見があった。)
・ツールとしてAIを使うのはありうるが、最終品を仕上げるところへはAIは行けないと思う。
・自分の創作活動の中でいろんなツールを使っているので、効率化など有効なツールを使うのはよいが、企業は早く安く仕上げたいと思うとAIを使うことになり、そうなるとクリエイターの価値が下がってしまう心配はある。
・コミックを創作する作業は人間しかできない。創作とは世界の事象を見て頭で抽象化する作業。これは人間にしかできない。AIはいろんなデータをひっぱってきてくっつけただけ。AIが作った作品をみるのは、誰かが作った作品の何か、を見ているだけではないか。
・元データのアーティストたちにリスペクトもないし支払いもないというのが問題だと思う。
・最終的な作品という意味ではAIはまだまだ使えない。AIに「自分の作品を学ばせて使っている」のならば、作業を効率化するということであれば良いと思うが。アーティスティックなチョイスを自分がしていくという思考活動をしていないのに、AIの作品を自分の作品です、というのは、アーティストがどういうプロセスでアートを作っていくかということについてリスペクトがないということで、それは悲しい。
・ビデオゲームをチートしてクリアする、つまりゲーム自体をきっちり楽しんで苦労してクリアしていないのと似たような状況だと思う。

Q:今後、具体的にどうすべきだ思うか。法で規制すべきか、ソフトローで見守るべきか。私は「法による強い規制は控え、学習元データの透明性の確保、元データ者への経済的見返り、作画ヒストリー機能の整備など、政府がガイドラインを整えた上で見守るべき」という意見だ。
A:(以下の意見があった。)
・出版社や編集者やコンベンションなどが、AI作品の扱いについて、それぞれの立場でしっかりしたスタンスを表明してほしい。あとは、AI作品にウォーターマークつけるなど作品をトラックできるような機能があればよいと思う。
・AI創作物には著作権がないという判断がアメリカで最近出たのはよかった。AIを使うことを止めることはできないから、バランスのとれるシステムがあればよい。
・グーグル翻訳のように、日常生活における趣味レベルで意味を調べる、という程度に生成AIを使うのはよい。それが完璧ではなくプロの仕事には使えない、という共通認識があれば、ツールの一つとして使っていければ良いと思う。
・何らかの法整備は必要だと思う。どういったデータセットをAIに与えるべきか、権利は誰にあるのかなどの整備が必要。
・AI生成物を発見するAIが開発されているが、精度的になかなか難しい。他方、許可を得たものだけを学習できる、となるとAIの性能としてはどうなのか。
・透明性が大事。許可を得て、使うのであればフィーを払うなり、リターンが必要。透明性が整備されればツールとして有効活用される将来はあり得ると思う。
・AIに真似できない「人間のスタイル」が人気になるというトレンドが、現状を是正していくことはありうるかもしれない。

ーーー

この後、逆にアメリカのマンガ家さん達から赤松への質問などを受け付けつつ、即席サイン会を行い、和気あいあいで二時間近い意見交換会を終えました。 海外の現役クリエイター達の意見をここまで詳しくヒアリングしたことは無かったので、非常に参考になりました。今後、日本の調査会やPTなどでも逐次発表したいと思います。 皆さんは、どうお考えになりましたか?

六日目:市内見学

美術用語で「来歴 (らいれき)」(=プロブナンス provenance)というのをご存じでしょうか。例えばフェルメールの『真珠の首飾りの女』を、これまで誰がいつ所有してきたのか、それを調べて記録しておくことをいいます。
https://artsandculture.google.com/story/HwWhKh4fYkcTJg?hl=ja

今回のアメリカ視察の初日に「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」に行きましたが、そこでも、”近年、PROVENANCE(来歴情報)のスキャンダルの問題があった。来歴情報のエキスパートは重要で、来歴を整えないとコレクションに加えるだけでなく、展示もできない。2ヶ月くらいそれでかかる。特にMETは持っているコレクションにエジプト、アフリカのものがあり、これらはもっと整備が難しい。”という発言がありました。
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1696880899772612815

昨日の夕方から「モルガン・ライブラリー」、本日は「メトロポリタン美術館」と「自然史博物館」を連続して見て回りました。

特に「メトロポリタン美術館(MET)」では日本の古い美術品の展示を行っています。屏風・掛け軸・絵巻物・仏像など。それらの来歴情報は、METの公式サイトで確認できます。 例えば『Birds and Flowers of Summer and Autumn』ですと、来歴(プロブナンス)欄には、 [ S. Yabumoto Co., Ltd. 藪本宗四郎 Japanese, Tokyo, 1983; sold to Longhi]; [ Leighton R. Longhi Inc. , New York, 1983–88; sold to Burke]; Mary and Jackson Burke Foundation , New York (1988–2015; donated to MMA) とあります。
実はこういった来歴情報の整備は日本ではかなり遅れていて、予め文化庁にレクを入れたところ、唯一「国立西洋美術館」でのみ(西洋に合わせて)メタデータ整備がかなり進んでおりました。日本の他の美術館では殆ど進んでおらず、適切な予算と専門家の拡充が必要です。

また来歴情報にブロックチェーン技術を使って「転売の際に作家に還元金」という案もよく言われていましたが、そういったものは実はNFTの素の機能ではなく、プラットフォーム(openseaなど)の協力がなければできないはずで、あまり進まないかもしれません。
【工芸×ブロックチェーン その可能性とはなにか (後編)「アーティスト側のメリット」】
https://media.b-ownd.com/archives/article/工芸xブロックチェーン(後編)

しかし最近、「生成AI作でない証明」として作画ヒストリを記録する機能に注目が集まっており、また近年は来歴のスキャンダル事件も発生しているため、今後は ・いつ、どうやって描かれたか
・誰に売ったか(寄附したか)
・どこでいつ展示したか
・誰がいつ修復したか
・転売の際の作家の方針
などが、改ざんできない形式で記録される「新しい来歴システム」を、世界的なレベルで考案していく必要があると考えています。
私は国会では文教科学委員会ですので、今後何年かかけてこれらの調査を進めていく予定です。

七日目:オーランドへ移動

飛行機での移動日。ニューヨークから、NASA視察のためオーランドへ。飛行機で三時間ほどかかります。ニューヨーク&ロチェスター視察でお世話になった皆様、ありがとうございました。アメリカ視察も、いよいよ終盤です。

八日目(1):ケネディ宇宙センター(KSC)

朝9時から「ケネディ宇宙センター(KSC)」を視察。KSC所長らとの直接の意見交換や、あの「SpaceX」のロケット整備工場にも実際に入ることができ、驚きの視察内容となりました。

★NASA KSC側参加者

  • Janet Petroさん, ケネディ宇宙センター所長
  • Burton Summerfieldさん, 管理部部長
  • Jennifer Kunzさん, 技術部部長
  • Trey Carlsonさん, 官房長

Q:民間企業(SpaceX、Blue Originなど)に対してどのような支援・協力を行っていますか?
A:過去10年間、NASAは民間の宇宙事業者への依存度を高めており、パートナーとしての関わりを深めてきました。10年前は、私たち(NASA)の運営モデルは「契約業者に具体的な指示を与える」ことでした。今では、私たちは営利団体を「パートナー」として見ています。NASAが燃料、推進剤、気象データ、緊急対応などのサービスを提供し、民間企業の運用を成功させることができるよう、打ち上げプロバイダーと協定を結んでいます。また、商業打ち上げ会社にも施設や敷地を貸し出しており、SpaceX社やBlue Origin社などと契約を結び、ミッションの一環として宇宙飛行士や貨物の輸送を依頼しています。

Q:この10年を振り返って、成功だったと思いますか?
A:このスペースポートを取り巻く活動やパートナーの増加により、良い状況にあると思っています。10年前は年間4〜8回の打ち上げでしたが、2年前は31回、昨年は57回。そして今年は70回の打ち上げを計画しています。このようなサポートができるのも、宇宙軍基地の協力があるからです。2年後にはおそらく年間数百回の打ち上げが行われるようになると思います。

Q:日本では、H3とイプシロンの打ち上げに失敗しました。米国での、失敗に対する考え方や国民の理解について教えて下さい。
A:NASAも、チャレンジャー、アポロ、コロンビアと悲惨な事故を起こしていますが、失敗から学ぶことが重要です。宇宙開発は難しい。しかし、前向きに前進し続けることが大切です。失敗から学び、前進することが重要なのです。アメリカでも世間から批判されることもありますが、KSCはロケットを打ち上げるだけでなく、人類の未来を打ち上げることをモットーにしており、それが国民の理解を得ています。また、私たちのミッションを皆さんに知っていただくために、情報の共有や広報活動にも力を入れています。宇宙で実証された技術を持ち帰り、みんなで共有することが重要です。また、情報の共有にも力を入れています。問題が発生した場合でも、その情報を共有しています。YouTubeのビデオ「7 Minutes of Terror」をご覧ください。このビデオでは、火星に着陸する際にどれだけ多くの問題が起こり得るか、そして着陸を成功させるためには何が必要かを示しています。

Q:今までの体験で、成功したことや特に印象に残っていることを教えて下さい。
A:アルテミス・プログラムの立ち上げは特に感動的でした。組織の総力を結集した結果だったので、とても嬉しかった。また、月面着陸への第一歩となる非常に重要なミッションでした。
A:SpaceX が、2020年にアメリカ本土からISSへのクルーの打ち上げに成功したのは嬉しかったですね。
A:ハッブル宇宙望遠鏡やシャトル計画です。このチームの一員であることをとても誇りに思っています。

Q:日本が、NASAにどのように貢献しているか教えて下さい。
A:技術面だけでなく、乗組員の面でも日本から多くの貢献を受けています。日本の貢献は科学の発展に役立っています。全世界が恩恵を受けていると思っています。
A:ゲートウェイでのパートナーシップにとても期待しています。ISSでの協力、そして月への旅も得ることができた。

Q:最近克服した課題と、いまだ直面している課題は?
A:1984年に商業宇宙打上げ法(CSLA)が成立し、NASAが民間セクターと協力しやすくなりました。KSCでは、商業パートナーの要求に応えるため、常にビジネスのスピードに合わせて動こうとしています。

Q:ジェネレーティブAIを活用していますか?
A:ジェネレーティブAIは使っていませんが、効率化のために機械学習は使っています。例えば、水道や電気の監視、打ち上げ時のデータ分析などに使っています。

Q:アルテミス計画で日本に期待することは?
A:日本はアルテミス計画にとって非常に重要です。NASAからも多くの人がJAXAを訪れています。日本はアルテミス協定の署名国のひとつであり、非常に重要なパートナーです。日本の宇宙での活動をもっと知ってもらいたいのであれば、ワシントンDCのOCOMM(Office of Communication)がお手伝いできると思います。

Q:NASAは映画への協力についてどう考えていますか?
A:宣伝になります。私たちは『アポロ11』という映画の制作を手伝いました。

Q:好きな映画は?
A:『オデッセイ』(2015年)。
A:『アポロ13』(1995年)。
A:『ドリーム』(2016年)。
A:『スター・ウォーズ』(1977年)、『2001年宇宙の旅』(1968年)。

・・・「日本から国会議員が訪れるなんて(現スタッフの時代では)聞いたことがない」とのことで、質疑応答はとても緊張しましたが、最後は映画の話で盛り上がりました。 前述したように、アメリカの宇宙政策は商業宇宙活動をますます受け入れており、現在イーロン・マスク氏の「SpaceX」とジェフ・ベゾス氏の「Blue Origin」がケネディ宇宙センター(KSC)の敷地内にあって、協力体制を整えています。どちらも近隣にあるのではなくて、実際にKSCの敷地内に施設があるのです。 そこで次に、あの「SpaceX」社のメンテナンス施設も視察させて頂けることになりました!

八日目(2):SpaceX

※SpaceXについては、残念ながら写真や詳しい視察内容は非公開です。

ロケットを打ち上げた後、何と地上に戻ってきて垂直に着陸する「Falcon 9」をご存じでしょうか?! こちらのYouTube動画をご覧下さい。


今回、このFalcon9が何度も何度も再利用される仕組みや、実際の洗浄・整備などの現場(HangerXと言います)を視察することができました。

・・・しかし、まさかあのSpaceXのロケットが何基も並んで整備されている現場を視察できるとは思わず、感動の嵐でした!いつか着陸の瞬間をこの目で見たいものです。

八日目(3):発射管制センター

続けて11時から、あのアポロ時代から使われている、KSCで最も目立つ建物である「発射管制センター」を視察できました。この中に、皆さんの想像するいわゆる「管制センター」があります!これは感動!

内部は撮影禁止ですが、一階の展示室のみ写真を公開します。昔の制御機械や、打ち上げ成功時に食べる習慣があるマメ料理です。

興奮した私は、「使われているOS」や「打ち上げ時には(窓外のロケット発射台と眼前のモニターの)どちらを見ているのか」などマニアックな質問を連発。その様子を見た担当の方が、ロケット組み立て施設の内部まで案内して下さいました。

ロケット組み立て地(Vehicle Assembly Building (VAB))は、アポロ計画やスペースシャトルの時代から使われている、歴史の古い場所です。その大きさたるや、想像をはるかに超えています。ここで組み立てたロケットを、クローラー・トランスポーターで射点まで運びます。その速度は時速1.6km。小石が敷き詰められた道を進むのですが、その小石が写真のコチラ。通った後は重さで砕けてしまいます。

八日目(4):ロケット射点 39B(Launch Complex Pad 39B)

ロケットの打ち上げ場所は、特別に強化された地盤を持っています。周囲の3つの白い塔は避雷針です。

また打ち上げの際に水をシャワーする(※煙や粉塵を抑えるため)貯水タンクなど、全ての設備に意味があることが分かります。
SpaceXの新しい射点も視察しまして、緊急避難用の脱出ロープなど、全てが生々しくて驚きます。

ところでロケットの先端のこの部分、何だかお分かりですか? 緊急時に先端部(円錐から先の部分)だけ切り離して脱出するための推進装置です。よく見ると噴射ノズルがあるのが分かると思います。

八日目(5):ビジターセンター(Kennedy Space Center Visitor Complex (KSCVC))

ここからは、一般の方も入場し楽しめる有名な施設です。最も感動したのが、スペースシャトル「アトランティス号」の本物が展示してあるブース。ここでようやく、本物のスペースシャトルの大きさが実感できました。耐熱タイルの一つ一つまで、肉眼で確認できます。


また展示の仕方も素晴らしく、スペースシャトル計画の短い映画を見ている途中でスクリーンが上がり、本物のシャトルが現れるのです!オーランドを訪れる日本人は少ないかもですが、来たら絶対に訪れるべき施設だと思います。

・・・さて、アメリカ視察「ケネディ宇宙センター編」、いかがでしたでしょうか。 SNSには載せられない情報や写真が多くて残念ですが、今後政策の方で活かしてまいります。 視察中の私があまりに興奮しているので、ネットの皆さんには趣味のように見えたかもしれません。しかし実際には「ここまで喜んでくれる人は珍しい」と、現地ではっきりプラスの効果があり、普段なかなか見られないような場所まで見せていただくことができました。感謝です!
そしてご報告した通り、帰国後はJAXA相模原キャンパスの視察に行き、NASAからのメッセージを伝えつつ激励してまいりました。頑張れ日本!

八日目:帰国

オーランドからワシントン経由で羽田空港へ。夕方頃に、アメリカ視察から帰ってまいりました!

今回の視察は、以下の順番になっています。

(1)ニューヨーク近代美術館(MoMA)
(2)在NY日本国総領事館で有識者と意見交換会
(3)テイクツー・インタラクティブ社
(4)ニューヨーク市政府文化庁 (DCLA)
(5)マーベル・エンターテインメント社
(6)ジャパン・ソサエティ
(7)ロチェスター大学(日本文化)
(8)ストロング遊戯博物館
(9)現地の漫画家さんとの意見交換会
(10)NASAケネディ宇宙センター

・・・この内、3、4、10以外の施設では、私が日本の漫画家であることを先方が十分に認識しており、より創作や研究の現場感あふれる内容となっています。
また2と6以外では、日本の国会議員が視察に来たのは近年初ではないかとのこと。これも意外でした。

美術館や博物館については、税金や補助金の多いフランスと、個人や企業からの寄付が多いアメリカで、かなり方針が異なっています。日本はフランス寄りかと思われますが、アメリカ型の利点も研究すべきです。また来歴情報の件も整備しなくては。
とにかく物価が高くて(しかも円安で)驚きました。それもあり日本からの留学生が激減している件は喫緊の課題です。

ところで今回、私の進める「マンガ外交」にとって鍵となる施設や人脈が多く見つかりました。大変ありがたいことです。「今度○○があるから来て!」というお誘いもいっぱい受けました。 また質疑応答では「表現の自由」と「生成AIの質問」について多くの時間を費やしています。この2点については、またブログ等で方針を含めて報告したいと思います。